電動化ではライバルに遅れを取っていたPSAグループだが、ここへきて本腰が入り、矢継ぎ早に電動化モデルを投入するという。DS3・Eテンスもその1台。DSの魅力を高める、いいクルマだった。
2019年の晩秋にパリで試乗したDS3の電気自動車、Eテンスにようやく日本で乗ることができた。ちょうど1年前のことだ。まさか、コロナによって、世界がここまでかき回されるなんて、あのときは夢にも思わなかった。クリスマスの足音が聞こえはじめた活気に溢れるパリの街で過ごしたひと時が遠い昔のようだ……。
異国の地で初めて乗ったEテンスは静かで走り味がスムーズで、ラグジュアリーなDSのキャラクターにピッタリなクルマと思ったが、日本の道でもその印象は変わらなかった。ガソリン・モデルと比べて静かな走行音や滑らかで心地よい加速感もさることながら、特筆すべきは乗り心地。とくに路面状況の良いところでは、ドイツ・プレミアム・ブランドのサルーンはおろか、「ひょっとしてベントレーやロールス・ロイスにも負けてないんじゃない?」というくらい滑らか。
道路の修復跡のような大きめの段差では、ガソリン・モデルより300kg重くなった車重を支えるために脚が固められているためか、「ちょっと硬いな」と感じることもあるが、市街地、高速道路、ワインディング路など、どのような状況下でも小型SUVのなかではトップ・クラスの乗り心地の良さを備えている。
そう聞くと、大きな横Gが掛かるようなワインディング路は苦手なんじゃないのと思うかもしれない。しかし、クルマの低い位置に重い電池を置く低重心化のおかげで、ハンドリングはスポーツSUVに勝るとも劣らぬほど軽快。キビキビとしたスポーティなハンドリングを見せる。
モーターはボンネット下に1つ。これで前輪のみを駆動する。136ps /260Nmの出力はガソリン・モデルの1.2リッター直3ターボとほぼ同値。ところが、力強さはEテンスの方が上。最大トルクは30NmほどEテンスが大きいだけだが、発生回転域が300-3674rpmとほぼモーターが回り始めるくらいのごく低速域から中回転域まで幅広い。これが功を奏している。加速の滑らかさでもEテンスがガソリンを凌駕する。
気になる航続距離は、50kWhのリチウム・イオン電池によりカタログでは最長398kmを謳う。しかし、試乗の結果から類推すると実質的には250km前後。ギリギリまでは使えないことを考えると200kmがひとつの目安になるだろう。
ガソリンより108万円高い価格、決して長くない航続距離など、選ぶにはそれなりに敷居は高い。しかし、DSの世界観に電気は似合っている。というか、DSの価値を間違いなく高めている。極上なDS3が欲しい人にとっては、Eテンスはベストな買い物だと思う。
文=新井一樹(ENGINE編集部) 写真=小林俊樹
(ENGINE2021年2・3月合併号)
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