昨年夏のグッドウッド・スピードフェスティバルでデビューしたアストンマーティンの新たなパフォーマンスの頂点となるスポーツカー、ヴァンテージS。日本上陸ホヤホヤの試乗車で、ENGINE総編集長のムラカミが房総半島までひとっ走り!
目の覚めるような辛口スポーツカー
このところ、乗り心地も運転のしやすさも抜群の、ラグジュアリーなスーパースポーツカーが次々と登場する中にあって、久々に目の覚めるような超辛口の硬派スポーツカーが現れた感がある。

アストンマーティンのスポーツカーにおけるパフォーマンスの頂点を担うニューモデル、ヴァンテージS。日本上陸したてのデジタル・バイオレットのド派手なボディ・カラーを纏った試乗車に乗る機会を得て、その古典的ともいうべき豪快な乗り味に、まだこういうのがあったか、と本当にパッと目が開かれるような感覚を味わった。
そもそも、広報担当者が選んだというボディ・カラーがあまりに強烈なので、それだけで思わず仰け反ってしまいそうになったが、よく見れば、そもそものヴァンテージが押し出しの強いデザインを持っていたのであって、そこから「S」への変更点は、決してこれ見よがしなものではない。

ボンネットのエアアウトレットに付加されるブレードやリアデッキリッドのスポイラーは、この手の高性能モデルとしてはむしろごく控えめなものだ。「S」の識別点も、フロントフェンダーのタイヤハウス後方に赤い小さなバッジがさりげなく付けられているだけである。
とはいえ、ゴールドのピンストライプが入れられた巨大なフロントリップスポイラーやサイドスカート、リアディフューザーは、最近のハイパフォーマンスカーならではの空力性能を重視したもので、これがパフォーマンスの頂点にあるモデルであることをハッキリと主張している。
これに先のリアデッキスポイラーや新たに追加されたフロントのエアダム、床下の改良を合わせて、325km/hの最高速度時に111kgのダウンフォースを生み出すのだという。

少し斜め上方へ開くアストン流のドアを開けると、アルカンターラとレザー、それにカーボンを組み合わせた豪華な内装が目に飛び込んできた。
とはいえ、オプションのカーボン製バケットシートは思いっ切りタイトでクッションもほとんど無い。前後調整は股の間の紐を引いてするが、背と高さの調整は電動だった。

英国車に乗るといつも思うのだが、この国のクルマには「洗練」と「野蛮」が同居している。エレガントなのにワイルド、粗削りなのに繊細、そういう二律背反を楽しめる人にこそ、英国車は向いていると思う。