2026.06.20

LIFESTYLE

「ハウスではなくホームを作る」という建築家の言葉に共感 子供と家族に優しい、風が吹き抜ける大きなワンルーム空間の家

敷地に合わせて建物を3階建てにし、全ての階はそれぞれ大きなワンルームにした。

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世界的に活躍する建築家夫妻に設計を依頼した、子供たちと過ごす大きなテラスの家。雑誌『エンジン』の大人気連載企画「マイカー&マイハウス クルマと暮らす理想の住まいを求めて」。今回取材したのは、静岡県の閑静な住宅街に建つ一軒家。2階と3階に大きなウッド・デッキのテラスを設けたこの開放感のある家では2人の息子が仲のいい両親と、のびのびと暮らしていた。デザイン・プロデューサーのジョースズキ氏がリポートする。

2CVに通じる建築思想

広いテラスが幾つもあるこの建物は、クリエイティブディレクターでコピーライターの小藥元さん(43歳)一家が暮らしているお宅だ。場所は静岡県の、綺麗に区画整理された住宅街。「11歳と9歳になる息子たちを、自然のある環境で育てたくてこの場所を選びました」。家が完成したのは5年前のこと。それまでは都心に事務所を構え、近郊の町でのマンション暮らしだったが、長男が小学校に通い始めるタイミングで家作りを計画する。もっとも同じ生活圏では相応しい土地に巡り合えず、探すエリアを広げたところ、最終的に奥様の実家のある町に決まった。

北側から見た小藥邸。ウッド・デッキのテラスのサイズが大きい。屋上からは、遠くに富士山が見える。

家の設計をお願いする建築家も随分と検討した。そして著作を読んで興味を持ち、話を聞きに行ったのが、手塚貴晴+由比夫妻である。2007年に手掛けた、巨大なドーナツのような「ふじようちえん」が、世界で最も優れた教育施設と評され、今では国際的に活躍する建築家夫妻だ。

この幼稚園の屋根は大きな遊技場で、子供たちは気持ちよく走り回ることができる。一方建物内は壁のない大空間で、小さく仕切られた教室は存在しない。窓は全開にすると風が抜けるうえ、子供はそのまま屋外に出られるようになっている。こんな建物で学べば、子供はのびのびと、感受性豊かに育つことだろう。

2階のリビングダイニング。ガラス戸を全開にした状態。ウッド・デッキ部分には外履きを使うことなく、室内から気軽に出入りできる。薪ストーブは、手塚建築の定番の設備。建築家がデザインした小ぶりなものだが、効果は大きい。

話を聞いた小藥さん夫妻は、大いに共感を覚える。すると次は、手塚さん宅に食事に招かれた。手塚邸のコンセプトを一言でいうなら、「住宅版ふじようちえん」だろう。日当たりと風通しの良い大きなワンルーム構成で、キッチンは業務用を思わせる、シンプルで作業がしやすいもの。大テーブルを家族全員で囲むスタイルだ。

寝室も大空間の中にあり、当初子供部屋はなかったが、成長した子供から個室を求められ、カプセルホテルのようなベッドルームを増設している。「ハウスではなくホームを作りたい」という言葉が印象的だった、と小藥さんは話す。

大きなガラス戸を閉めた状態。余裕のある外階段のお蔭で、屋上までも簡単にアクセスできる。

これまで手塚夫妻が設計してきた住宅は、そのどれにも共通のポリシーが貫かれている。つまり開口部が広くて風が抜ける、大きなワンルーム空間の家だ。この一貫したスタイルは、手塚貴晴さんがキャンバストップ仕様のシトロエン2CV(1987年型)に、30年近く乗り続けていることにも通じるように思う。

2CVは幌を上げれば、風も光も入って来るうえ、エンジンは非力だが、自動化が進む近年のクルマにはない、運転する楽しさに溢れている。貴晴さんは、時代が変わっても変わらぬ価値のあるものが好きで、2CVの走行距離は55万キロを超えた。世界的な建築家になっても、豪華で便利なクルマに乗り換える気はどうやらなさそうだ。

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