【前後篇の後篇/前篇からの続き】
クルマに限らず、ファッションやインテリアの世界でも「オシャレ」と聞いて真っ先に頭に浮かぶのは、やっぱりイタリアというわけで、モータージャーナリストの西川淳とエンジン編集部員の佐藤玄、村山雄哉の3人が今注目のイタリアン・コンパクト、アルファ・ロメオ・ジュニア、アバルト500e、ランチア・イプシロンに試乗。【前篇】のイプシロンに続き、【後篇】の今回はアルファ・ロメオ・ジュニアとアバルト500eはどこがどうオシャレなのか討論した。
前篇【ランチア・イプシロンに試乗 こんな洒落たイタリア車を待っていた 隣にフェラーリやGクラスが並んでも気にならない】
存在そのものが非日常
村山 アバルト500eはどうでした? エンジン付きよりやんちゃ感が抑えられて、結果的にフィアット版より「オシャレ」感が強く、それが個性になっていると思いました。
西川 生のエンジン音が聞こないというのは大きい。アバルトってサウンドで元気の良さを演出するようなところがあったから。
佐藤 内装はもっと遊んでほしかったな。アバルトの電気だなんて、元からふざけた企画なんだから(笑)。
一同 (爆笑!)
西川 そこがアバルトなのよ。フィアットあってこそのアバルトだから。行き過ぎないところもアバルト流。
佐藤 ブランドって難しいですねえ。
西川 アバルトって日本ではとても愛されてきた。柔よく剛を制すというかさ。フィアットの改造車でポルシェ911を倒すみたいな。そういうの日本人好みでしょ。それを電気にしてどうなの? という思いは僕も当初はあったけど、音が無い物足りなさは、実は、毎日乗っていると嬉しいことの方が多い。静かで疲れないし。そのクルマの存在そのものを運転しながらじっくり楽しめるようになる。エンジン付きのアバルトって乗ったら最後、無我夢中。疲れるために乗っているようなもの。電気アバルトならもう少し落ち着いていられる。そういう意味では、どんなクルマでも電気は今オシャレかな。
佐藤 ガソリンのアバルトが好きな人でも楽しめるクルマだと思いました。ホイールスピンも演出なの? ってくらい簡単にする。
西川 電動車の走りにブランドの味を出すのは電子制御のアルゴリズムをどう組み立てるかということ。アバルトにはヒストリックカーもたくさんあって、現代のモデルもそこから大きくコンセプトを変えていない。だから電気になってもある程度再現することができたんだと思う。アルファも同じ。その点、歴史的に筋の通っていないランチアはしんどい。
村山 今回のアバルトはオープン。電気自動車では唯一です。それだけでもオシャレじゃないですか?
西川 そりゃそうだろうよ(笑)。オープンカーはなんでもオシャレ。存在そのものが非日常なんだからさ。
もっとはっちゃけてほしい!
村山 最後にジュニアの話をしましょう。「イブリダ」(ハイブリッド)のエントリーグレードで、タイヤ&ホイールはシリーズ唯一の17インチ。
西川 ジュニアのなかではこれが最もアルファらしかった。全体的な動きとアジリティの高さ。街中でもある程度の乗り心地を担保してくれるし、高速では落ち着き払っている。
佐藤 僕の知っているアルファ・ロメオって4C以降なんです。
村山 僕もジュリア以降の現代アルファしか乗ったことないです。
西川 どんなイメージ?
