9名からなるエンジン時計委員会が理性と情熱で熟考チョイス。21世紀の第2クォーターを共に過ごすに相応しい、「自信をもって推せる、あるいは自分で買いたい」アンダー100万円のタイムピースを厳選。細田雄人がイチオシするのは、ノモス グラスヒュッテから「クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマー」だ。
クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマー 77万2200円
世界旅行に便利なワールドタイム機能を搭載する初のクラブ・スポーツ。2時位置のプッシャーを押すと、ダイアル外周の都市リングが回転し、同時に時針も1時間単位で進み、旅先のローカルタイムに素早く変更可能。
ローカルタイムの24時間表示に用いる3時位置のダイアルは、直感的に昼夜を判別できるデザインになっている。シンプルな表示スタイルや厚さ9.9mmの薄型設計も特徴。自動巻き。ステンレススティール、ケース直径40mm、10気圧防水。
“優れたワールドタイマー像”を変えた
価格高騰が甚だしい時計業界の中では厳しいお題だが、スイスよりも人件費の安いドイツ製ミドルレンジウォッチにはまだ救いがある。特に今回選んだモデルは4月のW&WG以来ずっと好印象だった時計だ。私見ではあるが、ワールドタイマーでデザインの秀逸な時計というと、その大半が文字盤の凝縮感を強調したもの。
しかし本作では、ノモスらしさをつき詰めたようなシンプリシティと機能性が煩雑な文字盤になりがちなワールドタイマーでも健在で、そのうえ限定モデルも含めると文字盤カラーが全8種展開と遊び心を持たせることにも抜かりがない。
良い意味で自分が抱いていたこれまでの“優れたワールドタイマー像”をぶち壊してくれた。それと忘れてはいけないのが感触の良さ。2時位置のプッシャーを押し込み、タイムゾーンが「パチッ」と切り替わる際の心地よさは是非一度体験してもらいたい。
この価格帯の時計が感触をこのクオリティで調整してきたとは、俄かには信じがたいレベルだ。
問い合わせ=大沢商会 時計部 Tel.03-3527-2682
文=細田雄人
(ENGINE2025年12月号)