心踊るホリデーシーズン。この秋冬は、逸話あふれる一生モノの腕時計を、大切な人や自分への贈り物として選びませんか。“時計愛&好!”をもって任ずるENGINE時計委員会9名が、知見・体験や思い入れをふまえて「推し時計の歴史やストーリー」、「時計と自信の物語」エモーショナルに紡ぎます!
今回取り上げるのは、アミダ「デジトレンド」。ユニークなフォルムとデジタル表示が、時計委員の度肝を抜いた! それ何?どこの時計? と盛り上がること必至だ。
憧れ、持ち続けていますか?
スマートウォッチを思わせるスタイルだが、筐体上部には何も映し出されない。手前のわずかなスリットを覗いて時刻を見る。まるでコンセプチュアル・アートだ。それもデジタルで表示するのではなく、あえて機械式で手のかかるジャンピングアワーとプリズム機構を用いている。ますますもってユニークな時計である。フューチャリスティックかつスぺーシーなデザインは、まさに70年代的。それこそウルトラ警備隊が使っていた腕時計型通信機や腕に巻いたジャイアントロボの操縦機に憧れた、幼い頃の記憶が蘇る。腕時計は未来への夢を抱かせるアイテムだったことをあらためて思い出した。そんな憧れをいまも持ち続けているか? この時計はそう問いかける。
(柴田 充/時計ライター)
なんだか感じる同世代感
1975年生まれの自分にとって、70年代の時計デザインには特に興味がある。クォーツショックによって機械式時計は冬の時代を迎えたが、逆境は挑戦するチャンスでもある。デザインや機構、カラーリングなど、他にはない個性的なモデルが次々と現れたのは、この時代の特徴である。“AMIDA”というブランドは日本上陸まで知らなかったが、この独創的なデザインはまさに70年代スタイル。こういったデザインのデジタル時計は他にもあるが、これは回転ディスクとプリズムによる反射を利用して時刻表示するという。その少し滲んだ表示のアナログ感が、何とも愛らしいではないか。アナログとデジタルの時代の狭間に揺れた時計は、不思議と同世代の心に響くのだ。
(篠田哲生/時計ジャーナリスト)
アミダ デジトレンド

1925年に創業したスイスの独立系時計ブランドAMIDA(アミダ)は、1976年に時間表示が一瞬で切り替わるジャンピングアワーとプリズムを使った独自の機械式時計「Digitrend(デジトレンド)」を発表して注目を浴びる。潜水艦の潜望鏡にヒントを得た側面ディスプレーもスイス特許を取得。現代モデルは、スペースエイジを象徴する当時のデザインと革新的な表示メカニズムを最新テクノロジーによって忠実に再現。レトロフューチャーのドライバーズウォッチとしても魅力的。自動巻き。ステンレススティール、ケース縦39mm×横39.6mm、5気圧防水。64万3500円(Steel Edition)、71万2800円(Black Edition)、76万2300円(Gold Edition)。
問い合わせ=DKSHマーケットエクスパンションサービスジャパン cg.csc1@dksh.com
写真=宇田川 淳
(ENGINE2026年1月号)