トレントの山の中腹、ブドウ畑に囲まれた、ミシュラン2つ星のリストランテ「Locanda Margon」(ロカンダ・マルゴン)。フェッラーリ社が2007年から経営するリストランテで、今年7月には新しくEdoardo Fumagalli(エドアルド・フマガッリ)シェフを迎えた。フマガッリシェフは4年前に26歳の若さでミシュランの星を獲得、今、イタリアの料理界で最も注目されている若手シェフだという。店内はシックな作りだが、ホールスタッフも若く、明るいフレンドリーな笑顔で接してくれる。
フェッラーリ社のオーナーファミリーで経営陣の一人、カミッラ・ルネッリさんに、メニューに合わせてフェッラーリの4種類のスプマンテをテイスティングさせてもらった。ルネッリさんは、近年のフェッラーリの特徴についてこう説明する。
「世界的な健康ブームで、ヘルシーな料理が流行っています。フェッラーリもすっきりしたクリアな味わいを目指しています。ガス圧も少し抑えめにしているので、乾杯はもちろん前菜からメインまで楽しめます。もちろん和食にも合いますよ」
気軽に手でつまめるアミューズからスタート。灰皿の形をした石造りの器に、シガーに見立てたヤギのチーズ、バプリカのメレンゲにライムソースをかけるなど、見た目も食感もユニークで楽しい。ソースで花木が描かれたお皿が出てくる。なんと、このソースをオリーブのスポンジで絵を消しながら食べるのだという。テーブルを囲んだ全員で、顔を見合わせて大笑いする。メインはモロッコ産のエビと、仔牛の胸腺のソテーを、アメリケケーヌとノリ、ゴマ、サフランの“ふりかけ”でいただく。見た目以上に、食材そのものの風味が生かされていて、1つのお皿の中でも味の変化が楽しめるようになっている。
ワインは、フェッラーリのマキシマム・ブリュット(瓶内熟成最低36ヶ月)から始まり、ペルレ(瓶内熟成最低60ヶ月)のミレジウムとロゼと続く。フレッシュでクリアな味わいはそのままでも、熟成が長いほど複雑さが増しているのが分かる。圧巻は創業者の名前を冠した、「ジュリオ・フェッラーリ」。フェッラーリ最高峰のシリーズで、単一畑から厳選されたシャルドネのみを120ヶ月熟成させている。きめ細やかな泡。芳醇な香りとリッチな果実味、それでいてイキイキとしたフレッシュ感もある--。料理によって、4種類のスプマンテの特徴がより良く引き出されている。
「ジュリオ・フェッラーリ」を造る、最上のワイン畑は、リストランテのテラスから対面にある山の中腹に見ることができる。その景色の美しさがそのままワインになっているのだと思った。
文=山元琢治(ENGINE本誌) 写真=増田岳二 通訳=田中小百合 協力=日欧商事
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