Sクラスからクリーン・ディーゼル・ハイブリッド「S300h」がラインナップ落ちした時、私は大いに落胆した。あれこそがSクラスのベスト。最高に快適かつサスティナブルな長距離走者だと確信していたからだ。しかしメルセデスは、思いもよらぬ形でリベンジを果たしてくれた。S300hでは4気筒だったディーゼル・ユニットを、なんと直列6気筒化。ハイブリッドもナシの、純粋な内燃機関車としてリボーンさせたのだ。
それは、サスティナブルとかなんとかのゴタクが吹っ飛ぶほどの、甘美な快楽装置となっていた。超絶シルキーな回転フィールは、真剣にガソリン・エンジンをも凌ぐ。もちろんトルクは極太。AIRマティック・サスペンションがもたらす極上の乗り心地や、高速道路で「ほぼ自動運転」を実現したACCとのハーモニーは、地を這う陶酔のプライベート・ジェットだ。ディーゼルなのに!ただ流しているだけで、これほど気持ちいいサルーンは他にない。
この日、担当したどれも高性能で刺激の強いモデルの試乗のあと、最後にこのクルマに乗って、とてもホッとした。乗り味は、まさに癒やしの一言。フットワークはゆったりとしているし、直列6気筒ディーゼル・エンジンはトルクが分厚く、しかも緻密でしっとりとしたフィーリングで回って、しみじみ気持ちが良い。いたずらに乗り手を刺激してくることがないのも嬉しいところだ。
乗り心地も、きわめてソフト。上屋は何となくゆらゆらしているようでいてタイヤの接地感はしっかりと安定しているこのシャシーの味付けは、まさにメルセデス・ベンツならではのマジックだ。しかも室内には、パフューム・アトマイザーからのアロマも香ってくるのだから、走り出すやすっかり心が解きほぐされてしまった。楽しいクルマや刺激に溢れたクルマは沢山あるけれど、こんな風に寛げる、こんな風に穏やかな気持ちにさせてくれるクルマは他にそうは無い。Sクラスは今もやはり特別だと改めて実感したのだ。
〔読者コメント〕
●最高のセダン。ディーゼルとは思えない音にびっくり。(菅沼幸博さん)
●さすがベンツという感じ。少しシートが硬いというものいい。(菅沼育子さん)
●6気筒ディーゼル・エンジンの滑らかさは流石。スラロームも全開でお願いしましたが安定感も素晴らしい。(杉浦啓修さん)
●安定感、静粛性ともに流石はメルセデス。ディーゼルを感じさせない。(栗原泰久さん)
●ディーゼルであることをまったく感じさせない。成熟した雰囲気。内装の未来感とクラシックなディテールのバランスが絶妙。(鈴琢磨さん)
●外でも中でもその静かさに驚きました。ディーゼルなのを忘れるどころかモーターのようだった。(小川憲一さん)
●昔から変わらない乗り心地が素晴らしい。新型ディーゼルは言われないとまったくわからない領域まで進化している。(斉藤貴志さん)
●試乗したなかで一番乗り心地いい。その上スラロームではスポーティなドライバーズ・カーでもあった。(長藤憲司さん)
昨年マイナーチェンジしたメルセデス・ベンツのフラッグシップ・サルーン、Sクラスに追加された直6ディーゼル搭載モデル。メルセデスに直6が復活するのは20年ぶり。注目は圧倒的な静粛性と滑らかな回転フィールで他を圧倒する新世代直ディーゼル。3リッター直6DOHCターボは、最高出力=340ps/3600-4400rpm、最大トルク=71.4kgm/1200-3200rpmを発揮。9段ATを介して4輪を駆動する。全長×全幅×全高=5125×1900×1495㎜。ホイールベース=3035㎜。車両重量=2080㎏。車両価格=1183万円。
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写真=神村聖
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