2026年上半期イチオシのニューモデル33台にそれぞれ5人のジャーナリストが試乗した、計165本のインプレッションを順次公開している恒例の「エンジン・ガイシャ大試乗会」のリポート。今回は自動車評論家の西川 淳さんが試乗した、5台のインプレッションを一挙紹介!
アウディRS e-トロンGTパフォーマンス「新しい乗り物体験がある」
ヴァーチャル空間への擬似的な没入体験だった、とでも表現すれば良いだろうか。エンジン付きの高性能マシンにはつきものの、機械が連携して動く操作フィールや路面とのせめぎ合いの結果残る感覚といったものが、クルマから降りてみれば潔いくらい消え失せていたからだ。

現実からの逃避ではなく、そもそも現実的ではない感覚。さらに完成度の高まったRS e-tron GTには新しい乗り物体験がある。そういえばスタイリングからして独特だ。AUDIの4ドアを薄くデフォルメしてさらに美しく整えた、世界で最も自己主張の強いサルーンデザインだと思う。
いろんなカテゴリに派生した欧州のBEV。これからの種族ゆえ、エンジン・モデルよりバラエティに富んでいるのは当然というべきかも。大方の予想通りBEVの行く道の向かい風が強くなりはじめた。エンジン・ファンにとっては嬉しいかも知れないが、選択肢の減るようなことはないように願いたい。BEVにも可能性は大いにある。モビリティの根本的な変化と進化に電動化は欠かせないのだから。
ベントレー・コンチネンタルGTCマリナー「非日常が味わえる」
EPCメンバーと同時に乗り込んですぐ二人してウッドパネルを触っていた。マリナー仕立てのヴェニアトリム。ストーンフィニッシュといってざらざらしている。こんなの見たことないよねぇ、としばらく撫でまわし、ようやく自己紹介の挨拶となった。当たり前の手続きをすべて忘れさせてくれる。座った瞬間から非日常を味わいたいのであればベントレーのコンバーチブルなどはまず最適な一台だろう。

特にマリナーは良い。シートバックの一つ一つ丁寧な刺繍を観察するだけで、もううっとりしてしまう。走り出す前からラグジュアリーカーとはどういうものかを空気で教えてくれるのだ。
トップを開けて走り出そう。真のラグジュアリーは寒さにも強いらしい。きっと乗り手の方が勝手にホットになっていたのかも。これまでのコンチネンタル系モデルに比べて随分とスポーツカーっぽく動くようになった。強烈な加速フィールはV8プラグインハイブリッド・パワートレインの賜物だ。サウンドもなかなか刺激的。ベントレーの印象が変わったと聞いてホッとした。
シトロエンC3マックス・ハイブリッド「道具にこその心地よさ」
ポルシェやフェラーリに乗っているというEPCメンバーを乗せた。正直シトロエンじゃ盛り上がらないかと思いきや、なんと奥様の愛車がルノー・メガーヌで、そろそろ買い換えどきだからちょうどよかったらしい。

まずはシトロエンらしい乗り心地に二人して満足する。それにしてもフランスの実用車はどうしてこうもモデルごとにデザインが激変するのか? と鋭いツッコミが入った。確かに、なるほど。フランス人ってケチ(=合理的)だからかえって全刷新しないとウケないのでは? とボケておく。
それはともかく1.2リッターガソリンの48Vマイルドハイブリッドじゃターンパイクは辛いだろう、と思いきや、なかなかどうして、過不足なく上っていく。
下りは下りで粘着質なコーナリングを存分に楽しんだ。足腰の粘り強さもまたシトロエンの魅力だろう。曲がっている最中の手応えの良さは特筆できる。実用車なのに、否、だからこそ、手に伝わる動的フィールの心地よさにこだわっているのだろう。道具にこそ心地よさを。フランスらしい合理性である。