2021.08.28

LIFESTYLE

コロナ禍で市場が拡大! こんなに美味しくなったノンアルコール飲料の現在

下戸の人、あるいは運転をする場合でも飲めるアルコール度数0.1%未満のドリンクが注目されている。単なる代替品ではない、“酔わない酒”を選ぶ理由とは。

2024年までにさらに消費は増加

酒を飲めない者を「下戸」と称するのは、律令制における課税単位が由来と言われている。当時は大戸、上戸、中戸、下戸と分けられ、それぞれに合わせて婚礼時にあてがわれる酒の量が段階的に決められていたという。その量が最も少ないことから、下戸が飲めないことの象徴となった。逆に上戸は笑い上戸、泣き上戸という酔い癖を表す言葉に痕跡を残す。酒に弱い体質の人が多いにもかかわらず、こうした上下のヒエラルキーが日本社会を縛り付けてきた側面は否定できない。無理強いによる不快さだけでなく、時には生死に関わる重大事も少なくなかった。

だが、世界的に流れは変わりつつある。コロナ禍の2020年はアルコール飲料の消費が減少したが、ノンアルコールおよび低アルコールの市場は前年比4.9%拡大した。この消費はさらに24年までに31%伸長すると言われている。



シャンパーニュのような味わいと香りに

日本も例外ではない。ビールだけでなく、最近ではワイン、日本酒テイストのノンアル飲料が発売。たとえばエノテカの新商品「ジョエア・オーガニック・スパークリング・シャルドネ」は、アルコール度数が0.1%未満。ノンアルコールの法的基準である1%の十分の一以下だが、フランスのメーカーとの共同開発で、オーガニックのシャルドネ種を使ってシャンパーニュらしい味わいや香りに限りなく近づけた。日本酒では、月桂冠の「スペシャルフリー」が人気。アルコール度数0にもかかわらず、大吟醸の味わいを彷彿とさせる滋味で評価を高めている。



ノンアルコールバーにも注目したい。「0%ノンアルコールエクスペリエンス」は「宇宙で最初にできたバー」をコンセプトに昨年、六本木にオープン。酒は苦手でも、バーの雰囲気は味わいたいという人にモクテル(酒を使わないカクテル)を供している。ソフトドリンクとは一線を画す見た目と味わいで、下戸のみならず、車の運転などで飲めない人にも好評だ。

東京・六本木に昨年オープンした「0%ノンアルコールエクスペリエンス」。https://www.0pct.tokyo/

コロナ禍で宴会は激減し、酒を飲む時間はよりパーソナルな体験になりつつある。健康志向の影響も大きい。今はあらためて「飲むこと」の意義を見直す好機だろう。ノンアルコールの味の進化と深化は、上戸も下戸も等しく楽しむためのひとつの提案。それはきっと、新しい生活のスタイルとなる可能性を秘めている。


文=酒向充英 写真=松崎浩之

(ENGINE2021年9・10月号)

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