まず目を引くのは、第二時間帯表示のサブダイアルだ。フィリップ・アペロワがエルメスのためにデザインしたユニークなタイポグラフィによる数字は、時計まわりで順に並んではいるものの、ばらばらに見える風変わりな配列になっている。ダイアル右側にLやHと記された小さな丸い窓もローカルタイムとホームタイムの各昼夜表示だ。そのデザインや機能には、さすがエルメスと感嘆するエスプリが満ちあふれている。
美しいブルーダイアルは、GMT機能の第二時間帯表示に用いるサブダイアルを10時位置に配し、ケース横のプッシュボタンで調整する。L(ローカルタイム)とH(ホームタイム)の昼夜表示も旅先での時刻確認の際に便利。超薄型の自動巻きムーブメントはエルメス・マニュファクチュールH1950。ピンクゴールド、ケース直径39.5㎜、3気圧防水。税別予価222万円。9月発売予定。
GMTモデルを待望していた人は少なからずいたはず。自分もそうだ。そして姿を現したのは、予想を超える素晴らしいモデル。独創的な時の表現にこだわり、唯一無二の世界を開拓してきたエルメスらしさが行き渡る、何にも似ていないオリジナルGMTウォッチになっている。これは欲しい!
インダイアルの青い針で第二時間帯を表示するGMTモデルは、インデックスの書体や配置、全てが独創的で美しい。それでいてホームタイムとローカルタイムの昼夜表示付きと機能性もバッチリ! ピンクゴールド製の新作は、旅先で過ごす時間も優雅に彩ってくれそう。
ダイアル上の12時と6時位置に精緻に表情が描かれたマザー・オブ・パール製の2つの月。それぞれの月は上が南半球、下が北半球から見た姿だ。この上を回転する時刻・分表示と日付表示の2つのインダイアルが59日かけて一周することで、それぞれの月の満ち欠けを表現する。上下非対称のラグを持つアルソーの優雅なケースに画期的なムーンフェイズ機構の組み合わせは、まさに見るものを虜にする美しさだ。用いられる素材や仕上げにおいても宇宙を感じさせ、身に着ければ天空を腕に手に入れたような気持ちになるだろう。
その美しさもさることながら、他にはないユニークな機構を持つムーンフェイズモデル。昨年のSIHHにて発表され話題を集めたが、今年は新たに星の輝く夜空のようなラピスラズリと水墨画を彷彿とさせるブルーパールをダイアルにまとって登場した。昨年のアベンチュリンやメテオライト(隕石)と同様に、新作の素材使いにもロマンを感じさせる。自動巻き。(写真上)ブルーパールダイアルはホワイトゴールド、(写真下)ラピスラズリダイアルはピンクゴールド。ケース直径43㎜。ともに価格未定。今秋発売予定。
昨年のSIHH取材時に、唯一無二とも言える画期的な機構はもちろんのこと、その美しさに一目惚れ。ダイアルや月の表情、素材使い、針の仕上げなど、時計を構成する全ての要素が素晴らしい! そして南半球の月にはさりげなくペガサスの姿が入る遊び心。改めて新作を見て欲しくなった!!
文=菅原 茂(時計ジャーナリスト)/前田清輝(ENGINE編集部シニア・エディター)
(ENGINE2020年7・8月合併号、ENGINE WEBオリジナル)
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