時計のデザインで人気の的が内部のメカニズムが見通せる“オープン”スタイル。ダイアルやケースバックを通して見える精巧なムーブメントとスケルトンで露わになった機構には心躍る。見栄え良く気分爽快になる、こんな最新の洒落たデザインを今こそ存分に楽しみたい!
オープンスタイルの腕時計のはしりは、機械式が復活した1990年代のこと。透明なクリスタルを用いたケースバックを通して、内部の機械式ムーブメントが見えるようにしたのが始まりだ。この状態では時計を裏返さないと機械が見えないが、表からも見えるようにしたのが、次に登場するオープンスタイルのダイアル。
ダイアルに窓を設けてムーブメントの一部を露わにしたり、さらに進んで大胆にカットアウトを施したり、サファイアクリスタルで透明化したダイアルなどによってムーブメント全体が見渡せるモデルも続々と登場するようになった。
一方で外から見られる側の機械式ムーブメントでは、装飾仕上げが盛んになり、スケルトン加工にも拍車がかかった。もともと「骨格」を意味するスケルトンは、ムーブメントの部品を支える地板やブリッジなどを削ぎ落して骨格のみを残し、時計機構を露わにするテクニックのこと。
現在は、職人が部品を削る古典的なスケルトン加工ではなく、設計段階で、表や裏からの透過や美観などを計算に入れて部品をデザインするのが通例だ。同時に繊細な部品の強度 や耐久性を確保するために特殊なハイテク素材を用いることも増えた。
開放的で視覚的な楽しさも抜群なオープンデザインは、メカ好きを喜ばすだけではなく、高級時計を現代のライフスタイルに合った、気取らずカジュアルなものへと変えた点で も重要だ。腕に着けたとたん、心は軽やかになり、外の空気を浴びたくなる、そんな魅力がオープンスタイルの時計にはあるのだ。
クラシカルなドレスウォッチから始まり、スポーティなデザインウォッチ、さらにはラグジュアリー・スポーツウォッチへと広がったオープンのトレンド。それは、スイスのトップブランドが発表する高級時計でも顕著だが、カットワークのミニマムダイアルや透明なダイアルレスなどでの表現は枚挙にいとまがなく、高級時計のイメージが大きく変わった。
あくまでも特別な高級感を大切にして、スポーティであってもカジュアルウォッチとは完全に別格の存在感を主張するのが従来の高級時計の価値観。しかし、オープンスタイルを取り入れたラグジュアリー・スポーツウォッチのインフォーマルもしくはカジュアルなデザインは親近感を生み、間違いなく新たな価値観を生み出したのだ。
21世紀のハイテクを駆使してラグジュアリー・スポーツウォッチの先端を突き進むのがリシャール・ミルやウブロ。対して、オープンダイアルで複雑機構を見せつつ老舗の伝統と革新との調和を図るヴァシュロン・コンスタンタンやオーデマ ピゲ。手法は異なれど、高度な技術を満載した複雑ムーブメントを楽しめるところがいい。
ラグジュアリー・スポーツの傑作に永久カレンダーやトゥールビヨンを搭載するという贅沢の極み! そして、卓越した技術や新素材で革新的な時計作りを展開するリシャール・ミル。いずれの時計もその魅力はやはり複雑な機構をスケルトンでこそ満喫できると言っても過言ではないだろう。この時計に似合うオープンカーはやはりスーパー・スポーツしかない!?
文=菅原 茂(時計ジャーナリスト)/前田清輝(ENGINE編集部シニア・エディター)
(ENGINE2020年11月号)
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