4月中旬、永田町にあるザ・キャピトルホテル東急で一般の参加者を対象としたアルファ ロメオの特別な試乗会が行われた。
特別というのは、試乗車がプラグインハイブリッドのトナーレ・プラグイン・ハイブリッドQ4、ステルヴィオ・クアドリフォリオの2台のSUVモデルに加え、セダンのジュリア・トリブート・イタリアーノという現行のアルファ ロメオの注目モデルが勢揃いし、なおかつ試乗の舞台がラグジュアリーなホテルがベースだったからだ。

これだけでも十分プレミアムだが、なんと試乗コースの首都高速にはレインボーブリッジを通るルートまで含まれていた。ドライバーズカーを試すには絶好の舞台と言えるシチュエーションで、一般の参加者と共に特別なアルファ ロメオを体験してきた。
◆アルファ ロメオ ジュリア・トリブート・イタリアーノの詳しい情報はこちらテイスト・グッドなドライバーズカー指一本分。シャープなハンドリングを表現するのに使うこの言葉が、これほど似合うクルマもない。ほんのわずかな微舵にも気持ち良く反応して、スッとストレスなく向きが変わる。俊敏だが違和感はない。コーナーを曲がるたびに運転が楽しくなる。

ハンドルを握っているのはジュリアのトリブート・イタリアーノだ。ザ・キャピトルホテル東急をインストラクターの運転で出発し、折り返し地点で交代して再び首都高速でレインボーブリッジを目指していたが、思わず口元がゆるむ。間違いなくジュリア・トリブート・イタリアーノはテイスト・グッドなドライバーズカーだ。
エンジンはヴェローチェと同じ高出力型の280馬力の2リッター・ターボを搭載している。クアドリフォリオの3リッターV6と比べるとコンパクトな4気筒エンジンを搭載するトリブート・イタリアーノはその分明らかに鼻先が軽い。

クアドリフォリオの特徴は有無を言わせない圧倒的なパワーにあるが、トリブート・イタリアーノの魅力はなんと言ってもこの軽快感にある。車線変更ひとつとっても文字通りひらりひらりと指ひとつ分のステアリング操作で軽やかにクルマが反応する。
前後の重量配分がいいのはすぐにわかった。ブレーキングでは4輪がジワッと沈み込み、コーナリング姿勢も安定している。ドラーバーの操作に見事に反応する様子が手に取るようにわるのが嬉しい。


電子制御でがんじがらめの今、これほどクルマとの対話が楽しめるのはめずらしい。もちろんジュリアも先進の安全システムを装備しているが、それだけ運転する喜びを重視しているということだろう。アルファ ロメオがアルファ ロメオたる所以もそこにある。
◆アルファ ロメオ トリブート・イタリアーノの詳しい情報はこちらアルファ ロメオと言えば戦前はイタリアを代表するレーシングカーのメーカーで、フェラーリの創業者のエンツォ・フェラーリがかつては同社のドライバーだったことは有名な話だ。

市販車メーカーとなった戦後以降もスポーツ・モデルが様々なレースの舞台で活躍し、アルファ ロメオにとって長く続くレースの伝統は欠くことのできないヒストリーとなっている。
たとえば試乗車のジュリア・トリブート・イタリアーノでいうと、軽量化にこだわったカーボン製のプロペラシャフトやコーナリング性能を上げる機械式のリミテッド・スリップ・デファレンシャルを採用するのはクルマづくりの哲学にレーシング・ヒストリーが浸透しているからにほかならない。


ただし誤解のないように言っておくと、ジュリア・トリブート・イタリアーノが高性能だからと言って扱いづらいクルマなのかというと、まったくそんなことはない。
街中で普通に運転していても室内は静かでステアリングも軽く痛痒を感じるところはないはずだ。特筆すべきはその乗り心地の良さで、フラッグシップのクアドリフォリオが採用するアルファ・アクティブ・サスペンションを特別に装備したことで、しっとりとした良好な乗り心地とスイッチひとつで切り替わるスポーティな走りの両方が楽しめる。ホイールもクアドリフォリオと同じ19インチの大径サイズだが、ゴツゴツしたところのない当たりの柔らかさは驚くほどだった。
抑揚のある表情豊でエレガントなスタイリングが特徴のジュリアだが、特にトリブート・イタリアーノはブラック塗装のルーフやミラーにワンポイントのイタリア国旗のカラーを採用するなど見た目の特別感も申し分ない。


