できることなら愛車をいつまでも新車のような輝きのままにしておきたいという想いはクルマ好きなら誰しもが持っている願望だろう。それをみごとに叶えてくれる魔法のような商品が現れた。この1月に東京オートサロンで発表されたばかりの究極のコーティングであるTREXキーパーである。果たして、その威力はどんなものなのか。さっそく、編集部の長期リポート車で体験した。
キーパーはクルマを「磨かない」
最初にひとつ、確認しておきたい大切なことがある。クルマをきれいにすることを、私たちはふつう「クルマを磨く」と言うけれど、こと今回体験したキーパーの商品に関して言うならば、その表現はふさわしくないかも知れない。というのも、キーパーはクルマを基本的に「磨かない」からだ。もちろん、ピカピカにするという意味では磨き上げるのだけれど、機械を使ってボディを研磨することは、経年劣化がひどくて、どうしても必要な場合を除いてはしない。する場合でも、あくまで軽い研磨にとどめて、本来の塗装をそのまま生かすようにする。だから、このキーパーラボの壁に大きく書かれているように、「ウィ・アー・ザ・カー・コーティング・エキスパート」。キーパーはあくまで、コーティングの専門家集団であって、「磨き」のプロではないのである。
それでは、キーパーのコーティングとはどういうものなのか。たとえて言うならば、それは人間の肌を扱うのと同じなのだという。つまり、ボディを研磨するのは、肌に外科的な手術を施すのと同じだから、できうる限りしない。その代わり、まずは丁寧に汚れを落としたボディを基礎化粧品のようなガラス皮膜で覆って地肌を整え、その上に強力なレジン皮膜のコーティングを施していくことで、肌=塗装が本来持っている美しさや瑞々しさを、そのまま保てるようにしようというのである。
塗装面の密着を強め、深い艶を生み出すこのコーティング剤を始め、使っているのはすべてキーパーの独自開発で、ドイツで生産されている。
水飴に包まれたような艶やかさ
発売されたばかりのTREXキーパーを体験したのは、キーパーのデモカーであるアストン・マーティンDBXと、編集部の長期リポート車79号車でおなじみの私ムラカミが担当するポルシェ911カレラ4Sの2台だ。
これまでキーパーでは最上級であった2層構造のEXキーパーを超える3層構造のトリプルEX=TREX(ティーレックス)というのがその名の由来であり、未だかつて誰も見たことのない「未知なる美」を生み出す、と謳うこのコーティングは、室温、湿度、硬化時間などの最適な施工条件をクリアできる環境で、TREXマイスターと呼ばれる卓越した技術者の手により、丸1日の時間をかけて完成するトップ・オブ・ザ・トップともいうべき商品なのだ。
その効果はノーメンテナンスでも3年間持続し、2年(または1年)に1回のメンテナンスで6年耐久という驚くべき威力を誇るという。果たして、どうしてそんな飛び抜けたコーティングが可能になったのか。
ヘッドライトのカバーが曇ってお疲れ気味に見えてしまっていた、編集部のちょっと古いポルシェ911カレラ4S。
このTREXキーパーの最大のキモは、新開発のコーティング剤「TREXリキッドエレメント」にある。EXキーパー用のものから、さらに研究開発を進めて、なんと550回以上のテストを重ねて完成したというそれは、驚くほど粘度が高く、均等に延ばしていくのに力もいるし、熟練の技が要求されるのだとか。これまでキーパーでは、全国に約3万人いるトレーニングを積んだ技術者が同じように扱える、施工し易さと性能をバランスさせた製品を開発してきたが、これに限っては完全に施工し易さを捨てて、性能だけに特化して開発した、特別な人の所有する特別なクルマのための商品だというわけだ。
TREXリキッドエレメントの成分は企業秘密で明らかにされていない。
そんな特別なコーティングの施工第一号の栄誉を、アストン・マーティンDBXとともに分かち合うことができた編集部の長期リポート79号車ポルシェ911カレラ4Sは、本当に幸せなクルマである。TREXキーパーはボディだけではなく、ボンネットやトランクの裏側からドアの隅やヒンジ部分まで、塗装がされているすべての部分にコーティングをしてもらえるのに加えて、超撥水ウィンドウコーティングやホイールコーティング、レンズコーティング、樹脂フェンダーキーパーまで、すべてのオプションが標準プランに含まれている。79号車の曇ったヘッドライトも軽く研磨された上にコーティングを施してもらってピカピカの状態に戻り、担当者としてうれしいことこの上ない。
