2021.01.17

LIFESTYLE

実験精神に溢れ、新しい。2021年 グラミー賞で注目すべきはこの3組!

2019年デビューのブラック・ピューマズ。2020年のグラミー賞では最優秀新人賞にノミネートされた。

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2021年3月14日にLAで開催される第63回グラミー賞授賞式。ビヨンセが最多の9部門、次いでテイラー・スウィフトとデュア・リパが6部門にノミネートされるなど、前回に続いて「女性アーティスト強し」の感が強く、なかでも「最優秀ロックパフォーマンス賞」は候補の6組全てが女性。主要部門を見ても最優秀レコード賞や新人賞の大半が女性だ。ただし要の「最優秀アルバム賞」はそうではなく、男女比は半々。ノミネートされているのはジェネイ・アイコ、ブラック・ピューマズ、コールドプレイ、ジェイコブ・コリアー、ハイム、デュア・リパ、ポスト・マローン、テイラー・スウィフトの8作品で、ジャンルも多様である。本命は全米1位に輝いて批評家からも絶賛されたテイラー・スウィフトの『フォークロア』だが、ここには日本での知名度が多少低くとも、実験精神に溢れ、新しい感触の音楽をやっているアーティストの作品が入っていることにも注目したい。


2013年頃にブレイクし、人気ラッパーとの共演で注目度をあげてきたジェネイ・アイコ。『チロンボ』はハワイ録音のヒーリング・ソウル作品。(ユニバーサル)

ジェネイ・アイコはケンドリック・ラマーら大物のフィーチャリングで注目されたR&B歌手。官能的だったり内省的だったりの歌詞を柔らかく歌うひとで、パワフルに歌い上げるビヨンセとは真逆のスタイルだ。対象作『チロンボ』はハワイで録音され、自然のなかで聴いても癒されそうな聴き心地のいい作品になっている。またジェイコブ・コリアーは、クインシー・ジョーンズの目にとまって2016年にデビューした26歳のマルチミュージシャン。アカペラと楽器の多重演奏で魅了し、対象作『ジェシーVol.3』も作曲・編曲・演奏までの全てを自宅で行なった。色彩豊かで、グルーヴに満ちた作品だ。


ロンドン生まれの若き天才。デビュー翌年に早くもグラミーで2部門を獲得。『ジェシーVol.3』は実験精神と遊び心が爆発した壮大なポップ作。(ユニバーサル)

それからもう一組。日本では無名のユニットが選ばれている。2019年にデビューしたソウル・デュオのブラック・ピューマズだ。実は彼ら、前回のグラミーでも最優秀新人賞にノミネートされていたのだが、今回は「最優秀アルバム」「最優秀レコード」の超主要2部門を含む3部門に選ばれていたので驚いてしまった。よほど選考者たちに気に入られているのだろう。そんな彼らの音楽性はソウルとブルーズを基調とし、哀愁溢れるメロディを軸にしたもの。古風と言えば古風だが、今回対象となったデビュー作のデラックス・エディションでは、トレイシー・チャップマンの名曲「ファスト・カー」をよりフォーキーにカヴァーしたり、ビートルズ「エリナー・リグビー」をヘヴィなサイケロックにして歌うなど、一筋縄じゃいかないところを示している。エリック・バートンという歌手の歌もダークで渋めだが、聴くほどに沁みてくるものだ。


果たして賞は誰の手に?


主要の「最優秀アルバム賞」「最優秀レコード賞」を含む3部門にノミネートされたブラック・ピューマズは、複数のプロジェクトを手掛けてきたギタリスト/プロデューサーのエイドリアン・ケサダが、オーディションで選んだ新進歌手のエリック・バートンと始めた米テキサスのデュオ。古風なソウルのよさを残しながらモダナイズした2019年のデビュー盤は、メディアで絶賛された。そのデビュー盤に11曲を追加した『ブラック・ピューマズ+11(デラックス・エディション)』(ビッグ・ナッシング)を聴けば、彼らが歌声と音の表現の幅を急激に広げていることがよくわかる。渋くて映画的なレトロソウル作。

文=内本順一(音楽ライター)


(ENGINE2021年2・3月合併号)


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