春の時計見本市や新製品発表も一段落。新作が続々と店頭に並び始めた。ダイバーシティー=多様性の時代。より柔軟・自由な”新基準=ニュースタンダード”によって、今の自分にふさわしい一本を選びたい。8名のENGINE時計委員の目利きを参考に、この夏、一生つきあえる腕時計をセレクト!
モーリス・ラクロア AIKON オートマティック ジャパン リミテッドエディション
伝説のベストセラー「カリプソ」の復刻版として2016年に登場した「アイコン」。その洗練された都会的デザインを踏襲しながら、日本の美しさとスピリットを讃えた日本限定モデル。
ダイアルのグラデーションカラーは、既存モデルとは違い、深くスモーキーな色合いが印象的なイエローとレッドの2種類。さらに通常モデルの3時位置に設けられた日付表示を取り除き、クル・ド・パリ模様のダイアルをすっきり見せている点も特徴。
ケースバックには「JAPAN SPECIALEDITION」の文字を刻み、イージーチェンジシステムにより付け替えが容易なブレスレットを組み合わせる。
自動巻き。ステンレススティール、ケース直径42mm、20気圧防水。38万1700円。
手に取る喜びは変わらずに 野上亜紀価格高騰化が進み、人々の時計離れが深刻化するのでは……という危機感を覚えることがある。ゆえに、手ごろな価格帯のタイムピースを展開する会社には頭が上がらない。
モーリス・ラクロアは、私が時計という分野の仕事に初めて携わった際に、手に取りやすさ、近づきやすさに心強さを感じたブランドだ。この日本限定モデルは既に何本か時計を持っている人にはプラスの一本として魅力的で、時計を初めて買う人の一本としてもふさわしい。
外周にかけて暗くなる文字盤の色彩はビビッドすぎず、初のカラー時計として入手するのもよいだろう。意匠はモダンに進化しつつ、いつも時計愛好家の近くにいる、モーリス・ラクロアはそんな安心感を与えてくれる。
迷わず選べる定番だ 菅原 茂
デビューの頃、「アイコン」と読める名を名乗るなんて、ずいぶん自信があるなと思った。モデル名自体が新時代の「定番」と主張し、おまけに「スタンダード」を含意していたのだから。
もちろん裏付けだってちゃんとある。スポーティエレガンスをまとう現代的で使い勝手良好なデザイン、外装の精巧な造形、信頼性の高いムーブメント、そして手頃な価格である。そうしたバランスと高品質が欲張りな時計好きにも受け、10年たらずで名実ともにアイコンになったのは間違いない。
最新の日本限定モデルは、ダイアルが従来とは一線を画す特別な仕上がり。スパイスによる味変で定番の味がグンと引き立ち、新たな魅力を発見する、そんな二重の楽しみがある。
問い合わせ=DKSHマーケットエクスパンションサービスジャパン cg.csc1@dksh.com
写真=宇田川 淳
(ENGINE2025年8月号)