ウェッツラーは、ドイツ・ヘッセン州にある小さな町。フランクフルトから北北西の方向にアウトバーンで約1時間の距離だ。渋滞に捕まればもっと時間がかかる場合もあるが、知人の乗ったタクシーは何と時速260km出して30分で到着したとか。その運転手さん、もしかしてリュック・ベッソンの映画に出ていたマルセイユ出身の彼かも?
ライカカメラ社の本社屋上からライツパークを臨む。のどかなドイツの田舎町の風景と好対照な建築群だ。画面中央にあるのが「arcona LIVING ERNST LEITZ HOTEL」。そこに隣接してミュージアムやライカストア、映画用レンズの製造会社などが立ち並んでいる。
20世紀の初頭に主流だった大判の写真機に対し、小型速写カメラのパイオニアであるライカの優位性を見抜き、いち早く使いこなしてきた2名のフォトグラファーが残したネガは50万カットに及ぶという。その中から世界各地から収集された200点ものオリジナルプリントに加え、書籍・ポスターなども展示している。
入口のビジュアルは、オペルの創設者ヴィルヘルム・フォン・オペル氏により1934年に竣工したバウハウス様式の温水プールのオープニングの様子を捉えたもの。
これはライカが「小さなネガから大きな写真」を得られることを示すべく、1932年に開催した展覧会で展示されたオリジナルプリント。奇跡的に現存する1枚だ。画面の右下にはネガの原寸である24×36㎜の画像も焼き付けられており、天地のサイズが1mを超える引き延ばしにもライカで撮影したフィルムは対応できることを説明している。
「動物園から:パウル・ヴォルフの写真研究」と題された書籍は、パウル・ヴォルフ氏がライカを手にして間もない1929年に刊行された。その後1965年まで8版が刷られた超ロングセラーだ。現在に至るまで我々が享受しているキャッチーな写真とテキストの組み合わせという編集の手法は、この時代に生み出されたものなのだ。
ライカで撮られたネガをベタ焼きしたもの。モチーフは20世紀の初頭に世界を席巻したドイツの大型飛行船だ。このように連続して変化する光景を次々とダイナミックな構図で活写することは、当時の大型カメラでは不可能。これぞライカで撮る写真の真骨頂なのだ。
パウル・ヴォルフ氏は、日本の写真界にも大きな影響を与えた人物でもある。ライカによる彼の大々的な写真展が開催されたのは1935年。ライカによる新しい視点の写真を見ようと会場は盛況を極めたとのこと。この2冊は写真史研究家の打林俊氏の蔵書で、1936年にライカの輸入代理店が発行したもの。中面では写真に対して使用したレンズや撮影データがしっかりと記されており、写真撮影の優れた手引書になっている。
こちらはパウル・ヴォルフ氏が晩年に使用していたライカの機材一式。いわゆるバルナック型ライカと呼ばれるモデルだ。現在ではクラシックカメラの類に分類され、ゆっくりしたペースで限られたジャンルの写真を撮るカメラと捉えられがちだが、展示された作品を見れば当時のライカは万能カメラとして大活躍していたことが分かる。
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文・写真=ガンダーラ井上
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