電気自動車と暮らし始めてまもなく4カ月。新しい生活様式の中で 行動範囲を少しずつ広げて、気づいたこと、感じたことを報告します。
リポート開始以来、89号車の走行距離は4500kmを超えた。初回の報告で記した「内燃機関のクルマに、もう戻れないかも」という思いは、日増しに強くなっている気がする。新しいものを受け入れることは面倒で、手間だと思う人がいるのも分かる。けれど個人的には、EVのある生活は何かと発見があり、試行錯誤するのが面白くてたまらない。
例えばガソリン・スタンドに行く代わりに、翌日の都合を考えて充電したり、出先の充電施設を下調べするのは、すっかり習慣になった。車載ナビの設定でも可能だが、手軽なのはスマートフォンのアプリだ。Iペイス専用で充電状況の確認、遠隔での空調操作(酷暑でも快適!)などが可能な公式の「JAGUAR REMOTE」をはじめ、充電施設を探す「EVsmart」と「高速充電なび」はもはや必須。前者は一般道の施設の情報が、後者は高速道路上の施設がリアルタイムの使用状況まで分かる。ある時、高速充電なびを同乗者に操作してもらい東名を走っていると、彼が前にいたリーフやテスラを見て「あっ、追い抜かないと!」と言い出したのには笑ってしまった。利用が基本30分というルールがあるとはいえ、充電施設が絶対的に少なく、無駄な待ち時間は誰もが避けたいから仕方がないのだが。
この2カ月、89号車は小田原、熱海、伊東、清水と神奈川、静岡方面に足を伸ばした。食事や休憩を兼ねる時のみ急速充電を行い、出先で充電のために30分ただ待つ、ということはほぼしていない。90kWhの大容量バッテリーゆえ往復300km程度なら、余裕綽々なのだ。ただ、そうした出先の急速充電の際などに、気がついたことを報告しておきたい。
もしガソリン・スタンドの能力の差が極端で、同じ時間をかけて、しかも同じ料金を払うのに、ある店では10Lしか入らず、別の店では30L入る、と聞いたら誰もが変だと感じるだろう。しかし急速充電器は、そういうことがままある。Iペイスは日本のCHAdeMOに対応し、普通充電を含むNCSネットワークの使用は専用カードがオーナーに付与されている。料金は1分15円(登録後1年は基本料無料、2年目以降は月額+3000円、49カ月目以降は月額+4200円)で、30分で毎回450円だ。ところが入る電力は一定ではなく、89号車だと施設によって実際に3倍の差が出た。同じ時間と料金ならたくさん入れたい、と思うのは当然だが、それが可能な高出力の充電器はたいてい混んでいるから悩ましい。なお、高速巡航直後や急速充電を繰り返すような状況下でも、充電量への影響は感じられなかった。バッテリーの温度管理が優秀なおかげだと思うが、ほぼ出力通りの電力が得られるのは安心できる。
もう1つ気になるのは、欧州では最大100kWの急速充電に対応しているはずだが、今のところ日産などの最新の90kWタイプでも最大50kWでしか充電できていないこと。そこで次回以降、急速充電を含むIペイスの日本市場の対応について、スペシャリストに話を聞いてみたい、と考えている。
■89号車/ジャガーIペイスHSE
JAGUAR I-PACE HSE
購入価格:1183万円
導入時期:2020年6月
走行距離 1万5388km
文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=阿部昌也/編集部
(ENGINE2020年11月号)
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