デビューから5年。今や大黒柱とも言うべき存在になったベントレー初のSUV、ベンテイガ。大幅なフェイスリフトを受けた新型は、どう進化したのか。
世界初のラグジュアリーSUVとして2015年に登場したベントレー・ベンテイガは、これまでに2万台以上を販売する成功を収めてきた。ロールスロイス・カリナンやランボルギーニ・ウルスなど、このクルマが新たに切り開いたカテゴリーへの参入車が続々登場しているのはご存じの通りだが、一方で昨年のベントレーの世界販売台数に占めるベンテイガの割合はなんと45%。波に乗り遅れるなと各ブランドが躍起になるのも当然で、もはやベントレー自身にとっても、押しも押されもせぬ大黒柱に成長しているのだ。
それだけに今回のフェイスリフトにかける意気込みは相当なものだったに違いない。果たして、どんな進化を遂げているのか。日本上陸ホヤホヤのそれに日本自動車研究所の城里テスト・コースで乗せてくれるというので、おっとり刀で行ってきた。
すでに写真で見て知っていたとはいえ、初めて目の当たりにする新型ベンテイガは、フェイスリフトという範疇をはるかに超えるくらいに異なるデザイン言語で作られたクルマに生まれ変わっていた。これまでのベンテイガは、SUVでありながらも、いかにも高級車という威厳を漂わせた重々しい印象の顔つきだったけれど、新しいコンチネンタルGTのデザインと共通するテイストを取り入れた新型は、もっとスッキリとしたスポーティな、それでいて先代に負けず劣らずの押しの強い顔つきをしている。
リアのテールランプの造形も、高級車然としていた旧型からコンチネンタルGTにも共通する軽やかでモダンなデザインのものに変更されており、全体的にずいぶん若返ったような印象を私は持った。
それはインテリアも同様だ。たまたま試乗車がそうだったせいもあるのかもしれないが、ウッド・パネルの使用量が減り、その分メタリックのパーツが増えて、これまたクラシックな高級車然とした旧型から、よりモダンでスポーティな印象のものになっている。ステアリング・ホイールもスポーティなより小径なものになり、メーターはフルデジタル化された。センター・コンソールには10・9インチのタッチ・スクリーンが設えられ、その上に位置するエアベントが伝統の丸型からベントレー・ウィングのような形状のものになったことも、大きな変化のひとつだ。
スターター・ボタンを押すと、フロントに縦置きされた4LV8ツインターボに火が入る。初代ベンテイガはW12気筒がラインナップの中心になっていたが、新型ではノーマル・モデルはV 8 となり、W 12 気筒は“スピード”の専用エンジンとなる。そのせいもあってか、走り出してすぐに感じるのは、12気筒の持つ厳かさや重々しさとは違い、もっとスッキリとしたスポーティな印象になっていることだ。
なるほど、見た目通りの変化を遂げたというわけだな、と私は思わず頷いた。もちろん、2・4t超の巨体を持つ大型SUVのことゆえ“軽快”と表現すべき乗り味とは違うのだが、しかし、全体としてとてもバランスのいい、ラグジュアリーとスポーツがほどよく合わさった走りになっている。
それで思い出したのは、初代ベンテイガに初めて試乗した時に、これはずいぶんと肩ヒジの張ったクルマを作ったものだな、と感じたことだった。とにかく超のつく高級車でなければいけないし、SUVとしての機能も十全でなくてはいけない。しかもベントレーらしいドライバーズ・カーとしての突出した走行性能も実現しなくては、ということで、それぞれの要素は突出してはいるけれど、それがうまく混ざり合っているとは言い難い、ある意味で存在自体が“突出”したクルマになっていたように思うのだ。
それが今回のフェイスリフトでは、とてもいい感じに肩の力が抜けて、すべての要素が自然に混ざり合っている印象だ。だから、走っていてまったくストレスを感じることがないばかりか、あまりに気持ちいいので、もっともっと走り続けていたいと感じてしまう。
これは新しい“高級ドライバーズSUV”の世界を切り開く傑作なのではないか。そんなことを考えながら、一般道を模したテスト・コースを何周も何周も回り続けていた。
■ベントレー・ベンテイガV8
駆動方式..........エンジン・フロント縦置き4WD
全長×全幅×全高..........5125×1998×1742mm
ホイールベース..........2995mm
トレッド(前/後)..........1689/1707mm
車両重量..........2416kg
エンジン形式..........V型8気筒DOHCツインターボ
排気量..........3996cc
最高出力..........550ps/6000rpm
最大トルク..........770Nm/1960-4500rpm
トランスミッション..........8段AT
サスペンション(前)..........ダブルウィッシュボーン/ エアスプリング
サスペンション(後)..........マルチリンク/ エアスプリング
ブレーキ(前後)..........通気冷却式ディスク
タイヤ(前後)..........285/45R21
車両本体価格(税込み)..........2142.8万円
文=村上 政(ENGINE編集部) 写真=柏田芳敬
(ENGINE2020年11月号)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
文=村上 政(ENGINE編集部) 写真=柏田芳敬
advertisement
2025.09.14
CARS
8台のスポーツカーと7台のバイクが並ぶ理想のガレージ! 最初の1台…
PR | 2025.09.12
CARS
【大阪・参加者募集】マセラティ最新モデルの特別試乗会を開催! 人気…
PR | 2025.09.12
CARS
GRヤリスの進化をサーキットとダートで実感!「GR YARIS ×…
2025.09.13
LIFESTYLE
狭い旗竿地に理想の我が家を建てる方法とは? 雰囲気のある家具や照明…
2025.09.10
CARS
【速報!】849は何を意味する? 新型フェラーリ『849テスタロッ…
2025.09.06
CARS
ここはチャンピオンの秘密のガレージ レーシング・ドライバー、山野哲…
advertisement
2025.09.14
8台のスポーツカーと7台のバイクが並ぶ理想のガレージ! 最初の1台はフェラーリ360モデナ、ただ眺めるだけで心がワクワクした
2025.09.16
最終モデルで遂に完成の域に! 大井貴之(モータージャーナリスト)が1位に選んだのはこのスポーツカー
2025.09.10
1位はなんと意外なあの国産車!? モータージャーナリストの飯田裕子の「身銭を切ってでも欲しいクルマのランキング」尊敬できる暮らしの道具のようなクルマです!
2025.09.14
設計のコンセプトはワイド&ロー どこからでもスーパーカーを眺めて暮らせる「スポーツカーのような家」 ポイントは天井の高さにあり!
2025.09.14
外車に多いDCTとは?デュアル・クラッチ・トランスミッションのメリット・デメリットもあわせて解説