2026年上半期イチオシのニューモデル33台にそれぞれ5人のジャーナリストが試乗した、計165本のインプレッションを順次公開している恒例の「エンジン・ガイシャ大試乗会」のリポート。今回は自動車評論家の渡辺慎太郎さんが試乗した、5台のインプレッションを一挙紹介。
アウディRS e-トロンGTパフォーマンス「もっともアウディらしい一台」
アウディの乗り味に対するイメージは人によって微妙に異なるかもしれないけれど、個人的にはこのモデルこそがアウディらしさをもっとも体現している一台だと思っている。

中身はポルシェ・タイカンと共有しているものの、それとは別物と言ってもいいくらいの差別化が見事に図られていて、アウディの技術力の高さを再認識させられる。
ポルシェほどスポーティさをグイグイと押し出してくる操縦性ではないけれど、ずっとステアリングを切っていたくなるくらい気持ちよく曲がる。しっかりとしたトラクションのかかり方には、車名にそう謳われていなくても「クアトロ」の文字が思い浮かんできて、安心してアクセルペダルを踏み込める。
それでいてちょっとしたサルーンを凌ぐ優れた乗り心地と静粛性まで兼ね備えている。もしこのクルマをスポーツカーと位置づけるのであれば、これほどの快適性まで備えた4ドアスポーツカーは他に見当たらない。自分が思い描くアウディの上質な乗り味とは、きっとEVとの相性がいいのだろうと思う。
BMW M5ツーリングM xドライブ「いかにもMらしい」
今回はたまたま、モーガン・プラス4の後にこのクルマに試乗した。電子制御に依存しないクルマと、電子制御に依存しないと(たぶん)まともに走らせられないクルマという、こんな両極端の2台が存在するいまの時代に自分が居られたことをむしろ素直に喜んだ。

クルマの完成度を厳密に見れば、M5はツーリングよりもセダンのほうがエンジニアのやりたかった事が明快なのだけれど、こんなハイスペックなワゴンは他に類例を見ないので、存在価値はツーリングでも十分ある。
M5はPHEVなので、バッテリー残量次第でEV走行も可能。この時でも、耳にはV8サウンドが届いてくる。EVだからといって無音にしたり電子的サウンドを鳴らしたりするのではなく、あえてエンジンの音を聞かせる。こういう演出はいかにもBMWのMらしい。
それも本物と聞き間違えるほどサウンド・クオリティが高い。エンジンが始動し、生の音源へバトンタッチする瞬間はほとんど分からないから、運転中はずっとV8が奏でる音色を楽しめる。気持ちよく騙してくれる1台。
ランドローバー・ディフェンダー・オクタ「オンでもオフでも」
「OCTA」はBMWの「M」、メルセデスの「AMG」に相当するハイスペックな仕様で、635ps/750Nmものとてつもないエンジンパワーでグイグイ走る。

オフロードヨンクにそこまでのパワーが必要なのか。もはやオフロード走行は想定されていないのか。そんなモデルが市場には散見されるけれど、ディフェンダーのオクタはダカール・ラリー2026に初めてワークス参戦し、stockカテゴリーはワンツー・フィニッシュと4位という、出走した3台すべてが好成績を収めている。
オンロードだけでなくオフロードでも速く確実に走れることを自ら実証したランドローバーは、「老舗」を名乗るのに相応しい4輪駆動メーカーなのである。餅は餅屋なのだ。
全高よりも広い全幅は、日本だと駐車場などで物理的な困難にたまに見舞われるけれど、運転している限りは運転席からの視認性が抜群によいのでほとんど気にならない。エアサスがもたらす優れた乗り心地や質感の高いインテリアなど、その精悍なスタイルから想像する以上の快適性も備えている。