2021.12.18

LIFESTYLE

『JINS』の社長が私財を投じた、地方都市を再生するアートなホテルに泊まった!

群馬県・前橋の中心街に出現したホテルが盛況だ。アイウエアブランド『JINS』の社長が手掛けた「白井屋ホテル」の魅力とは?

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朝から1時間待ちの行列が……

11月3日の早朝、前橋の白井屋ホテル前に1時間待ちの行列ができていた。東京の人気パン職人がプロデュースする「白井屋ザ・ベーカリー」が館内にオープンし、地元客が詰めかけたのだ。シャッター通りが続く街の中心部にあって、この一角の賑わいだけがまるで別空間のようだ。

もともと白井屋ホテルは江戸時代から続く名門旅館だったが2008年に廃業。マンションに建て替えられるところを、地元出身の起業家であるアイウエアブランド「JINS」の田中仁社長が個人の財団を介して購入し、2020年12月にオープンした。館内のレストランを監修するのは青山の有名フレンチ『フロリレージュ』の川手寛康氏で、9月には地方初出店の『ブルーボトルコーヒー 白井屋カフェ』も敷地内にオープン。とにかく話題が豊富だが、このホテルの一番の特徴はアートとデザインである。田中氏の人脈により集まった錚々たるクリエーターが、ここ白井屋ホテルに携わっているのだ。



儲けは考えていない

2棟からなるホテル全体の設計は藤本壮介によるものだが、フロントがある4層吹き抜けの空間には、世界的に有名なアルゼンチンのアーティスト、レアンドロ・エルリッヒによる光る配管のような作品が宙空を走っている。そのほかデジタルカウンターを使った宮島達男のインスタレーションから、杉本博司の写真作品まで、館内の至るところで貴重なアート作品に出会うことができる。

また25部屋しかない客室には、それぞれに異なるアーティストの作品が飾られているが、スペシャル・ルームと呼ばれる4部屋の内装は、イギリスを代表するプロダクト・デザイナー、ジャスパー・モリソンら4人が担当。11月には杉本博司と建築家の榊田倫之が主宰する新素材研究所が設計した週末だけのバー「白井屋ザ・バー真茶亭」もオープンした。

ただこちらのホテル、最初からアートやデザインをコンセプトに作り始めたわけではなく、田中氏のもとに集まった人々が“面白いことができそう”と関心を示した結果、現在の形になったという。モリソンほか幾人かは無償で協力したそうだが、このホテルに私財を投じた田中氏も儲けは考えていないそうだ。彼の関心事はあくまで街の再生。世界に通用する魅力的なランドマークをつくることで、故郷・前橋の活性化に貢献していきたいという。その挑戦は有望なスタートを切ったようだ。



文=永野正雄(ENGINE編集部)

(ENGINE2022年1月号)

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