2017年秋にデビューしたレクサスのフラッグシップ・モデル、5代目LSが3年目のフェイスリフトを受けた。その走りはどう変わったのか。富士で開かれた試乗会から報告する。
フェイスリフトといっても、見た目はさほど変わっていない。ヘッドライトの形状が少し変更されたり、モールが黒くなったりした程度だ。ところが、中身については、走り出した途端に、すぐに“オッ”と声を上げてしまうくらいに変わっていた。もちろん、いい方に、だ。
2017年に5代目LSが登場した時、私はとても期待して試乗会に赴いた。というのも、その直前に出たLCがラグジュアリーなスポーツ・クーペとして焦点がバチッと絞れた素晴らしい出来映えのクルマだったからだ。それと同じプラットフォームを使うLSがどんな乗り味のサルーンに仕立てられているのか、興味津々だった。ところが乗ってみると、残念ながらLCのようなものではなかった。ドライバーズ・カーとしての走りを追求しすぎたために、逆に乗り心地が悪くなったのかなとも思ったし、いや、そうはいってもドライバーズ・カーとしてもやり切れていない、とも感じた。つまり、どんなクルマをつくりたいのか、焦点が絞れていない印象を受けたのだ。
その後、レクサスは“オールウェイズ・オン”の方針を打ち出し、年次改良ですぐに修正を開始した。さらに“原点回帰”のスローガンを掲げて、1989年の初代LSが持っていた“乗り心地”と“静粛性”こそが自分たちの原点であると見定め、そこに焦点を合わせた大幅改良に取り組んだ結果、完成したのがこの新型LSということになる。
乗ってすぐにわかるのは、見違えるほど乗り心地が良くなったことだ。エア・サスペンションの足がしっかりとストロークして路面からの外乱をうまく吸収していて、無粋な振動が伝わってくることはない。Fスポーツはそれでもまだやや硬めのセッティングになっていたが、エグゼクティブの当たりはソフトだけれど、常にしっかりとした剛性感のある乗り味は、ラグジュアリー・サルーンとして一級品と言っていいものだ。
静粛性についても、単に遮音材を増やしたというようなものではなく、たとえば、ハイブリッド・モデルではエンジンをモーターのアシストも含めてどういう回転数でどう使わせるかというところまで考えて、その結果、常用域での静けさを実現するといった手の込んだことまでやっている。その出来映えは、これまたラグジュアリー・サルーンとして一級品のレベルに達している。
実は、LS500に搭載される3.5リッターV6ツインターボ・ユニットに至っては、スペックはなにも変わっていないのに、燃焼室やコンロッドの形状の最適化からクランクシャフトのピン径の拡大まで、あらゆるところに手を入れて、出力特性、燃費性能、静粛性の向上を図っているという。新開発したエンジンの中身を3年で総とっかえしているようなもので、相当な覚悟があったはずだ。そしてもちろん、その成果は走らせてみれば明らかで、これまでの高速燃焼ゆえのキンキンした耳障りな音がなくなったばかりか、回すとスポーティな気持ちのいい音が聞こえてくるようになったのだから、ラグジュアリー・サルーンとしても、ドライバーズ・カーとしても素晴らしいエンジンを得たと言っていいだろう。
一方、走りに関する装備品を見れば、前輪の切れ角を制御する可変ギア比のアクティブ・ステアリングあり、後輪操舵あり、ロール姿勢を制御するアクティブ・スタビライザーあり、といった具合で、電子制御がてんこ盛りである。そこでいささか気になったのは、とりわけFスポーツを走らせた時、その電子制御が介入している感じが結構伝わってきたことだ。ここまでして速く走らせるより、フラッグシップ・サルーンに相応しいスポーティな走りがほかにあるのではないか。その意味では今回、むしろエグゼクティブの伸びやかな乗り味の方に、よりスポーティな気持ち良さがあると感じたのだ。
この新型LSの出来が素晴らしいのは間違いない。だからこそ、さらに焦点を絞って、レクサスならではの独自のラグジュアリー・サルーンのあり方を示してもらいたいのである。それは何もかもをてんこ盛りにするのではなく、本当に必要なものを磨いていくことによって得られるのではないかと、私は思う。
文=村上 政(ENGINE編集部) 写真=柏田芳敬
■レクサスLS500 エグゼクティブ(Fスポーツ)
駆動方式 エンジン・フロント縦置き後輪駆動
全長×全幅×全高 5235×1900×1450mm
ホイールベース 312mm
トレッド(前) 1630mm
トレッド(後) 1635(1615)mm
車両重量 2230(2200)kg
エンジン形式 直噴+ポート噴射V6DOHCツインターボ
排気量 3444cc
最高出力 422ps/6000rpm
最大トルク 600Nm/1600-4800rpm
トランスミッション 10段AT
サスペンション(前後) マルチリンク/エアスプリング
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ (前)245/50R19(245/45RF20)、(後)245/50R19(275/40RF20)
車両本体価格(税込み) 1529(1234)万円
(ENGINE2021年4月号)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
advertisement
PR | 2024.11.21
LIFESTYLE
冬のオープンエアのお供にするなら、小ぶりショルダー! エティアムか…
2024.11.21
CARS
日本市場のためだけに4台が特別に製作されたマセラティMC20チェロ…
PR | 2024.11.06
WATCHES
移ろいゆく時の美しさがここにある! ザ・シチズン の新作は、土佐和…
2024.10.25
LIFESTYLE
LANCIA DELTA HF INTEGRALE × ONITS…
2024.11.19
WATCHES
エンジン時計委員、菅原茂のイチオシ 世界限定1200本! グランド…
2024.11.01
CARS
これは間違いなく史上最速のウルスだ! プラグイン・ハイブリッドのウ…
advertisement
2024.11.16
こんなの、もう出てこない トヨタ・ランドクルーザー70とマツダ2 自動車評論家の渡辺敏史が推すのは日本市場ならではの、ディーゼル搭載実用車だ!
2024.11.15
自動車評論家の国沢光宏が買ったアガリのクルマ! 内燃エンジンのスポーツカーと泥んこOKの軽自動車、これは最高の組み合わせです!
2024.11.15
GR86の2倍以上の高出力 BMW M2が一部改良 3.0リッター直6ツインターボの出力をさらにアップ
2024.11.08
【後篇】2024年総まとめ! 自動車評論家44人が選んだ「いま身銭買いしたいクルマのランキング!」 クルマ好きの人たちの深層心理がわかった!!
2024.11.12
BMW4シリーズ・グランクーペが初の変更 新しいヘッドライトと装備の充実で商品力を高める