2025.04.24

CARS

「クルマに飽きかけているひとはぜひ」とお勧めする外車とは? 小川フミオ(自動車評論家)が5台の注目輸入車に試乗!

小川フミオさんが乗ったのは、BMW X3 M50 xドライブ、プジョー・リフター・ロングGT、ボルボ EX40ウルトラ・ツイン・モーター、メルセデス・マイバッハEQS 680 SUV、ミニJCWカントリーマンALL4の5台

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今年も乗りまくりました2025年版「エンジン・ガイシャ大試乗会」。各メーカーがこの上半期にイチオシする総勢33台の輸入車に33人のモータージャーナリストが試乗! 

小川フミオさんが乗ったのは、BMW X3 M50 xドライブ、プジョー・リフター・ロングGT、ボルボ EX40ウルトラ・ツイン・モーター、メルセデス・マイバッハEQS 680 SUV、ミニJCWカントリーマンALL4の5台だ!

BMW X3 M50 xドライブ「
価値のある1台」

BMWの本領発揮といえるモデル。体裁はちょっと背の高いSUVだけれど、ドライブ・フィールは293kWの最高出力と580Nmの最大トルクをもつスポーツカーだ。

BMW X3 M50 xドライブ

BMWもそこを強く打ち出しているんじゃないかって思うのが、ボディ・デザイン。新世代のX3は、ほとんどキャラクター・ラインなしに曲面とプレス・ラインでもってキャラクターをつくっている。写真でみるとコンピューター・グラフィックスに見えるぐらいのシンプルさだけれど、実車はさきにふれたとおりプレス・ラインが光の明暗を作り出し、かなり強烈な存在感をはなっているのにも私はいたく感心。

キドニー・グリルの処理も、そこから空気、いっぱい入れるんだよねと、たんなるデザインのためのデザインに終わらず、本来の機能をはたしている。

BMW X3 M50 xドライブ

ぶっといグリップ径のステアリング・ホイールはやりすぎ感があるけれど、右足とエンジンがつながったようなダイレクトな加速感と、左足とブレーキがつながったような強力な減速感、おみごと。高いけれど価値ある1台。

プジョー・リフター・ロングGT「もっているだけで安心」

もっともガイシャ感の強い1台。力強い1.5リットルエンジン、出来のよいシート、3列まで座れるパッケージング、スライド機構もあるし、取り外しも出来るシート、それに嫌みのないボディ・デザイン。ミニバンというとファミリー主眼で、機能主義で徹することが出来ない日本のミニバンと、あきらかに一線を画している。

プジョー・リフター・ロングGT

トヨタ・ハイラックスがすてきなのは、荷台に“夢”のようなものがあるから。リフター・ロングGTの後席空間も同様。ここを使い倒せるライフ・スタイルに、生活に余裕のない私は強い憧れを感じてしまうのだ。

世のなかには、フィルム・カメラとか、別荘とか、文学全集とか、もっているだけで安心してしまうものがある。リフター・ロングの魅力もちょっと似ている。標準ボディのリフターでも十分すぎる荷室容量があるし、ほんとうに3列までひとを乗せることなんてまずないけれど(私はかつて3列シートのプジョー308SWをもっていて、3年間でいちどだけ3列目シートにひとを乗せた)、夢を載せていられるのだ。

ボルボ EX40ウルトラ・ツイン・モーター「もっとも理知的なBEV」

いま日本で買える欧州製BEVのなかで、もっとも理知的なモデル。ベースのXC40は2017年発表だから、長寿の部類。

ボルボ EX40ウルトラ・ツイン・モーター

乗ると、ものすごいトルク感だったり、エンターテイニングなライティングだったり、そういうものはない。言ってみれば、XC40がBEVになった。それだけのクルマ。しかしもとXC40オーナーだった私としては、そこが好きなのだ。

BEVとしての機能を果たせば、無駄な機能は必要ないんじゃないかといいたげなEX40のありかたに賛成。パワーも実用上問題ないし、ハンドリングがいいし、パッケージングにもすぐれている。

