2023.12.11

CARS

ライバル、メルセデスとの違いは、内燃機関とEVのプラットフォームが共通なこと! 上陸ホヤホヤの523iとi5、2台の新型BMW5シリーズを比較試乗!!【前篇】

新型BMW5シリーズのi5と523iを比較試乗!

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7年ぶりにフルモデルチェンジした新型5シリーズがついに日本上陸。その最大の注目点は、内燃機関搭載モデルに加えて、フルEVが初登場したことだ。果たして、その乗り味は? 大谷達也と島下泰久の二人のジャーナリストとエンジン編集長のムラカミが試乗し、座談会を行った。今回はその前篇をお送りする。

本命はフルEV

村上 1972年に初代がデビューして以来、これで8代目となる新型BMW5シリーズがついに日本に上陸。その最大のトピックはシリーズ初のフルEVが登場したことだけど、その一方で、内燃機関を捨てたわけじゃない。同じプラットフォームを使ってEVと内燃機関車の両方が生産される。先月号では、ポルトガルのリスボンで開かれた国際試乗会からの報告を島下さんがしてくれましたが、その時にはEVのi5だけだった。しかし、今回は内燃機関の523iとi5 M60 xDriveが同時に日本上陸を果たしたので、その両方を借り出して、箱根までみんなでひとっ走りしてきたわけです。



島下 国際試乗会にi5しかなかったのは、やはりBMWがそちらに力を入れているからでしょうね。向こうではi5のエントリー・モデルとなる後輪駆動のeDrive40も用意されていて、4輪駆動のM60 xDriveと2台に乗りました。

村上 ここで日本に導入される新型5シリーズのラインナップを確認しておくと、i5はその2台で、eDrive40のエクセレンスとMスポーツが998万円、M60が1548万円。一方、内燃機関は今日乗った523iのエクスクルーシブが798万円、その上のMスポーツが868万円で、どちらもガソリンで後輪駆動。さらにその上にディーゼルの523d xDriveのMスポーツ、918万円がある。

島下 つまり、主力として見せたいのはフルEV。だけどエントリーであり実際に数も期待するモデルとして内燃機関があるという構造になる。

大谷 それは7シリーズと同じですね。つまり、一番のエントリーがガソリンの後輪駆動モデルで、その上にディーゼルの4輪駆動モデルがある。しかし、さらにその上のトップ・モデルはあくまでEVで、内燃機関車の上にEVがくる。これが何を意味するかといえば、BMWとしては内燃機関も売ることは売るけれど、本当に売りたいのはEVであり、そちらが本命だということでしょう。



島下 実は本国にはハイブリッド・モデルもあるんですが、今回、日本市場に入れる予定はないそうです。

大谷 それも、今後の日本市場ではEVを本命にしていこうという明確な意思の表れと言っていいでしょう。

村上 国際試乗会の時に出された資料を見ると、BMWは今後の新型5シリーズの販売について、ワールドワイドではまだ内燃機関が6割くらいと予測しているのに対して、ヨーロッパでは約5割がフルEVで、ハイブリッドが2割強。逆に内燃機関は3割にも満たないと考えているというのには、ちょっと驚かされた。

大谷 内燃機関が減っているのはもちろんだけれど、ハイブリッドよりもフルEVが断然売れているというのがヨーロッパの現実で、それを踏まえて、こういう戦略が出てきているのでしょうね。

伝統と未来の融合

島下 ところで、同じようにフルEVを本命にしていても、BMWがメルセデスなどと違うのは、内燃機関車とEVを同じプラットフォームでつくっていることです。メルセデスのEQシリーズの苦戦ぶりを見ると、今のところ、BMWの戦略が当たっているようですが、必要なバッテリーを床下に敷きつめるためにはホイールベースを伸ばさなければならないし、全高も高くなる。それでも、これまでと同じBMWのスポーツ・サルーンならではのプロポーションを保つようなデザインにした結果、全体のサイズが先代よりかなり大きくなっているのも、新型5シリーズの特徴で、全長は5m6cmもある。

大谷 それはひと昔前の7シリーズより長いよね。

村上 全幅も190cmあるから、完全にひと昔前の7シリーズと同じか、それ以上のサイズになっている。

島下 でも、結果的な見た目は、誰がみてもBMWとして受け入れられるものになっています。最近のBMWはかなりアグレッシブに従来のBMW的なイメージから脱却するようなデザインを打ち出していたけれど、この5シリーズはそうじゃない。グリルも4シリーズや7シリーズの巨大なものとは違って、常識的なサイズになっているし、ショルダーラインも前後にピシッと伸びた従来のものを踏襲している。



村上 Cピラーのホフマイスターキンクも、数字の5が入ったパネルになったけど、ちゃんと残してあるね。4灯式のヘッドライトもそう。明らかに伝統的なBMWのアイコニックな要素を残そうと意識しているのがわかる。でも、それでいながら、ボディ・サイドの下の方から後ろに行くにつれてせり上がってくるラインやグリルのまわりのLEDライトなど、新しいデザインも入れてある。ボタンの数を大幅に減らして巨大なタッチパネルを取り入れたインテリアも含めて、コンサバティブな部分とフューチャリスティックな要素がうまく絡み合ったバランスのいいものに仕上がっていると思いました。

大谷 5シリーズはヨーロッパではカンパニー・カーとして乗る人たちも多いから、あまりアグレッシブなものでは困るという配慮もあったのでしょうね。でも、結果として、多くのENGINE読者や日本のBMWファンにとっては受け入れやすいものになったと思います。

◆実際に内燃エンジンの523iとi5を乗り比べるとどうだったのか? この続きは【後篇】で!

話す人=大谷達也+島下泰久+村上政(ENGINE編集長、まとめも) 写真=茂呂幸正


■BMW523i
駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 5060×1900×1515
ホイールベース 2995mm
トレッド(前/後) 1635/1670mm
車両重量 1760kg
エンジン形式 直噴直列4気筒DOHCターボ
最高出力 190ps /5000rpm
最大トルク 310Nm/1500-4000rpm
トランスミッション 8段AT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ (前後)245/45 R19
車両本体価格(税込み) 798万円

■i5 M60 xDrive
駆動方式 前後2モーター4輪駆動
全長×全幅×全高 5060×1900×1505mm
ホイールベース 2995mm
トレッド(前/後) 1620/1655 mm
車両重量 2360kg
エンジン形式 交流同期電動機
最高出力 601(前261+後340)ps
最大トルク 820(前365+後430)Nm
トランスミッション 1段固定式
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/エアスプリング
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ (前後) (前)245/40R20(後)275/35R20
車両本体価格(税込み) 1548万円

(ENGINE2024年1月号)

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