2021.09.30

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ルーマニアを激震させた医療汚職事件! 傑作ドキュメンタリー映画があぶり出した国家の闇

(C)Alexander Nanau Production, HBO Europe, Samsa Film 2019

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ルーマニアを激震させた医療汚職事件。その真相を暴くべく、勇気あるジャーナリストたちが立ち上がった。彼らの闘いと、そして浮き彫りになる国家の闇を描いた、力強いドキュメンタリー映画が公開される。

助かったはずの命が……

2015年10月30日、ルーマニアの首都ブカレストのクラブ”コレクティブ”で大規模な火災が発生した。当初の死者は27名で、多くの負傷者が病院に運び込まれた。だが一命を取り留めたはずの若者たちがその後、病院で次々に死亡。死者の数は一気に64名に膨れあがった。一体、何が起きたのか? 


まるでジョン・グリシャムの陰謀小説の筋書きのようだが、これはドキュメンタリー映画『コレクティブ 国家の嘘』が捉えた実話。この不幸な火災が、製薬会社と病院経営者、そして政府をも巻き込んだ巨大医療汚職事件へと発展したのである。



映画は大きく2つのパートに分けられる。前半、カメラが密着したのは、被害者の死を不審に思い、真相究明に乗り出したスポーツ紙記者たちの姿。そして後半は、腐敗したこの国の医療システムを改革しようとする、新任の保健省大臣の奮闘ぶりである。


一切のインタビューやナレーションを排し、ひたすら人物の行動を追いかけることから生まれる臨場感。そこで我々は、命よりも利益を優先させる国家の闇を目撃する。背筋がゾッとする内容だが、一方で腐敗した権力に敢然と立ち向かうジャーナリストの姿に、希望の光を見る思いがする。今年屈指のパワフルなドキュメンタリー映画である。



『コレクティブ  国家の嘘」
監督は数多くのドキュメンタリー映画で高い評価を受けるアレクサンダー・ナナウ。世界各国の映画祭で32の賞を獲得した本作は、米アカデミー賞でも国際長編映画賞と長編ドキュメンタリー賞の2部門でノミネートされる快挙を果たした。ルーマニア映画がアカデミー賞で候補入りしたのもこれが初めて。なお本作に登場するガゼタ・スポルトゥリロル紙のカタリン・トロントンは、同国を代表する調査報道記者。現在はメディア界における腐敗の実態を追跡しているという。109分。配給:トランスフォーマー。10/2(土)よりシアター・イメージフォーラム、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー



文=永野正雄(ENGINE編集部)

(ENGINE2021年11月号)

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