■TREX KeePerの詳しい情報はこちら
まずは丁寧に水洗いするところからスタート。
洗剤でしっかりと汚れを落とした後、特殊な粘土を使って鉄粉を除去し、油分も取っていく。
エンブレムの周囲などの細かい部分もすべて丁寧に汚れを落とす。
ボディの水分をきれいに拭き上げてから、まずは1層目のTREXプライマーガラスをコーティング。1時間ほど硬化させた後、2層目のTREXプライマーガラスを塗って3時間硬化させる。
ここからがマイスターならではの腕の見せ所だ。圧倒的な防汚高輝度を誇るTREXリキッドエレメントをまんべんなく塗り、拭き取っていく。
特殊なライトを当てて仕上げた後、5時間寝かせて自然硬化させる。TREXキーパーの料金は、SSサイズの34万400円からXLサイズの53万5200円まで。Mサイズのポルシェ911で41万3200円だ。
そして翌日、じっくりと時間をかけてコーティング剤を硬化させ、完成した79号車を取りに行って、本当に驚いた。まるでボディ全体がしっとりとした水飴に包まれたような艶やかな輝きを放っていたのである。
エンブレムやヘッドライトのカバーほか、見違えるほど美しくなったディテールの写真はギャラリーで確認して欲しい。
同時に施工したキーパーのデモカー「アストン・マーティンDBX」も美肌に!
いったい、このヌメヌメっとした独特の感じをどう表現したらいいだろうか。たとえば、人間は歳をとると、どうしたって肌が乾燥しやすくなってくる。今年61歳になった私など、もう冬になると身体中の肌が乾燥して痒くて痒くてたまらない。毎日、クリームを塗って一生懸命ケアしているのだが、カサカサ状態が解消しないのだ。TREXキーパーを施工してもらう前の79号車のボディ表面は、まさにそんなカサカサ状態になっていたのだと思う。それがTREXキーパーのおかげで、生まれたての赤ん坊のようにしっとりとした、きめ細かな肌を取り戻したのである。しかも、毎日クリームを塗らなくても、この柔らかい肌が維持されるのだから、こんなに有難い話はない。
実際、施工してもらって以来、どこへ行っても、79号車をひと目見た人が、えっ、と驚いたような顔をするのがわかる。こんな古いポルシェがどうしてこんなにキレイなの、と言いたい顔だ。ましてや、施工前の79号車の状態を良く知っている人ならなおさらである。先日、エンジン・ドライビング・レッスンに乗って行ったら、常連の参加者たちが驚きの眼差しを向けてきた。いやぁ、本当に若返りましたね、としみじみ言われて、嬉しくないわけがない。そうでしょ、そうなのよ、といろいろな人に言われるたびに胸を張っていると、なんだか、自分の肌が若返って誉められているような気分になってくる。
そういえば、「人は見た目が9割」という本がベストセラーになったことがあったけれど、それを言うなら、もちろん、「クルマも見た目が9割」でしょう。人もクルマも、身だしなみを整えることによって印象がまるで変わってくるということを、改めて実感した思いだ。
TREXキーパー施工前
TREXキーパー施工後
TREXキーパーはまず、特別な設備を備えた東京、名古屋、京都の3店舗で施工をスタートするという。特別なクルマのオーナーには、ぜひ「未知なる美」を体験して欲しい。まわりの人の驚いた眼差しも付いてくること請け合いです。
■TREX KeePerの詳しい情報はこちら
■全国のTREXキーパー実施店舗はこちら
【東京】KeePer LABO 用賀店
【名古屋】KeePer LABO 大須店
文=村上 政(ENGINE編集部) 写真=秦 淳司 取材協力=KeePer LABO 用賀店(Tel.03-6700-6305)
(ENGINE2024年4月号)
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