2023.04.28

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「心で感じる世界」 建築家、西口賢氏が語る、アルファ・ロメオ・トナーレと建築の共通点とは?

日本導入記念モデルのアルファ・ロメオ・トナーレ・エディツィオーネ・スペチアーレと建築家の西口賢さん。

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建築家の西口賢さんは、「論理的な思考や小手先の技術から、けして心を震わせる空間は生まれない。本能的、動物的な感覚に突き動かされながら設計」すると語る。これはアルファ・ロメオのデザイン部門であるチェントロ・スティーレブックが謡う「大切なのは感覚であり、情熱である。我々は頭でなく、心で感じる世界に身をおいている」に通じる考え方だ。そんな西口さんが、アルファ・ロメオのニューモデル、トナーレに試乗した。アルファ・ロメオの伝統と、新しい時代への提言が盛り込まれたトナーレ。西口さんにこの意欲作はどのように映ったのか、建築家の視点で語ってもらった。

彫刻的なボディ

トナーレはハイブリッドの、CセグメントのSUVだ。「官能的なエンジン」と評されてきたアルファ・ロメオから、初めてハイブリッド・モデルが登場したのである。これは驚きだ。しかもニューモデルは、SUVのステルヴィオ以来のこと。新しいアルファ・ロメオはどんなクルマなのか、大いに気になるところだ。



まずは日本導入記念モデル、ミザーノブルーのトナーレ・エディツィオーネ・スペチアーレで、西口さんの代表作である、岡崎市の「大地の家」を訪ねた。イタリアのサッカー代表のユニホームがそうであるように、青はイタリアの色である。

「この青はいいですね。光の当たり具合によって青の濃さが違って見えるので、ボディが彫刻的に見えます。シンプルなフォルムのように見えますが、ボンネットに映る景色から随分と複雑な造形なのが分かります。伝統的に、アルファ・ロメオのデザインは本当に美しいですよね。それでいて躍動感があって、疾走する馬を連想させる。トナーレを眺めていると、思わず乗り物の変遷に想いを馳せてしまいますね」

かつて人間は馬に乗って移動していた。それが馬車になり、そして今は自動車に変わった。西口さんは、そうした歴史的なつながりを、直感的にトナーレのデザインから感じ取ったのである。アルファ・ロメオのテスト・コースがあるバロッコは、元はと言えば競馬場だ。かのフェラーリもモデナにあるかつての厩舎をレセプションルームとして使っている。そうしたクルマの歴史をデザインの中に織り込んでくるのは、イタリアの自動車メーカーの文化的な奥深さだろう。トナーレのデザインは、アルファ・ロメオの伝統と新しい時代への提案が盛り込まれたものだ。例えばフロント・マスクの3連のヘッドライトは、アルファ・ロメオSZなど往年の名車に用いられたモチーフの引用である。そしてこのライトと盾のグリルの上部が一直線に並ぶのが、新世代アルファ・ロメオのデザインだ。この特徴的な3連ライトはボンネットの先端より一段奥まった位置にあり、フロント・マスクは彫刻的な印象を受ける。

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「この手法は、建築でも使われています。現代の建築は、フラットにして影を出さないようにした意匠が主流です。ですが僕は、軒を出すことで建物に影が生まれるようにしています。そうすることで、観る人はより奥行きを感じるんです」

フラッシュサーフェス化された顔が主流の時代にあって、人の心を揺さぶる造形をアルファ・ロメオは選択したのである。この発想は、西口建築にも通じるものだ。効率や合理性でなく人間の感覚を大事にし、庭を中心とした自然を感じる住宅を設計する西口さん。大地の家では、庭には地元の花崗岩、宇寿石(うすいし)がゴロゴロしている。大きいものだと1トン。元からそこにあったような雰囲気だが、クルマで15分のところにある採石所から持ってきたものだ。そんな巨石が転がり木々が生い茂る庭が室内から楽しめるようにと、高さ4mの大きな窓が採用されている。これは、開口部を少なくした高気密高断熱の、現在の主流となる住宅と正反対の設計思想だ。





この西口さんの設計した「大地の家」は、建築家から熱烈に支持され権威ある建築賞を受賞している。それだけではない。海外の著名なデザイナーがことある度に自身のインスタグラムで紹介し、多くの「いいね」が付くのである。その中に、「工業製品のイメージが強い日本から、このような住宅が登場するのに意義がある」とコメントがあったのが興味深い。実はこの家、伝統的な素材が用いられているだけでなく、職人たちの高い技術があって初めて完成したものである。しかも職人たちは、「何か凄いものを作っている」と、楽しみながら作業したという。この現場の人たちの気持ちを、西口さんはとても大切にしている。同じように、長いことアルファ・ロメオが愛されてき理由のひとつが、このブランドと働く人々の心意気から来ているように思う。

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「美しさ」と「走り」、2つのDNA

さて、アルファ・ロメオの伝統的なデザインといえば、ダイヤル式の電話機を髣髴とさせる円がモチーフのホイールもそうだ。試乗車は大きな5つの円のあるホイールを履いていた。

