またしても、79号車にトラブル発生である。先月号で左マフラーから白煙を吹き上げたトラブルも完全に収まり、エンジンは快調そのもので毎日元気に走り回っていると報告したばかりだというのに、今度はそのエンジンが突如、掛からなくなるトラブルに見舞われたのだ。
7月25日、79号車は筑波サーキットで開かれた恒例のエンジン・ドライビング・レッスンに参加していた。午前中はジムカーナ場を使ったオーバル走行のトレーニング。お昼休みを挟んで、午後はコース1000を走行する定番のカリキュラムが進行していたのだが、この日、いつもと違っていたのは、異常気象と言っていいほどの猛烈な暑さが関東地方を襲っていたことだった。
容赦なく照りつける太陽に人も参るがクルマもへばる。まず、受講生の新型アルピーヌA110に、アイドリングが一定せずエンジンがストールするトラブルが発生。残念ながら回復することなく、午後の走行を諦めざるを得なくなってしまった。その時点では79号車は元気に走っており、写真でご覧のような引っ張り撮影もこなした上、7分間ずつのフリー走行も2回までは無事にこなしていたのである。
とはいっても、暑さでクルマが一杯一杯になっていることは、ブレーキやタイヤの感触から察知できた。そこで走行中はクルマがへばらないように、ずっと全開で攻め続けることはせず、適度に流してクーリングすることを考えていたし、ピットに戻ってからもエンジン・フードを開けてアイドリングを続けて、熱を逃がすようにしていた。暑さ対策はそれなりにやっているつもりだったのだ。
ところが、いったんエンジンを切った後、3回目の走行に向けて再び始動、と思ってキイを回しても、まったくエンジンが掛からない。セルモーターは動くのだが、どうしても点火してくれないのだ。これはどうやら暑さで燃料がパーコレーションを起こしたのではないかということになり、みんなに押してもらって日陰の少しでも涼しい場所にクルマを移動。冷やして様子をみることにした。
で、最初は100度近くあった水温が徐々に下がってきたところでまた始動を試みると、一瞬掛かりそうになる。あっ、これは快方に向かっているのではないかと、さらに冷やして30分おきにキイを捻る。いつかバババーンといつもの快音が響くことを期待してキイを捻り続けたのだが、結局、レッスン終了までエンジンは掛からず。仕方なくJAFに救援を頼んだが、それでもやはり修理不能ということで、翌朝トランポに引き取りに来てもらい、ポルシェセンター世田谷に移送という最悪の事態になった次第である。
ポルシェセンターの工場で調べてもらった結果、燃料ポンプのヒューズが飛んでいたことが分り、交換して再始動を試みたところ、一瞬だけ作動して、またポンプが動かなくなってしまったという。要するにポンプ本体の不良によりヒューズが飛んだ可能性が高く、結局のところ燃料ポンプがダメになっていたのである。では、なぜポンプがダメになったかといえば、経年劣化で弱っていたところに熱による負荷が加わって、最後のとどめを刺してしまったというのが正解のようだ。
そこまで分れば修理は簡単である。まずは燃料ポンプを新品に交換。さらにオイルタンクとボディの隙間にあって、熱による焼けで通電不良を起こしていたハーネスも新しいものに交換することになった。費用は燃料ポンプのパーツ代が約6万5000円で、ガスケットなどの付属部品も含めて7万円弱。その交換作業代が約3万円。さらにハーネス交換が作業代も含めて約3万円で、計約13万円の出費となった。いや、さらにトランポ代が5万5000円かかっているから18万5000円か。なんとも手痛い出費ではあるが、それでもエンジン自体にトラブルがなかったのだから、まだしも救われたと思うことにしたい。
今回、せっかく工場に入れた機会に、オイルとオイルフィルターも交換してもらうことにした。オイルは9リッター必要で約2万8000円。フィルターと作業代も含めると5万円弱かかる。しかし、これだけサーキット走行もしていることを考えると、最低でも1年に1度はオイル交換が必要だろう。サーキットを走るポルシェ・オーナーの中には、もっと頻繁に交換している人も多いと思う。
さて、今回のリポートでは、さらにもうひとつ報告しておかなければならないことがある。実は79号車は筑波を走る数日前、別のトラブルに見舞われていた。リポーターの自宅前の道に現在工事中の箇所があり、そこに作られた段差があまりに大きくて79号車では越えることができず、アゴの部分を乗り上げて、ひどい傷をつけてしまったのだ。道路工事会社にそれを話したところ、修理代金を補償してくれることになった。79号車のフロント・バンパーの下には黒いプラスティック製のリップ・スポイラーが付いており、その部分だけ交換することができる。
パーツ代が約3万円。交換作業代を含めても3万4000円だから、ポルシェの修理代としては、異例に安いと言ってもいいかも知れない。それだけ頻繁に傷つく部分だということか。それにしても、良心的な工事会社で本当に良かった。トラブル続きの中で少しだけ気分が晴れた出来事だった。
■79号車/ポルシェ911カレラ4S(996型)
PORSCHE 911 CARRERA 4S
購入価格(新車時) 340万円(1244万2500円)
導入時期 2017年4月
走行距離(購入後) 9万9717km(1万7332km)
文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=神村 聖
(ENGINE 2019年10月号)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
advertisement
PR | 2024.11.21
LIFESTYLE
冬のオープンエアのお供にするなら、小ぶりショルダー! エティアムか…
2024.11.21
CARS
日本市場のためだけに4台が特別に製作されたマセラティMC20チェロ…
PR | 2024.11.06
WATCHES
移ろいゆく時の美しさがここにある! ザ・シチズン の新作は、土佐和…
2024.10.25
LIFESTYLE
LANCIA DELTA HF INTEGRALE × ONITS…
2024.11.19
WATCHES
エンジン時計委員、菅原茂のイチオシ 世界限定1200本! グランド…
2024.11.01
CARS
これは間違いなく史上最速のウルスだ! プラグイン・ハイブリッドのウ…
advertisement
2024.11.16
こんなの、もう出てこない トヨタ・ランドクルーザー70とマツダ2 自動車評論家の渡辺敏史が推すのは日本市場ならではの、ディーゼル搭載実用車だ!
2024.11.15
自動車評論家の国沢光宏が買ったアガリのクルマ! 内燃エンジンのスポーツカーと泥んこOKの軽自動車、これは最高の組み合わせです!
2024.11.15
GR86の2倍以上の高出力 BMW M2が一部改良 3.0リッター直6ツインターボの出力をさらにアップ
2024.11.16
ニスモはメーカーによる抽選販売 日産フェアレディZが受注を再開するとともに2025年モデルを発表
2024.11.20
抽選販売の日時でネットがざわつく 独学で時計づくりを学んだ片山次朗氏の大塚ローテック「7.5号」 世界が注目する日本時計の傑作!