2023.01.28

LIFESTYLE

部屋から部屋への移動は橋で? 「凄い家をつくりたい!」という施主の要望に応えた建築家の非現実感いっぱいのプランとは

2013年、竣工時の写真。左右の棟の間は12m!

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雑誌『エンジン』の大人気連載企画「マイカー&マイハウス クルマと暮らす理想の住まいを求めて」。11年前に東京から故郷・愛知県に戻ってきたYさん一家。若き建築家に「凄い家をつくりたい」とリクエストしたことで生まれたのは、2棟の建物を橋で結ぶプランだった。デザイン・プロデューサーのジョースズキ氏がリポートする。

海外から見に来る人も


木々の向こうに建つ、お伽話に出てきそうな白くて可愛いシンプルな家。そこに向かって橋が伸びている。右頁の写真では、木々に隠れて2本しか見えないが、上の竣工写真にあるように橋の数は3本。長さはなんと12mもある。しかも一番上の橋は、家の3階の扉と繋がっているので結構な高さだ。そのうえ橋の反対側にあるのは、四面がガラス張りの建物。童話の中かテーマパークにしか存在しえない、非現実感溢れる家である。



「家が完成した頃は、海外からも見学に来た建築好きの若者がいました」

と、ここで暮らすYさん(48歳)夫妻が話すのも頷ける。

Y邸があるのは名古屋市の住宅街。美しく区画整理されたエリアで、南は交通量の少ない道路に接し、東は5階建てのビル、西は3階建ての住宅に挟まれた、間口7m、奥行き21mの敷地だ。現在、名古屋で父親の仕事を継いでいるYさん。かつては東京でクリエイティブな仕事に就いていたが、11年前に名古屋に戻ってきた。

最初は東京時代のようにマンション住まいだったが、お嬢さんが小学校に上がる際に一軒家を建てることに。前職では、才能ある多くの若者にチャンスを与えてきたYさん。家作りにあたって、地元愛知を拠点とする何人かの若い建築家に声をかけていた。ところが、東日本大震災が起きる。家族のため安全性を優先させ、ハウスメーカーと契約する直前まで話を進めるが……。最後にどうしてもと奥さんを説得し、気になっていた建築家の、栗原健太郎さんたちにプランを求めたのである。

栗原さんとパートナーの岩月美穂さんの2人が主宰するスタジオ・ヴェロシティは、愛知県岡崎市を拠点とする建築事務所。詩的で非現実的な印象を与えるデザインでありながら、機能や環境についてもしっかりと考えたうえで、独自の世界観を作り上げているのが特徴だ。今では専門誌の表紙を飾ることも多いが、当時は僅かな住宅と数軒の美容院を手掛けていた程度。それでも栗原さんの才能に感じるところがあり、この若者に声を掛けた。



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