2022.07.20

CARS

PR

あなたはどっち派? 「S」と「GT」、2つの個性で魅力をさらに高めた新型アルピーヌA110でサーキットを攻める

2017年のデビュー以来、アルミ製モノコックによる軽い車両重量と速さや刺激だけなく快適性も兼ね備えた秀逸なシャシー、初代のイメージを盛り込みつつ現代風にアレンジしたデザインなどで人気を博すアルピーヌA110。2021年に行われたマイナーチェンジでは、エンジンの出力を高めたほか、グレード体系を変更するなどさらなる進化を遂げてきた。

そんな新型A110に、レーシング・ドライバーとしても、モータージャーナリストとしても活躍している佐藤久実さんが富士スピードウェイのショート・コースで試乗。今回の取材以前に公道で乗った時の印象と共に、新しくなったアルピーヌA110の魅力について語ってもらった。

取材車のA110Sは30台限定で販売された「A110Sアセンション」。

「S」と「GT」を乗り比べる

富士スピードウェイのショート・コースで、マイナ―チェンジで進化した新しいアルピーヌA110の「S」と「GT」を乗り比べた。両車は同じ最高出力300psを発生する高出力版の1.8リッター直4ターボ・エンジンを搭載するが、シャシーのチューニングが異なる。

なお、A110Sは「アセンション」と呼ばれる限定車で、前後にスポイラーを装着し、タイヤはミシュラン・パイロットカップ2を履き、インテリアのマテリアルがスペシャルになり、6点シートベルト用のハーネス・アダプターが装備される。ただし、スポイラーは限定車じゃなくてもオプションで選べるし、タイヤも交換は可能だ。つまり、直接パフォーマンスに影響する装備は通常「S」でも同等にアップグレードすることができる。

アルピーヌA110Sアセンション。エンジンの搭載位置やボディ・サイズなど異なる点は多いが、初代A110のイメージを見事に再現したエクステリア。

とにかく速い!

まずはA110Sでコースインする。今回のマイナーチェンジでパワーもトルクも向上し、最高出力は300ps、最大トルクは340Nmとなった。しかし、シャシーはそれを難なく受け止め、なお余裕がある印象だ。さらにハイグリップ・タイヤは路面をガッツリと掴んでいる感じで、高いグリップ力がステアリングの手応えを介して確認できる。グッとアクセレレーターを踏み込んでもきっちりとトラクションを伝える。

そして何より速い! ボディの軽さのおかげもあって、あっという間にスピードが上がっていく。約330mのストレートでも4速まで入り、スピードメーターの針は見届けられたところで145km/hを指していた。ただし、パワー・フィールは爆発力のある暴力的なものではない。軽やかな加速が気持ち良い。

そして1コーナーでの最高速からのブレーキでは、ペダルタッチに高い剛性感があり、踏んだ瞬間にしっかり制動力が立ち上がるので安心感がある。ペダルを戻しながらのコントロール性にも不満はない。車両重量が軽いのでブレーキへの負担も少なく、高いストッピング・パワーを見せる。さらにターンインでの回頭性も良いので、コーナー進入時にブレーキを残すといったコントロールは必要なく、早いタイミングでブレーキをリリースできる。

アルピーヌA110Sアセンション。

醍醐味はハンドリング

1コーナーで左にターンするとすぐに左、右、そして左のキツイ上りとコーナーが連続する。しかし、こんなシーンこそA110Sの得意とするところだ。加減速も秀逸だが、このクルマの醍醐味は何といってもハンドリングの楽しさにある。

コーナー入り口でステアリングを切り込むとスッとノーズが入る。姿勢はほぼフラットなままだ。まるでカートのようなリニア感とダイレクト感でコーナリングをこなしていく。自分の手足のようにクルマが動き、シャープなのに安定していて、しかも速い。なので、運転が上手くなったような気分にさせてくれ、メチャメチャ楽しいのだ。

A110Sにはリクライニング機能を持たないバケットシートが装備されるが、私の体型でもシートバック角度はちょうど良く、しっくりと収まった。サーキットでの高Gでもカラダをしっかりホールドしてくれ、しかもクッションが効いているので座り心地も良い。
アルピーヌA110Sアセンションのインパネにはマイクロファイバーと呼ばれるアルカンターラに似た触り心地の良い表皮が使われている。「S」のステアリングやシートのステッチは「S」のイメージ・カラーであるオレンジ色。

アルピーヌA110Sアセンションはリクライニング機構の備わらないサベルト製のモノコック・バケット・シートを装着。表皮はマイクロファイバーで、背もたれにはアルピーヌのロゴである「A」の文字が刺繍されている。シートベルトがオレンジ色なのもアセンションの特別装備。

軽量ミドシップ・スポーツの真髄を味わえる「S」

最初は様子見でステアリングに備わるドライブ・モードをデフォルトの「ノーマル」モードにする。ノーマルでもハンドリングはゴキゲン。ただし、その一方でESP(姿勢安定制御装置)がかなり積極的に介入してきた。やっぱりミドシップだからサーキットでの限界領域になるとそれなりに挙動がトリッキーなのかなぁと思いつつ、「スポーツ」モードに切り替えるとESPの介入はちょっと弱まる。さらに長押しで「トラック」モードを選択。ちょっとドキドキしながら走ってみたが、突然キバを剥くようなことはなかった。3つのモードは、ノーマルではクルマがかなり安全マージンを持ってドライバーを守ってくれ、スポーツ、トラックではそのマージンが減っていく感じだ。

