ポルシェは2021年2月16日(現地時間)、現行モデルの992型911をベースとする新型「GT3」を発表した。1999年に誕生した996型911ベースの初代から数えて、これでGT3は第4世代へと進化を遂げたことになる。
ちなみに新型GT3に掲げられたキャッチフレーズは、「これまで以上にモータースポーツへと近づくこと」。その証明ともいうべき、ニュルブルクリンクのノルドシュライフェでのラップタイムは6分59秒927。これは先代GT3より17秒以上速いタイムに相当する。
新型GT3にはもちろん、さまざまな新技術が導入されている。まず外観からもひと目でその進化が想像できるのは、空力効率のさらなる向上で、4段階にアジャストが可能なスワン・ネックのリア・ウイングとデフューザーを組み合わせたリア・セクションによるエアロダイナミクスは、デビュー以来モータースポーツの世界で大きな成功を収めている911RSRに由来する。参考までに実際のダウンフォースは、先代GT3の4倍にも達する。
リアに搭載されるエンジンは、3996ccの水平対向6気筒自然吸気。最高出力&最大トルクは510ps&470Nmという数字で、これは先代の同排気量エンジンと比較して10ps&10Nmの強化を果たした計算になる。レブリミットは9000rpmと高回転型で、インテーク・システムには6バレルのスロットル・バルブが備えられるなど、こちらもモータースポーツとの関連性は大きい。スポーツ・エグゾースト・システムも同様に、以前のGT3に装着されていたものより軽量に設計されている。ガソリン・パティキュレートフィルターを2個も装備していながらだ。
組み合わせられるミッションは6段MTとデュアルクラッチ式7段自動MTのPDKからの選択が可能だ。動力の供給を中断することなく、1ミリ秒以内でのシフトチェンジを可能とする後者は、加速性能を大幅に向上させ、0-100km/h加速を3.4秒で(6段MT仕様は3.9秒)、0-200km/h加速を10.8秒で(同11.9秒)で走り切る。最高速はPDKモデルが318km/h、MTモデルは320km/hと発表されている。
一方、このパワーを受け止めるシャシーでは、フロントにこちらも911RSR譲りのダブルウイッシュボーン・フロントアクスルを、ロードモデルとして初採用したのが大きな話題。さらにLSA(軽量・安定・俊敏)コンセプトに基づいた5アーム式のリア・アクスルにはボール・ジョイントを追加。走行速度に応じて同位相、逆位相ともに2度を操舵する後輪操舵システムも標準装備となる。
ブレーキもより強化され、フロントのディスクは直径が380mmから408mmにまで拡大され、かつ重量は17%軽量化された。タイヤはフロントが255/35ZR20、リアが315/30ZR21の前後異径サイズ。通常の高性能スポーツ・タイヤに加えて、オンロード使用が認証されたサーキット・タイヤもオプションとして設定されることになった。
そして新型GT3にとってもうひとつの大きな課題は、さらなる軽量化にあった。ボンネットとリア・ウイング、スポイラーなどには炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が採用され、カスタマーのリクエストによっては、ルーフもCFRP製とすることができる。車重は乾燥重量で6段MT仕様が1418kg。ボディ・サイズが全長×全幅×全高で4573×1852×1279mmであることを考えれば、その軽量性はさらに際立ったものになるといえるだろう。
まさに劇的な進化を遂げた新型911GT3。冒頭で触れたノルドシュライフェでのラップタイムは、初代GT3が記録したそれよりも1分以上速い数字でもある。20年という時間を費やした結果の1分は、世界のポルシェ・ファンをさらなる興奮と感動へと導くに違いない。
文=山崎元裕
(ENGINEWEBオリジナル)
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