「3連のヘッドライト、5穴のホイール、どちらも奇数ですね。僕もデザインに奇数を使います。例えば障子の桟の数とか。その方が、偶数の時より断然収まりが良くて。調べてみると、寺社仏閣で美しいと感じる意匠は、大抵奇数です。アルファ・ロメオのデザインを美しいと感じるのは、何か秘密があるはずです」



トナーレが過去の名車から引用したモチーフは他にもある。なだらかに弧を描く「GTライン」と呼ばれるショルダーラインは、1960年代の名車ジュリア GTから。サイドガラスとリアガラスのデザインは、8C コンペティツィオーネからのものだ。こうした歴史的なデザインの要素を盛り込みつつ、トナーレは現代的で美しいモデルに仕上がっている。

一通り外観を見終えた後で、トナーレに乗り込んでみた西口さん、クルマが好きで、長いことローバー・ミニのマニュアルを所有し、ゴーカートのような感覚の運転を楽しんできた。Cセグメントのクルマは現在の基準で「小さい」と評されることもあるが、西口さんにとってトナーレは、「十分以上に広い」という。後席でも足元や頭上に余裕があり、4人が無理なく乗れるサイズだ。ドライバーの正面に見えるメーター類は、伝統的な意匠を思わせる二つの円がモチーフだが、表示はデジタル。「ダッシュボード中央にある横長で大きなタッチスクリーンも見やすく、必要な情報を的確に伝えてくれるデザインです」と西口さんはいう。







岡崎の市街地を走り出しての印象は、「ミニと大分違いますね。ハンドル操作への反応が早いです。乗り心地もしっかりしています」。そして街を抜け、郊外の空いたワインディングロードへと向かう。

「DNA」と呼ばれる、アルファ・ロメオ共通のドライブモードを備えるトナーレ。Nが通常運転モードで、Aがエコ運転。Dがスポーツ走行の設定である。今回試乗したモデルはパドルシフトを装備しているが、試乗中、NモードからDモードに入れると、驚いたように西口さんの顔が変わった。

「走りが全く変わりますね。かなり活発になります。マイルド・ハイブリッドということですが、Nモードでも十分なスピードが出ますね。実家の国産のハイブリッドカーに乗ることも多いのですが、思想が全く違うように思います。まさか走って楽しいクルマとは思ってもいませんでした。特にパドルを使って、自分で操作できる感覚が良いですね。このパドル、ハンドルの上を握っても下を握っても、指が簡単に届くようにデザインされていて使いやすいんですよ。しかも、手に触れるアルミの感触が心地よくて。手触りは本当に大事ですね。面白いもので、建築でも人工素材を表面に貼っていると何故か見ただけで分かってしまうので、いつも自然の無垢の素材を使っています」

と、嘘のない素材を使用する西口さん。試乗時間の殆どを、アルミ製のパドルシフトを使ったドライブで楽しんだ。



「僕は建築の中で、たとえ不便でも感覚に訴える部分を大切にしています。と同時に、毎日の生活が楽になるよう、利便性も考えています。それはクルマ作りでも一緒なのでしょう。今の時代、アルファ・ロメオが燃費の良いハイブリッドのエンジンを採用するのは、その表れだと思います。にも関わらずトナーレは、運転してとても楽しいクルマでした。デザインだけでなく走る喜びの伝統は、ニューモデルにも引き継がれているように思います。休みの日にこのアルファ・ロメオ・トナーレで出かけられたら、とても素敵な一日になると感じました」

大切なのは「感性に訴える」ことと、いかに「生活の質」を高めるかにある、と西口さんはいう。トナーレと建築には「心で感じる世界」という共通点があったというだけだ。思わぬ発見だった。

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文=ジョー スズキ 写真=望月浩彦


■試乗車:アルファ・ロメオ・トナーレ・エディツィオーネ・スペチアーレ(台数限定日本導入記念モデル)
全長×全幅×全高は4530×1835×1600mm。ホイールベースは2635mm。パワートレインは新開発の1.5リッター4気筒ターボ+48V電動モーターで、7速DCTを介して前輪を駆動する。最高出力と最大トルクは、エンジンが160ps/5750rpmと240Nm/1700rpm、モーターが20psと55Nmを発揮。さらに12VのBSG(ベルト駆動スターター・ジェネレーター)も搭載する。※限定車の日本導入記念モデルのエディツィオーネ・スペチアーレはほぼ完売し、現在は、ヴェローチェ(メーカー希望小売価格 ¥5,890,000)が販売されている。また、受注生産のTI(メーカー希望小売価格 ¥5,240,000)もラインナップしている。


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■西口賢(にしぐちけん):1975年、愛知県岡崎市生まれ。作庭を前面に押し出し、石や木材などの自然素材を多用した現代の民家のような荒々しい雰囲気の住宅が特徴。気心の知れた地元の腕の良い職人が高い技術で仕上げているため、手掛けた建築愛知県を中心としたものだったが、今回紹介した「大地の家」で、全国的に知られる建築家に。近く、関東地方にも西口作品が着工する。

※撮影協力=中根石材

(ENGINEWEBオリジナル)

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