2020.11.28

LIFESTYLE

コロナ禍の中で開かれた京都国際写真祭 重たいけれど、大切なこと

メイン会場となった京都府庁旧本館内の旧議場に並べられたオマー・ヴィクター・ディオプの「Diaspora」シリーズ。世界で活躍したアフリカ人を再現したセルフポートレイト作品だ。

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4月の予定がコロナ禍で延期となっていた京都国際写真祭が、このたび無事に開催にこぎ着けたことを、まずは大いに喜びたい。展示数が減ったとはいえ、十二分に見応えのある、素晴らしい写真家による力のこもった作品が集められていた。「VISION」というテーマはコロナ禍が起きる前に決められたものだったはずだが、今となってみれば、現在の状況を見事に反映したもののように思える。先行きに暗雲が立ち込める今こそ、「見る力」「見通す力」が何よりも必要とされているからだ。正直言って、今回の展示は見ていてかなりズシリと重たいものを投げかけてくる作品が多かった。


嶋臺ギャラリーで展示された片山真理の新作《in the water》シリーズは、片山が取り組んできた身体を通じて自らを表象する試みと、自らを自然と重ね合わせる試みを融合させたものだという。
アトリエみつしまに展示されたパリ盲学校の子供たちを撮り続けたマリー・リエスの数々の写真作品は、点字さながらに触るフォーマットへと変換されたエンボス写真とともに展示されていた。

先天性の病気により両脚を切断した自らの身体を、独自の美しい「セルフポートレイト」として表現する片山真理の世界。パリ盲学校の子供たちを撮り続けたマリー・リエスの写真と、それを触れる写真に変換した作品の並列展示。そうした作品を見ながら、いま私たちに必要なのは、見えるものと同時に、見えないものを見る力なのだ、と、私は深く考えさせられたのだった。


建仁寺両足院に展示された外山亮介の作品は、撮影時の光をガラス上に定着させるアンブロタイプという古い技法で工芸職人たちを撮ったものだった。
レンズが付けられた庭の茶室内で、逆さまの風景が投影されるのを見て古典的なカメラを体験。

文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=(C)Takeshi Asano-KYOTOGRAPHIE 2020


(ENGINE2020年12月号)


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文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=(C)Takeshi Asano-KYOTOGRAPHIE 2020

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