なお、トラック・モードでもESPの介入は減ったものの完全解除にはならなかった。ドライブ・モードとは別にセンターコンソールにESPのスイッチを備え、それをオフにすると完全解除になるという2段階操作なのだ。これの設定なら「せっかくサーキットを走るのだからトラック・モードにしたいけれど、運転に自信がない」という人でもトラック・モードを楽しめる。

試乗前は「3〜4周もできれば充分インプレッションは取れますよ。」なんて言ってたものの、あまりの楽しさに、時間枠いっぱいまで走り続けてしまった。A110Sは軽量ミドシップ・スポーツの真髄を味わえるモデルだ。

アルピーヌA110Sアセンション。

マイナーチェンジで魅力をさらに増した新型アルピーヌA110の詳しい情報はコチラ

公道での走りに重きを置いた「GT」

続いて、A110GTに乗り換える。Sとの大きな違いはシャシーとタイヤだ。Sが「シャシー・スポール」と呼ばれる公道だけでなくサーキットなどのレース・トラックでのパフォーマンスにも力を入れたサスペンション・セッティングを持つスポーツ・シャシーを採用するのに対し、GTは「アルピーヌ・シャシー」と名付けられたより公道での走りに重きを置いた設定となる。

アルピーヌA110GTのエクステリア。ホイールのデザインとエンブレムがクローム仕立てになるのが「S」との大きな違い。

また、GTのタイヤはミシュラン・パイロットスポーツ4。ちなみに、A110Sも限定車ではないカタログ・モデルは同じパイロットスポーツ4を装着する。ガッツリとサーキット向けのカップ2に対して、パイロットスポーツ4は8割方が一般道の方を向いた時々スポーツ・ドライビングを楽しむ人向けのタイヤ。両者のグリップ力の差はステアリングの手応えだけでなくクルマの動きからも明らかに体感できるくらいに違うのだ。

A110GTはステアリングを切り込むと緩やかかつ適度な量のロールするため、クルマの向きが変わるまでちょっと待つ必要がある。向きを変えつつ加速していくイメージ。ロールやピッチといった姿勢変化がA110Sに比べると大きく、ヒラヒラと舞うような動きが特徴的だ。全般的に弱アンダーステアの操縦性で、安心してサーキット・ドライブを楽しめる。A110Sのソリッドな動きも楽しいが、クルマの動きを感じながら乗りこなすのがA110GTの楽しみ方だろう。

アルピーヌA110GT。

サーキットで楽しいのは「S」

正直に言うとサーキットでは俄然、A110Sの方が楽しく思える。そりゃそうだ。だって、サーキットのようなレース・トラックでもパフォーマンスを楽しめるように作られたクルマなのだから。そのために、スポーツ・シャシーを備え、スプリングやダンパー、アンチ・ロールバーも強化されている。さらにハイグリップ・タイヤを履き、ダウンフォースも増したとなれば、楽しくないわけがない!

では、A110はSがベスト・リコメンドかというと、そういうわけでもない。A110Sはダンピングが効いていて、路面のうねりや段差でも接地が抜けることもなく、「さすが」と思わせるフットワークを持つ。サーキットだけでなくワインディング路も守備範囲、ただ、街乗りや高速道路での快適性においてはちょっとしんどい一面もある。

アルピーヌA110GTのインパネ。装飾が異なる以外は「S」と変わらない。

「S」と同じサベルト製ながら、「GT」のシートはリクライニング機構が備わるとともに、形状も快適性を重視したものになる。内装色はブラックとブラウンの2色が選べる。

佐藤久実さんが欲しいのは?

一方でA110GTは、ベース・モデルのA110と同じスタンダードなアルピーヌ・シャシーを備えるため、サスペンションがよりしなやかに動き、一般道でも高速道路でも乗り心地が良く、快適性が高い。さらに、シートもバケット形状ながらリクライニング機能を備えるなど、機能性と乗降性、日常使いの快適性もバランスされている。

ちなみに、私はワインディングで両車を試乗した際、悩ましいながらも「自分が買うならA110GTかな」、という結論に至った。見事なキャラわけがされており、もちろん、好み次第だが、「クローズドでミドシップ・スポーツの走りを存分に楽しみたい」ならA110S、「日常を快適にかつスポーティに楽しみたい」ならA110GTをオススメする。いずれにしても、フレンチ・スポーツの世界観にハマることは間違いないだろう。

アルピーヌA110GT。

文=佐藤久実 写真=神村 聖

(ENGINE WEBオリジナル)

前から順に、アルピーヌA110Sアセンション(青)、A110S(オレンジ)、そして後ろ2台がA110GT。

マイナーチェンジで魅力をさらに増した新型アルピーヌA110の詳しい情報はコチラ

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録



RELATED