ボルボ EX40ウルトラ・ツイン・モーター

そしてファブリックのシート地がすばらしい。インテリアの上質感とは、これみよがしのぜいたくさでなく、知性的なものだと、ホント納得できる仕上がりだ。EX40のインテリアの考えかたこそ、日本のメーカーは参考にしてもらいたい、とつねに私は思っている。

でも、不思議とフォロワーが出てこない。残念だけど、それゆえにEX40の存在感がひときわ目立つ。おそらくエバーグリーンな1台だ。

メルセデス・マイバッハEQS 680 SUV「あらゆる点で他を圧倒」

過剰こそが存在価値ともいえるBEV。かつて、どんどんパワーを追いかけていったり、エアロ・デザインに進むドイツ車のありかたをして、ジャーマン・グロテスクと評されたりしたが、パフォーマンス、エクステリアとインテリアのデザイン、あらゆる点において、他を圧倒している存在感だ。

メルセデス・マイバッハEQS 680 SUV

パフォーマンスの点では、見かけからは想像がむずかしい、絶妙なコントロール性をもつ加減速性能や、センシブルなステアリング・フィールは感心するほど。3トンの車重だが、モーターのトルク・コントロールによって、1トン程度のクルマにしか感じられない。

内装も、このところメルセデス・マイバッハが得意とするピアノ・ブラックに、シルバーのラインを入れた、工芸品的な仕上げ。それに手のこんだ表面処理をしたホワイトのシート。モノトーンでここまで過剰感を出す手腕もまたすごい。

メルセデス・マイバッハEQS 680 SUV

ここまでやるのは、競合車を圧倒するためか。それとも、ブランドの趣味なのか。日本人にとってのトゥー・マッチ感こそ、このクルマの絶対性の根拠なのだ。

ミニJCWカントリーマンALL4「クルマに飽きかけているひとに」

圧倒的な速さというより、速さをうまく感じさせる。ミニ・カントリーマンのなかでもっともパワフルなモデルで、加速性のよさとハンドリングの機敏さでもって、乗って走った瞬間に“速い!”と頭がクラクラするほどの興奮をおぼえる。

ミニJCWカントリーマンALL4

全高は1645mmとちょっと背が高めのSUVボディだけれど、ワインディング・ロードを走ると魅力が輝く。

たのしさという点ではインテリアのデザインもピカイチ。ミニは2001年いらいずっと円形のモニターに固執してきたが、23年発表のこのカントリーマン(とクーパーとエースマン)で初めて、その円形デザインに完璧に機能をマッチさせた。説明するより使ってみてください、というぐらい多機能で、助手席のひとがたのしめる。

ミニJCWカントリーマンALL4

さきに運転のたのしさについて触れたけれど、じつは性能でいうと、このJCWカントリーマンより速いクルマはいくつもある。だけれど、乗るひとのエモーションに訴えかけて、ドライブするたのしさを与えてくれる。それは内装も同様。クルマに飽きかけているひとはぜひ。


乗れば分かる。乗らないと……

2025年は、日本車のがんばりで始まった感がある。東京オートサロン2025で、ガズーレーシングがミドシップ・エンジンのGRヤリスMコンセプトで驚かせてくれたし、ジムニー・ノマドが発売4日で受注数が5万台となって受注停止というのもおおきなニュースだった。

そこにあって海外ブランドの日本法人は、むしろ淡々と、地道に、しかし着実に独自の世界観で、たのしいクルマを提供してくれている。



ヒョンデ・インスターはキュートな軽サイズのBEVだし、ロータス・エメヤの装備には驚くばかりだし、マクラーレン・アルトゥーラのダイレクトな操縦性はこれぞスポーツカーと感心するし、ミニ・エースマンの内装は誰にも真似できないすぐれたデザイン性があるし、VWパサートの走りのよさは印象ぶかいし、といったぐあい。

つまり、乗ればガイシャのよさがわかる。乗らないと人生ですこし損をする。

文=小川フミオ

(ENGINE2025年4月号)

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