Sクラスの最上位「63」を冠するフラッグシップ・セダンは、走りも、室内の仕立ても、そして価格も──圧倒的だ! さらに特別な仕様を意味する「MANUFAKTUR Exclusive」の名を纏った一台を、モータージャーナリストの竹花寿実がリポートする。
「自分だけの一台」を求める人へ
メルセデス・ベンツSクラスの現行モデルが日本上陸を果たしたのは2021年1月なので、早くも5年が経とうとしている。今回試乗したAMGモデルのS 63 Eパフォーマンスも、2023年11月に発売されているので、特に最新モデルというわけではない。
筆者自身も以前にメルセデスAMGの本拠地であるドイツ・アファルターバッハで試乗したことがあり、その圧倒的なパフォーマンスが強烈な記憶として脳裏に焼き付いている。

だが今回試乗したS 63 Eパフォーマンスは単なるAMGモデルではない。Sクラスに新たに設定されたスペシャルなオプション、「MANUFAKTUR Exclusive(マヌファクトゥーア・エクスクルーシブ)」を内外装に纏った特別な一台なのである。
通常S 63のボディカラーは、無償カラーが8色、有償カラーは12色の、計20色が用意されているが、MANUFAKTUR Exclusiveはさらに54色の専用カラーが選択可能となっている。
今回の試乗車は8色あるマット塗装のひとつである「MANUFAKTURアイルランドミッドグリーンマグノ」に塗られた車両だ。

インテリアも同様に通常5色のところ、追加で25色の専用カラーから選べるようになる。今回の試乗車には「MANUFAKTURタバコブラウン/ブラック」、「MANUFAKTURナッパレザー(本革)」が奢られ、極めてラグジュアリーな空間となっていた。
メルセデスのマヌファクトゥーア・プログラムは、極上の素材をドイツの最高の職人技術で組み付けるカスタマイズ・プログラム。「自分だけの一台」を求める人のためのオプションサービスだ。
ただし、決してお安くはない。今回の試乗車のボディカラーは145万円、インテリアは165万円だ。また試乗車には、後席にあらゆる快適装備が備わるリアコンフォートパッケージ(159万9000円)や、セラミックカーボンブレーキシステムなどが装着されるAMGダイナミックパッケージ(162万1000円)、さらにAMGカーボンパッケージ(143万9000円)、AMGナイトパッケージ(61万6000円)、Burmesterハイエンド4Dサラウンドサウンドシステム(95万7000円)も装着されており、車両価格(3799万円)と合わせて消費税込みで4732万2000円と、もはや新築マンションが買えそうなほどの金額となっている。
セダンだからこその走り
走りは4リッターV8ツインターボと電気モーターの合計で802ps/1430Nmを発揮するハイパフォーマンスPHEVだけに、圧倒的に速い。車両重量は2690kgもあるが、加速やコーナリングではその重さを感じさせず優雅に走り抜けるあたりは、さすがフラッグシップの仕立てである。

快適性も極めて高く、移動そのものが極上の時間に変わる。セダンがメルセデスの真骨頂なのは、不動なのだ。
Sクラスにはメルセデス・マイバッハS580という、最高にラグジュアリーなモデルも存在するが、このMANUFAKTUR Exclusiveを纏ったAMG S 63 Eパフォーマンスは、パフォーマンスとラグジュアリーの両面を持ち合わせた、メルセデスのフラッグシップにおける最高峰と言っていいだろう。
ただ、選択するボディカラーによっては相当に目立つので、そこは覚悟したほうがいいかもしれない。
文=竹花寿実 写真=神村 聖
(ENGINE2025年12月号)