2024.09.21

CARS

中古車で狙うならこのアルファ ジュリアに加わったヴェローチェの後輪駆動モデルは素晴らしいアルファ・ロメオだ!【エンジン・アーカイブ「蔵出しシリーズ」】

アルファ・ロメオ・ジュリア・ヴェローチェの後輪駆動モデルは素晴らしい1台だ!

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【エンジン・アーカイブ「蔵出しシリーズ」】ご存じ中古車バイヤーズ・ガイドとしても役立つ雑誌『エンジン』の過去の貴重なアーカイブ記事を厳選してお送りしている人気企画の「蔵出しシリーズ」。今回は、2018年5月号に掲載されたアルファ・ロメオ・ジュリア・ヴェローチェのリポートを取り上げる。新世代アルファ・ロメオの先陣を切ったジュリア。2018年の冬、それに見過ごせない追加モデルが登場した。280ps仕様エンジンと後輪駆動の初の組み合わせだ。

見逃せない1台

「これを待っていた!」という人は少なくないのではないだろうか。アルファ・ロメオのジュリア、そのラインナップにこの冬加わった最新モデルがヴェローチェの後輪駆動バージョンだ。ジュリアの日本市場導入時点からヴェローチェはラインナップされていたが、4輪駆動モデルだけだった。そして、左ハンドル。後輪駆動の素のジュリアやスーパーは右ハンドル。ヴェローチェはシリーズで唯一、280ps仕様の2リッターエンジンを積むハイパフォーマンス・モデルだけれど、そこに魅力を感じても、4WDを必要としない人や右ハンドルを望む人には敷居が高かった。でも、2WDで右ハンドルのヴェローチェが出た。見逃せない1台だ。

ヴェローチェには革張りのスポーツ・シートが標準で備わる。


結論からいこう。ヴェローチェの後輪駆動モデルは、シリーズ随一のバランスの良さで魅力的なスーパーにも劣らない、素晴らしいクルマだ。

これぞドライバーズ・カーの鑑と言いたい素直で扱いやすく、それでいてシャープなハンドリング特性は、スーパーそのまま。クアドリフォリオの強心臓(510ps)を難なく受け止める度量の大きなシャシーは、この程度のパワーでは鼻歌交じりでこなしているかのように余裕綽々だ。4WD型のヴェローチェは、ステアリングの切り始め初期の反応の仕方が過敏ぎみで、山道を走るような時には、身構えて細心の注意を払う必要があるのに対して、2WDヴェローチェのステアリングは、スーパーと同じく、初期反応が適切に穏やかで、ギア比の速いダイレクトなステアリングの良いところだけを堪能できる。神経質にならなくていい。

体側を支えるためのサイド・サポート部は体格に合わせて張り出し部の角度が変えられる(電動式)ほか、座部前端部も引き出して座部長を調節(手動式)できる。


だからこそといっていいだろう、スーパーが積む200ps仕様より歴然とパワフルな280psの直噴マルチエア4気筒エンジンがいっそう魅力的な存在になる。8段もある多段ATとの組み合わせによって低速域から、その気になれば一気果敢な目も覚めるような加速力を発揮してみせるから、下手なスポーツカーに一泡吹かせるのなど朝飯前である。本格スポーツカー並みの速度支配力を発揮させるのが、4WDモデルよりずっと容易なのである。


いよいよ光る280psエンジン

基本的に同じ構成、排気量の2リッターエンジンから40%増しの最高出力を引き出せるからといって、低回転域で過給応答遅れが出たりすることもない。ターボ過給エンジンで高い過給圧を使う場合に難しくなる低回転域でのレスポンスも、パワー・カーブのリニアリティ(直線性)も申し分がない。右足の動きひとつでいかようにもコントロールできるのだ。だから、穏やかに走らせているぶんには、スーパーとなんら変わらない。アクセレレーターの扱いが乱暴にならないように、スーパーよりもほんの少しだけ余計に気配りすればいいだけのこと。ヴェローチェのエンジンは4気筒2リッター過給型高出力エンジンとして最も優れたユニットのひとつと言いたいぐらいだ。



ヨーロッパでは1980年代終盤から乗用車用ディーゼル・エンジンの開発競争が加速して、ターボ過給と直噴化、さらにはコモンレール式燃料噴射装置の実用化によって、いよいよガソリン・エンジンを駆逐せんばかりの勢いで普及していった。一方で、一部メーカーを除くとガソリン・エンジンの開発は滞り、これといった技術的進化は見られなかったのだけれど、ディーゼル・エンジンへのインセンティブがなくなったり、排出ガス(窒素酸化物)への批判の高まりなどを受けて、小排気量のものから順に、ガソリン・エンジンの再開発が始まった。これらはほぼ例外なく、ディーゼル・エンジン開発競争のなかで培った技術を転用して生み出されたものといってよく、ターボ過給と燃焼室内燃料直接噴射を組み合わせて圧縮比を落とさずに高い過給圧を使えるようにした、新時代のガソリン・エンジンとなった。可能な限り低い回転域からレスポンスよく大トルクを引き出せることを優先し、摩擦損失が増大する高回転域まで常用させずに中速回転域までですべてを終えさせる特性として、高速回転域はあくまでも過回転破損を防ぐためのマージンとして残すという考え方に基づくものだ。まるでよくできたディーゼル・エンジンのようなガソリン・エンジンが続々と生まれてきたのである。

その最たる例が素のジュリアやスーパーに載る200psユニットで、最高出力発生ポイントはなんと4500rpmでしかない。ヴェローチェの280ps仕様はそれほど極端なパワー・カーブとはなっておらず、高回転域で減衰感が出ないから、回す喜びも残されている。いずれにせよ多段ATのおかげで、上まで回すことなど滅多にないのだけれど。

それにしても悩ましいことになった。インテリアに明るい色調が選べてシートの革も上質、運転席座面の角度調整機構まで備わるスーパーか、はたまたパワフルなヴェローチェか。

どちらを選んだらいいのだろう。



文=齋藤浩之(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦


■アルファ・ロメオ・ジュリア・ヴェローチェ
駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4655×1865×1435mm
ホイールベース 2820mm
トレッド 前/後 1555/1625mm
車両重量 1630kg(前820kg:後810kg)
エンジン形式 直列4気筒SOHCマルチエア16V直噴ターボ過給
総排気量 1995cc
ボア×ストローク 84.0×90.0mm
最高出力 280ps/5250rpm
最大トルク 40.8kgm/2250rpm
変速機 8段AT
サスペンション 前後 マルチリンク式
ブレーキ 前後 通気冷却式ディスク
タイヤ 前/後 225/45R18 91W/255/40R18 95W
車両価格(税込) 587万円〔右ハンドル〕

(ENGINE2018年5月号)

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