2025.07.17

LIFESTYLE

仮眠の新しいカタチ「着る睡眠」 ミラノサローネを席巻したスリープ・アパレル 眠りを持ち運ぶ驚きの未来

睡眠の新たな可能性を創造するNTT DXパートナーのスリープテック事業部が主導し、30職種を超えるクリエイター集団Konelと共同で開発したのが、パーソナルな眠りのウェアZZZN SLEEP APPAREL SYSTEM(ズズズンスリープアパレルシステム)。日本古来の夜着をイメージしつつ、中には最新のハイテクを盛り込んでいる。(C)Yusuke Maekawa

全ての画像を見る
眠りの後進国、日本。その経済的損失は計り知れない。デジタル情報が押し寄せるなか、脳を休息させる解決策として若いクリエイターたちが「着る睡眠」の開発を進めている。

デジタルの進化と浸透は、利便性を上げる代償に時間の余白というゆとりを奪いつつあるようだ。家にいてもパソコンを開いて仕事をしたり、ベッドでもスマートフォンでメールをチェックしたりと、われわれの生活は常に情報に追いかけられている。デトックスという言葉が囁かれるくらい、デジタルは現代人にとって逃れられない“必要毒”なのかも知れない。

ミラノサローネで開催され、イタリア人を含む多くの人がブースを訪れて体験。短いながら、充実した睡眠を取ったという。

日々の暮らしでもっとも手軽に情報をシャットアウトできるのは、何より睡眠。だが残念なことに、この点に関して日本は後塵を拝している。先進国を中心とした世界33か国の中で、日本人の平均睡眠時間は最下位。確かに世界一の長寿を誇るが、同時に認知症の発生率も最多。睡眠不足との関連をうかがわせるデータがあることは留意したほうがいい。

(C)Lorenzo Bacci

長時間眠ることが難しい場合、その解決策のひとつが分眠。15分から20分の仮眠は頭をすっきりさせるのに適している。実際、短い昼寝の後は仕事の能率や創造性が高まるようだ。そうした悩みへのソリューションとして、睡眠の新たな可能性を創造するNTT DXパートナーのスリープテック事業部が主導し、30職種を超えるクリエイター集団Konelと共同で開発したのが、パーソナルな眠りのウェアZZZN SLEEP APPAREL SYSTEM(ズズズンスリープアパレルシステム)。

日本古来の夜着をイメージしつつ、中には最新のハイテクを盛り込んでいる。インナーはダウンではなく、自分の体温で発熱する光電子繊維。ヘッドピースには入眠しやすい周波数帯域の音楽が2種類流れる。額部分には夕焼けの色に近い赤色照明で眠りに誘う。スマートリングで睡眠状態やストレス値などの生体データをモニタリング。その結果を元にチューニングしたリズムで光が明滅する。

指定した時間になると、心地よく目覚められる楽曲と青の照明で覚醒をうながす。襟にはフードエアパックが入っており、椅子に座った状態でもサポート構造で首を支えてくれる。まだ試作品段階とはいえ、4月に出品されたミラノサローネでは大きな話題を呼び、海外でも眠りへの関心が高いことがうかがわれた。

睡眠は脳の最後の聖域。仮眠室という空間を必要としない、ポータブルでウェアラブルな眠りのシステムが、分眠という形で私たちの睡眠不足を解消する日が遠い夢でないことを祈りたい。

文=酒向充英(KATANA)

(ENGINE2025年8月号)

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement