2021.08.15

LIFESTYLE

建築家が親の家を使って大実験! リビングに巨石のソファーが横たわり、青々と木が繁る、中と外の境界がなくなった驚きの住宅とは!! 

理想の住宅を具現化

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ミニがつなぐ縁もあった。ミニはエンジン、ドアとトランク、給油用と3種類の鍵がある特殊な形式である。とある喫茶店に入ったところ、テーブルの上に見慣れたミニの鍵が置いてあり、何故自分の鍵が……と驚いたところ、鍵の持ち主はなんと地元の若い建築家。古いミニに乗る二人は意気投合し、一時期は事務所をシェアするなどユニットとしての建築活動も行った。

そもそも西口邸は、両親と暮らすために建てられたものである。土地は11年ほど前に手に入れていたが、満足いく設計ができ上るまで7年の歳月がかかった。自分が本当に作りたい建築を模索し、ようやく実現できたのがこの自邸である。なかでも庭は重要な要素だ。若いが才能のある作庭家の西村直樹氏と出会い、西口さんの建築スタイルは完成した。植物が豊かな自邸ゆえ夏の水やりは時間がかかるが、そうした手間も楽しみのひとつ。見た目だけでなく暮らしてもエコな住宅で、庭の中央にある落葉樹が夏の太陽を遮り冬は日差しを取り込むため、たった一台のエアコンで浴室なども含めた家じゅうの冷暖房が賄えるという。

ベッドのある西口さんの寝室は、事務所である内の間3の上の空間(平面図には無い)。個室スペースはミニマムだが、贅沢に共用スペースをとっているうえ視線が抜けているので、面積以上に広さを感じる。家の北側の作りは、南側と大きく異なる。

3年前にこの家が完成し、西口さんの仕事場は自宅となった。2階の事務所スペースだけでなく、家の色々な場所で仕事ができるのも気分転換になるそうだ。さらに大きな変化が。この家が権威ある専門誌の表紙に選ばれ、西口さんも地方のいち建築家から注目の若手建築家の一人となったのだ。家族のために独創的な家を建て、それを契機に飛躍した建築家は歴史上数多い。西口邸の場合も、ご両親は希望などを口にせず、全て息子さんに任せて応援している。もっともお母様は「本当はオープン・シェルフの食器類も、気の利いたものに変えられればよかったんですが」と少し残念そうだ。筆者は「そんなことありませんよ。これだけ素晴らしい家が完成したのですから十分でしょう」と返したが、「これほどの建築を設計した息子さんは誇りですね」と、その時言えなかったのを今も後悔している。

文=ジョー スズキ 写真=山下亮一




建築家:西口賢。1975年、愛知県岡崎市生まれ。近畿大学卒業後、長瀬信博の建築事務所を経て独立。今回紹介した自邸「大地の家」で、全国区の建築家に。作庭を前面に押し出した、荒々しい自然とち密な設計の共存が特徴で、腕の良い地元の工務店がそれを支えている。これまで手掛けた建築は全て愛知県内。写真は、自邸完成前に手掛けた、コンクリートを使った洞窟のような原始的な住宅。

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(ENGINE2021年7月号)

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