45周年を迎えた佐野元春が記念ツアーを開催中。過去を振り向かず、常に新たなスタイルを提示し続ける佐野の音楽はいつも今が旬だ。
“サムデイ”“約束の橋”“ヤングブラッズ”。日本のポップミュージックのスタンダードと称すべき数々の名曲を生み出してきた佐野元春。エンジンの読者にも、「元春の音楽が青春だった」「楽曲のメッセージに励まされた」という方が多いのではないだろうか。

デビュー45周年を迎えた今年、佐野は例年以上に精力的な活動を続けている。まずはアニバーサリーイヤーを記念した全国ツアー。セットリストの中心は、80年代~90年代の名曲を“再定義”した新作アルバム「HAYABUSA JET I」の収録曲だ。
現在のバックバンド・THE COYOTEBANDの演奏も素晴らしい本作では、アレンジ、ボーカル、サウンドメイクはもちろん、曲によっては歌詞の一部やタイトルも変更。
たとえば“ガラスのジェネレーション”は、「つまらない大人にはなりたくない」という有名なフレーズを曲名に冠している。ずいぶん大胆なチェンジだが、その根底にあるのは佐野自身の“ノスタルジーだけに終わるわけにはいかない”という強い信念だろう。

以前のインタビューで「コンサートではいろいろな時代の曲を演奏しますが、歌うときはすべて今の曲なんですよね」というコメントを発した佐野。ただ昔を懐かしむのではなく、これまでの軌跡を踏まえたうえで、“今、伝えるべき音楽”を生み出す。その確固たるスタンスこそが彼の最大の魅力であり、時代や世代を超え、数多くのファンを魅了し続けている理由なのだと思う。
佐野の音楽活動のもう一つの指針となっているのが、オーディエンスと真っ直ぐに向き合う姿勢。10月1日に発売された映像作品Blu-ray『LAND HO! LIVE AT YOKOHAMA STADIUM1994.9.15』を観れば、そのことを実感してもらえるはずだ。

1994年9月15日に横浜スタジアムで行われたこの公演は、佐野の初期バンド、ザ・ハートランドによるラスト・ライブ。“サムデイ”“ロックンロール・ナイト”“ナポレオンフィッシュと泳ぐ日”といった楽曲でスタジアムを埋めた大勢の観客が一つになる様子は、圧巻のひと言。アナログの映像素材をレストアし、AI技術を用いて再編集した本作によって、伝説のライブを“再発見”する音楽ファンも多いはずだ。
12月には横浜BUNTAI、2026年3月には大阪城ホール、東京ガーデンシアターでの公演も決定。モダンなサウンドデザインと真摯なメッセージ性を併せ持った楽曲は今、この瞬間も進化を続けている。
69歳になった現在も自らのカッコよさを更新し続けている佐野元春。その在り方はまるで、最新のテクノロジーでチューンアップされたヴィンテージ・カーのようだ。
文=森 朋之(音楽ライター)
(ENGINE2025年12月号)