村山 ステアリングがとにかくクイックで、脚は締め上げられて落ち着かない感じ。とりわけステルヴィオ・クアドリフォリオは強烈でした。
西川 念願のFR回帰で気合いが入りすぎた(笑)。
佐藤 そこが個性だと思いましたが。
村山 ジュリアも一番性に合ったのはベーシックなグレードだった。そのくらいがちょうど良い。今日のジュニアはその感覚に近くて、イメージより落ち着いていました。
西川 反省したんやろうな。これでもライバルよりはクイックだけどね。
村山 でも、長年のファンは、この乗り味を歓迎するのでしょうか。
西川 ポイントはそこ。でもそんな人はもういないかも。ランチアはほとんどいない。だから新しい味を作ってもいい。アルファだって同じ。CGのカトーさんみたいな人はもうほとんどいないと思うな。だからもっと肩の力を抜いて作っても良いのに、と思った。ジュニアってちょっと真面目じゃない? 蛇の数以外、遊んでない。この所のニューモデルが売れなさすぎて萎縮している気がする。アバルトくらいはっちゃけてもいいのに。今日はイプシロンと乗り比べてみて、ランチアがここまで味を出せるなら、アルファだってもっとできたんじゃないかなって思う。
佐藤 それって結局、愛嬌ですね。
村山 確かに味の濃さは、ランチアがダントツ。ジュニアも、ランチアと親戚とは思えないほど独自の味があったけど、もう少し濃くても良い。
西川 アバルトもかなり濃厚。アルファにはちょっと迷いがあるようにも感じたなあ。これからどう味わい深くしていくのか、アルファファンとしてはとても気になるところだね。
テロワールが大事
佐藤 イタリア車ってこれからどんな方向性に向かっていこうとしているのか、よくわからない気がします。
西川 俺も思う。歴史も知名度もあるのに活かしきれてない。イタリア車に我々が思うポジティブな気持ちは、イタリア人やイタリアへの憧れだったわけじゃない? でも裏を返すと、イタリアではどうなの? と。イタリアに行ってもイタリア車が少ないんだ。作る方だって国内でウケなかったら、他の市場で評判を取ろうとする。そうするとブランド愛が薄れて、迷いが出るんじゃないかな。やっぱりイタリアに憧れている日本人は、イタリア人が乗っているから欲しいわけ。
結論めいたことをいうと、ワインとかと同じでクルマもつくづくテロワールが大事。生まれた土地の風土や環境、文化、歴史が育んだものだから。ドイツ車はアウトバーンが育てたように、イタリアにはあの景色とおいしい食と、ファッションがあったから、個性を持った内外装のクルマが生まれた。イタリア人が普段から楽しめるようなクルマを作っていたから、僕たちは憧れた。イタリア人だって昔は多分、自分たちが乗りたいクルマを作ってたと思う。特にアフォーダブルなクルマは。それが今は見えてこないのがちょっとね。それでもオシャレに見えるんだから捨てたもんじゃない。そういう人たちが内外で消えてしまう前に、元気を取り戻してほしいね。
佐藤 彼らがそんなライフスタイルを送ってくれていることが、何よりも大事なんですね。
話す人=西川 淳(まとめも)、佐藤 玄(ENGINE編集部)、村山雄哉(ENGINE編集部) 写真=神村 聖 取材協力=Stellantisジャパン、カーボックス横浜、横浜国際プール
前篇【ランチア・イプシロンに試乗 こんな洒落たイタリア車を待っていた 隣にフェラーリやGクラスが並んでも気にならない】
■アルファ・ロメオ・ジュニア
駆動方式 フロント横置きエンジン+1モーター前輪駆動
全長×全幅×全高 4195×1780×1585mm
ホイールベース 2560mm
車両重量 1330kg
トレッド(前/後) 1530/1535mm
エンジン形式 直列3気筒DOHCターボ
総排気量 1199cc
最高出力 136ps/5500rpm+21.8ps/4264rpm(システム合計145ps)
最大トルク 230Nm/1750rpm+51Nm/750-2499rpm
トランスミッション 6段DCT
サスペンション(前) ストラット/コイル
サスペンション(後) トーションビーム/コイル
ブレーキ(前/後) ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ(前後) 215/60R17
車両本体価格(税込) 420万円
■アバルト500eカブリオレ
駆動方式 フロント1モーター前輪駆動
全長×全幅×全高 3675×1685×1520mm
ホイールベース 2320mm
車両重量 1380kg
トレッド(前/後) 1470/1460mm
エンジン形式 交流電気モーター
総排気量 42kWh(総電力量)
最高出力 155ps/5000rpm
最大トルク 235Nm/2000rpm
トランスミッション 1段固定式
サスペンション(前) ストラット/コイル
サスペンション(後) トーションビーム/コイル
ブレーキ(前/後) ディスク/ディスク
タイヤサイズ(前後) 205/45R18
車両本体価格(税込) 645万円
(ENGINE2026年1月号)