メルセデスSUV群の頂点に立つGLSが3代目にフルモデルチェンジ、その作りと走りは最上級SUVに相応しいとても上質なものだった。
メルセデスのSUVであることを表す「GL」と車格を暗示する「S」を組み合わせた「GLS」は、ご想像のとおり、彼らの最新世代SUVの頂点に立つクルマだ。まあ、メルセデスSUVにはこれ以外にカリスマ的なGクラスという存在もあり、価格もほぼ同等である。ただ、ボディ・サイズはGLSのほうが圧倒的に大きく、乗車定員もGLSが3列7人、Gクラスが2列5人。やはり、現在のヒエラルキーではGLSがメルセデスSUVの頂点といっていい。
先代同様に北米アラバマ州で生産される新型GLSだが、基本骨格からすべてが新しい。その骨格とはセダン系と異なるSUV専用設計のMHA(モジュラー・ハイ・アーキテクチャー)ストラクチャーと呼ばれるもので、それは最新のGLEやGLEクーペと共用される。前席まわりのインテリア・デザインもGLEと基本的に共通なのだが、GLEとGLSの関係はセダン(のEクラスやSクラス)とは異なり、GLEがGLSより明確に格下というわけではない。GLE、GLEクーペ、GLSという3台は価格もあまり差はなく、その関係は縦のヒエラルキーというより、ボディの形式やサイズ、乗車定員による横のバリエーションに近い。
実際、レザーをすみずみまで丹念にあしらったGLSのインテリアは「これ以上、なにが必要?」というくらいに上質である。そして、巨大でスクエアなスタイルと最新骨格設計のおかげで、室内は広大だ。3列シートSUVは世界に少なからず存在するが、GLSほど健康的に座れて快適なサード・シートを持つSUVはめずらしい。しかも、最後列の乗員にもシート・ヒーターやスマホ用のUSB電源の用意もある。たとえば、某国産ハイエンド・ミニバンにお乗りで「次に買うクルマがない」とお悩みの向きなどは、今後「いつかはGLS」と憧れることをお勧めする。
MHAストラクチャーのなかでも最長ホイールベース、かつ最重量級のGLSは、その乗り心地も滑るように快適。そしてすこぶる静かでもある。今回試乗した箱根の急坂でも、2.9ℓの直列6気筒ディーゼルが遠くで軽めにハミングしたまま粛々とのぼっていく。電子制御のエアサスと可変ダンパーによるフットワークも優秀で、少しばかり意地悪な運転をしたところで、正確なステアリングと安定したフラット姿勢はまるで破綻しそうにない。これはまさにクルーザーだ。しかも、自動クルーズ機能や車線維持装置も超強力なものがついている。これがガレージにあったら、毎日のように「Go To」したくなるだろう。
文=佐野弘宗 写真=望月浩彦
(ENGINE2020年12月号)
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