2023.02.03

LIFESTYLE

まもなく発表! 2023年グラミー賞の見どころはビヨンセ vs アデルの女王対決

ノミネート数では史上最多のビヨンセ

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世界最高峰の音楽の祭典、グラミー賞の授賞式が2月5日に開催される。今年、最大の話題はビヨンセとアデルという2人の超大物の対決だ。

グラミー賞は保守的で的外れ?

2023年2月5日に開催される第65回グラミー賞授賞式。最多ノミネートはビヨンセの9部門。続いてケンドリック・ラマーが8部門。アデルとブランディ・カーライルが7部門。ハリー・スタイルズやメアリー・J・ブライジが6部門に選ばれている。


注目されるのは、共に主要4部門中、新人賞を除く3部門にノミネートされたビヨンセとアデルのどちらに多く賞が輝くか。この歌姫対決に注目が集まるのは2017年のグラミー賞に続いて2度目で、1度目はアデルが主要3部門を含む5冠を達成。最優秀レコードの受賞スピーチで、アデルはビヨンセに「私の夢であり、アイドルであるクイーンベイ(=ビヨンセ)。あなたを心から尊敬しています」と賛辞を送り、さらに最優秀アルバムの受賞スピーチでは「この賞を受け取ることはできません。恐れ多いです。ビヨンセの“レモネード”は偉大でよく考えられた素晴らしい作品です。あなたは私たちの光。あなたが私の黒人の友達を勇気づけてくれています」と涙ながらに語った。

アデルの『25』は確かに傑出していたが、ビヨンセの『レモネード』が最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバムという地味な賞しか与えられなかったことに、グラミー賞はやはり保守的で的外れだと批判も集まった。そんな過去があっての今回であることに加え、対象となったふたりの作品の音楽性とメッセージも全く異なるので、どちらが多く獲るか注目されるのは当然だ。

ドキュメンタリー的なアデルの『30』

アデルの『30』は、出産と離婚、子育てにおいての混乱など自身の内に渦巻く感情を隠さず表現し、それによって過去を乗り越え、新しい自分と出会おうと試みた、彼女自身にとってのセラピーのような作品。弱さと辛さをちゃんと認めて強さと喜びを見つけだすドキュメンタリー的なアルバムだった。



エネルギーに満ち溢れたビヨンセの『ルネッサンス』

そんなプライベートな心象を反映させたアデル作品に対し、ビヨンセの『ルネッサンス』は日常を忘れてとにかく踊り倒すことで失ったものを取り戻し、コロナ禍に抑えていた感情や欲求、自己を解放してポジティブに進むのだという、圧倒的エネルギーに満ち溢れた作品。「心を解き放て」「解放して」と繰り返すハウス全開の先行シングル「ブレイク・マイ・ソウル」のみならず、レゲトン、ディスコ、アフロビーツと様々なダンスサウンドが全編で鳴り響き、ビヨンセは肉体性を取り戻すことの重要性を説きつつ、解放と復興(=ルネッサンス)をメッセージしていた。

内省の共有か、肉体性ありの鼓舞か。そこまで単純ではないにせよ、受賞の行方は改めて様々な価値観についての投げかけをすることになるだろう。



文=内本順一(音楽ライター)

(ENGINE2023年2・3月号)

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