外車に多く採用されているトランスミッション「DCT」とは、どのようなトランスミッションなのだろうか。今回は、DCTの概要や特徴、メリット・デメリット、故障しやすいのか解説する。DCTのクルマが気になっている方、外車のDCTが故障しないか気になっている方は参考にしていただきたい。
DCTとはどのようなトランスミッションなのか?
DCT(Dual Clutch Transmission)は、クラッチが2系統あるトランスミッションだ。
2系統のクラッチは、奇数ギアと偶数ギアに分かれており、1速で発進したときに2速がスタンバイ、2速に接続されたら3速がスタンバイというように、次のギアがスタンバイ状態になっているため、素早いギアチェンジが可能で、途切れのない加速を楽しめるのが特徴だ。
また、ギアが直結状態となるため、ダイレクトな加速感があるのもDCTの魅力となっている。

なお、DCTにはクラッチが使われているものの、2ペダル(アクセルペダルとブレーキペダルのみ)となるため、AT限定免許でも運転が可能だ。
DCTが採用されている外車は、フォルクスワーゲン DSG、アウディ S-tronic、ポルシェ PDKなどがある。
DCTのメリット・デメリット
DCTには、さまざまなメリットやデメリットが存在する。ここでは、主なメリット・デメリットを挙げていく。
【DCTのメリット】
・素早いギアチェンジ
・ダイレクト感ある加速
・エンジンとギアが直結状態なるため伝達効率が良い(燃費がいい)
など
【DCTのデメリット】
・クラッチが繋がる時にギクシャクする場合がある(特に極低速走行時やストップ&ゴーのとき)
・クラッチやギアに負荷がかかる運転をすると故障する可能性がある
・変速ショックを感じる時がある
など

外車に多く採用されているDCTには上記のようなメリットやデメリットがあるため、街乗りではデメリットの方が気になる場合が多い。
しかし、高速道路での走行や道が空いている幹線道路などでは、気持ちのいい快適な走りが楽しめるだけでなく、優れた燃費性能を実現する。
よって、高速道路を使って長距離走行する場合や交通の流れが良い幹線道路などを走るときは、DCTのメリットを感じることができる。
外車に使われることが多いDCTは故障しやすい?
外車に多く採用されているDCTは故障しやすいと聞いたり、DCTのトラブルにより走行不可になったりすることがある。
このような故障が発生してしまう主な理由は、半クラッチ状態が長く続いてクラッチが滑ってしまったり、クラッチが焼けたりするためだ。
例えば、ストップ&ゴーばかり繰り返していたり、急加速(クラッチの急接)したりすると、トランスミッションに負荷がかかり故障する可能性が高くなる。

しかし、クラッチミートを慎重に行うなど、内蔵されているクラッチやギアに高い負荷をかけないような運転をすれば、壊れることはほとんどないと言える。実際に筆者が乗っているクルマもDCTを搭載しているが、数年経った現在でもトラブルや不具合はなく、走行不可になる状況になったこともない。
もちろん、DCTは量産されている機械部品であるため、当たり外れがある場合もあるが、DCTの製造を続けたことによるノウハウの蓄積や改良などにより、最新型のDCTであれば故障の心配はほとんどないといえるだろう。
また、自動化されたMT車と思って運転することで、トランスミッションに負荷をかけることを避けられる。そのため、DCTのクルマを運転するときは、MT車の構造や運転を理解しておくとよいだろう。
アクセルペダルの操作に素直なDCT
ここまで述べてきたように、DCTにはメリット・デメリットがあったり、故障の心配があったりするが、それ以上にダイレクトな加速感や素早いシフトチェンジによる気持ちよさがある。
このDCTの気持ちよさや心地よさを知ってしまうと、トルコンATやCVTのレスポンスが鈍く感じてしまうことがある。

外車に乗りたいときや外車に採用されていることが多いDCTのクルマが気になっているときは、試乗したり、レンタカーやカーシェアなどで長時間乗ってみたりすることをおすすめする。
実際に乗ったり運転してみたりすると、DCTの特徴や心地よさ・気持ちよさ、低速走行時や後退時のギクシャク感などを一通り体験できる。外車に多く採用されているトランスミッション「DCT」の特徴や走りを知りたいのであれば、ハンドルを握って体感してみるとよいだろう。
文=齊藤優太(ENGINE編集部)
(ENGINE Webオリジナル)