これは室内も同様で、ダッシュボードやセンターコンソール、ドアパネルなどにレーシーな赤いステッチが入るほか、ヘッドレストにはトリブート・イタリアーノのロゴも入ってメイドイン・イタリーの雰囲気を盛り上げている。


ジュリア・トリブート・イタリアーノのボディ・カラーは、イタリア国旗に合わせてモントリオールグリーン、アルファホワイト、アルファレッドの3色が用意されており、それぞれグリーンは36台、ホワイトは16台、レッドは22台の限定となっている。
◆アルファ ロメオ トリブート・イタリアーノの詳しい情報はこちら
アルファ ロメオには工芸品的な味わいがあるそんなジュリア・トリブート・イタリアーノのほかに、今回のプレミアム試乗会ではステルヴィオ・クアドリフォリオ、トナーレ・プラグイン・ハイブリッドQ4の3台の試乗車が用意されていた。
15階のラウンジでプレゼンテーションを行い、ホテルのメインのクルマ寄せから試乗がスタートするという贅沢なプログラムを楽しんだ一般参加者の方にも話を聞いたので、少し紹介しよう。ちなみにラウンジでは参加者のためにアルファ ロメオのロゴをあしらった特別なスイーツも用意されていた。


ステルヴィオのクアドリフォリオに試乗したのは嘉山尚幸さんだ。嘉山さんはかつて156のV6に乗っていたことがあるという。
「同じV6でもクアドリフォリオのV6はまったくの別物でした。完全にレーシーな雰囲気ですごかったですね。いろいろなモードを試してみたんですが、アクセルをオフにしたときのボボボボボっていうエグゾーストからの音や首都高のトンネルでマニュアル操作したときの音がまるでレースカーのようでした。足回りもしっかりしていて楽しめましたね」
現在、ドイツ製のSUVのスポーツ・モデルに乗っているという嘉山さんだが、今回は試乗会の場所も素晴らしいので応募したそうだ。

一方、ジュリアのトリブート・イタリアーノの試乗から戻って開口一番に「最高でしたね!」と嬉しそうに話してくれたのは宮川彬さんだ。なんと宮川さんも元156のオーナーと聞いて驚いた。宮川さんは2リッターのツインスパークの後期型に乗っていたという。ちょうどクルマの買い替えのタイミングだったことと、やはりアルファ ロメオが好きなことが参加の理由だ。

「今日はたぶんハイになってます。目の前に契約書があったら今ちょっと危ないです(笑)。同乗していただいたプロドライバーの方とも意気投合したんですが、ハイテクノロジーが注ぎ込まれているんですが、乗るとクラフト感が感じられるところが素敵ですよね。手仕事というか工芸品的な味わいがあるところがいい」
宮川さん、実はエンジン関係の会社に勤めていることもあって、内燃エンジンにはことのほか思い入れがあるという。


「モーターなどを使わない純内燃機関を搭載するクルマはもうわずかしかない。そのなかでもジュリアは本当に魅力的ですね」
そんなアルファ ロメオが次世代に向けて登場させたのがプラグイン・ハイブリッドのトナーレだが、実は今回の試乗会でインストラクターを務めるレーシングドライバーの藤井誠暢さんとジュリア・トリブート・イタリアーノに乗ったときに、藤井さんがこんなことを言っていた。

「パワーとしなやかな足周りのバランスの良さは、トナーレに乗ったときの印象に近いですね。トナーレはモーターとエンジンのハイブリッドで、電気だけで走ることもできますが、内燃エンジンの良さがちゃんと感じられるところが魅力だと思います。加速したときの、あ、このエンジンいいなという感じはトナーレとジュリアには不思議と共通するところがあるんです」
シャープなハンドリングと十分な力のパワートレインを駆使して自らの手で生き生きと走らせる。それこそがアルファ ロメオが持ち続けているフィロソフィーであり、アルファ ロメオに乗る喜びであることは間違いない。そんな思いが再認識できた特別な試乗会だった。
文=塩澤則浩(ENGINE WEB) 写真=望月浩彦
◆アルファ ロメオ トリブート・イタリアーノの詳しい情報はこちら(ENGINE WEBオリジナル)