2025.04.21

CARS

「魔法のようなチューニング手法だ!」と石井昌道(モータージャーナリスト)が驚嘆したクルマとは? 上半期注目の5台の輸入車にイッキ乗り!

石井昌道さんが乗ったのは、モーガン・プラス・フォー、BMWアルピナB3 GT、ランボルギーニ・レヴエルト、シボレー・コルベット Z06、キャデラックXT4の5台

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今年も乗りまくりました2025年版「エンジン・ガイシャ大試乗会」。各メーカーがこの上半期にイチオシする総勢33台の輸入車に33人のモータージャーナリストが試乗! 

石井昌道さんが乗ったのは、モーガン・プラス・フォー、BMWアルピナB3 GT、ランボルギーニ・レヴエルト、シボレー・コルベット Z06、キャデラックXT4の5台だ!

モーガン・プラス・フォー「
スポーツカーとして進化」

完全に生まれ変わった新世代のモーガンとして登場したプラス・シックスに続いて2020年に発表されたプラス・フォー。何度か乗っているから勝手知ったるモデルと思いつつ近づいていくと、なんだかちょっと違う。2024年のアップデートでウインカーがヘッドライト内蔵式となり、全体的にすっきりと洗練された外観に。

モーガン・プラス・フォー

試乗車は6段MT。少し粘り気のあるクラッチ・ペダルを操作して1速にエンゲージして左足を徐々にあげていくと、アイドリングのままでもスッと動き出す。約1tの軽い車体にBMW製2リットルターボのトルクなら余裕しゃくしゃく。アクセルを踏み込めばグイグイと加速。

モーガン・プラス・フォー

もっとも印象的だったのはシャシー性能もアップデートを受け、ステアリングから伝わってくるインフォメーションが豊かになっていること。おかげでタイヤの限界まで自信を持って攻められるようになった。高速域での直進安定性も現代的でロング・ドライブにも向いている。

見た目はクラシカルだが、スポーツカーとして進化しているのだ。

BMWアルピナB3 GT「魔法のようなチューニング」

何をどうすれば、こんなに走りが良くなるのか? アルピナに乗るといつも思うことだ。

ベースの3シリーズもいいクルマだが、真新しいB3 GTは20インチのタイヤ&ホイールの重量をまるで感じないかのごとく、タイヤが路面をなめるようにヒタヒタと走る。サスペンションのフリクションも究極まで削がれているようでストロークがスムーズだ。アルピナ独自のコンフォート・モードを選択して走っていると超高級車のような乗り心地なのである。

BMWアルピナB3 GT

それでいてワインディングロードでは一線級のハンドリングを示す。GTはアルピナのなかでも特別にブラッシュアップされたモデルで、標準のB3と違ってスタビライザーまで手を入れているという。そのおかげかハイスピード・コーナリングでの姿勢制御が抜群にいい。

BMWアルピナB3 GT

4WD制御をリア寄りにしているとあってFR的なフィーリングだが、スタビリティも一際高いからアクセルを踏み抜いていける。

間もなくBMWに譲渡されるアルピナだが、最後まで魔法のようなチューニング手法を見せてくれたのだった。

ランボルギーニ・レヴエルト「ドライバビリティが良い」

825psの12気筒エンジンに3基のモーターをプラスして1015HPを誇るレヴエルト。富士スピードウェイの試乗会ではいとも簡単に300km /hオーバーを体験してモンスターぶりを実感したのだが、果たして公道で持て余しはしないか? と疑問を抱いていた。

ランボルギーニ・レヴエルト

だが、路面の荒れた自動車道を流して走っているとサスペンションが綺麗にストロークしていて乗り心地が抜群に良く、これならどんな場面でもタイヤが路面を捉え続けてくれそうだという予感がした。ワインディング路で瞬間的だがフルパワーを発揮させてみると予感的中。見事に安定していて1015HPがまったく怖くない! モーターのトルクとエンジンのパワーのコラボによる息つく暇もないほど強烈な加速を存分に味わえるのだ。

ランボルギーニ・レヴエルト

コーナーでステアリングを切り込んでいくと狙ったラインに張り付いていくかのようなハンドリング。フロント左右それぞれにモーターがあるから旋回能力もとんでもなく高いのだ。パワー・スペックよりもドライバビリティの良さに驚かされるのだった。

シボレー・コルベット Z06「とてつもなくリーズナブル」

レースに勝つため約70年の歴史で初めてミドシップ化を選択したと聞けば、さぞ硬派な乗り味を想像するかもしれないが、コルベットはパフォーマンス志向のZ06でさえサスペンションのストロークがとんでもなくスムーズで、路面の凹凸からの入力を綺麗にいなして乗り心地は抜群にいい。下手なプレミアム・セダン顔負けの快適性を、バスタブに座り込んだような格好で体験するとなんだか不思議な気分だ。

シボレー・コルベット Z06

とはいえ本領を発揮するのはワインディング・ロードだ。ちょっとやそっとコーナーを攻めたぐらいではロールをほとんど感じず、正確無比で路面に張り付くようなハンドリングを披露。

一昔前のコルベットはトリッキーな動きがあってアクセルを踏み込むのが怖かったが、ミドシップ化によって理想的なスポーツカーになった。646psのパワーをきっちりと使い切れるシャシー性能なのだ。

シボレー・コルベット Z06

エンジンは高回転域での吹き上がりの良さ、レスポンスともに文句なし。2580万円~という価格がとてつもなくリーズナブルに思えるほどだ。

キャデラックXT4「シャシー・セッティングの妙」

キャデラック初のコンパクトSUVとなるXT4。日本の都市部でも使いやすいサイズが魅力だが、コクピットに収まっていると想像以上に広々とした快適な空間が広がっている。

キャデラックXT4

美しく湾曲した33インチのディスプレイに続くダッシュボードが横方向への伸びやかなデザインで広く感じる。メタルのパネルやレザーなど素材も贅沢で居心地がいいのだ。

2リットル直噴ターボは低回転から豊かなトルクを発生するが、これみよがしに力強さを誇示することなくあくまでスムーズ。9段と多段なATとの連携もよく、上品な感覚で加速していく。まるでマルチシリンダー大排気量NAエンジンのような感覚でキャデラックのイメージに合っている。

キャデラックXT4

シャシーのフィーリングはドライブ・モードによって明確に変わる。ツーリングは突き上げの少ない快適志向で日常域にぴったり。しかしながらスポーツにしたときのダンピングの良さは特筆もので、大きめの凹凸を越えた後の収束が素早く、これはこれで快適。どちらを選択しても間違いのない優れたセッティングなのだ。

ブランドに対するこだわり

とんでもないパフォーマンスを誇るスーパー・スポーツに超高級車、飾り気のないピープル・ムーバーに歴史を感じさせるクラシカルなモデルなど、大磯に集結したガイシャはどれも個性が爆発している。

エンジンや電動パワートレーン、シャシーなどを見ても技術的に突き詰めたものが多いことや、たとえリーズナブルなモデルでもブランドの強みを最大限に高める工夫があることなどが個性を高めている要因。



最近聞いた話では、日本メーカーの品質管理部門は不具合が出ないかを厳しくチェックするだけだが、欧米メーカーはユニーク・セリング・ポイントをどれだけ表現できているかもチェックしていて、ブランドに対するこだわりが凄まじく強いのだという。

日本車は世界に誇れる実用的なモデルが多いが、アジアン・ブランドが台頭してきている昨今、高付加価値のモデルを増やしていく必要がある。そのヒントがこのガイシャ達に見てとれるのだ。

文=石井昌道

(ENGINE2025年4月号)

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