2024.05.17

CARS

「ふわりふわりとした乗り心地 これこれ!と嬉しい気分になる」 モータージャーナリストの小川フミオがDS4など5台の輸入車に試乗!

モータージャーナリストの小川フミオさんがエンジン大試乗会で試乗した5台のガイ車がこれ! BMW i5、DS4、マセラティMC20チェロ、メルセデスAMG EQE53 4マチック・プラス SUV、フォルクスワーゲンID.4に乗った本音とは?


嬉しさを共有できた


まず私が思うのは、数多くの車両を集めてくれた編集部への感謝。その次は、驚き。けっこうクルマに乗っている私ですが、なのに会場では、“え、こんなクルマあったんだ!”と、乗っていないクルマに出合うのです。これ、嬉しい驚き。円安でガイシャが高値になっていたり、インフラの問題もあり海外ほどBEVが増えず思惑はずれで日本法人に八つ当たり(笑)するメーカーもあるとか。ご同情を禁じ得ません。とはいえ、日本に積極的に新車を持ち込んでくれるおかげで楽しめています。クルマの数だけ個性があるので、日本車だけでなく、ガイシャ(おおざっぱすぎ?)によって、クルマ好きはそれだけ喜びが増えています。今回の試乗でも、ガイシャ好きのEPCの会員の方々と「このかんじ、独自ですよね」なんて嬉しさを共有できた気がします。この先も日本市場を見捨てないで。それが私の願いです。




BMW i5 M60 xドライブ「ますます引き離した」

5シリーズはみなさんよくご存知のとおり、BMWセダンのラインナップでは中間的な存在。でもそんな5シリーズに匹敵するような日本製のセダン、なかなか出てきません。新型5シリーズで、ますます引き離した感すらあります。ガソリン車もすばらしいドライブフィールなのですが、5シリーズ初のBEV、i5もまたかなりよい出来です。パワフルで、重厚感があり、快適でエレガント。私は初代いらいずっと5シリーズの熱心なファンを自認していますが、i5にいたるまで、上記の美点が継承されているのを感じます。同乗してもらったEPC会員のNさんはメガーヌRSオーナーだけあって、よりキビキビと走るクルマがお好みのようでしたが、どちらのクルマも、日本で競合を探すのはなかなか難しい。GRががんばっていますが、60年代からスポーツ・モデルを手がけてきたルノーに一日の長が。話をi5に戻すと、最新の5シリーズを特徴づけているもう1つの要素がインテリア。ディスプレイのグラフィックスやライティングの凝り方はすごい。非レザーのビーガン・インテリアとともに、先のほうを駆けてます。




DS4エスプリ・ド・ヴォヤージュ「独自の個性」

物事はらせん状に進んでいくとも言われています。DS4はその好例。かつてフランス車は乗り心地のよさを高く評価されていましたが、一時期、それがなくなり、日本のフランス車好きとしては「惜しいなあ」と思っていました。ところが、ここきてシトロエンとDSは、ふわりふわりとした乗り心地。これこれ!と嬉しい気分にさせてくれます。ただ同じところに戻ってきたわけでなく、今回のDS4 E-テンスでは、1.6リッタープラグイン・ハイブリッドのパワートレインとの組合せによって、現代的に進化しているのです。私は、エンジン・プレミアム・クラブ会員のKさん(シトロエンC5 XとアルピーヌA110のオーナー)と一緒に乗っていて、路面の凹凸だろうと段差だろうと、まったくといっていいほどショックなしに越えてしまうこの足まわりの味つけ、ほかではめったに味わえないから、嬉しくなっちゃいますよねーと笑顔に。自分たちの製品の重要な個性とはなにかを把握していると思います。やたら細部のデザインに凝っているのも、他と違うことを最大の価値としたようなかつてのシトロエンを少し彷彿させ、独自の個性を味わえる1台なのです。




マセラティMC20チェロ「端正なアスリートのよう」

ガイシャ感がめちゃめちゃ強いのがMC20チェロ。性能、スタイル、価格、そして(これは絶対的な価値である)ブランド。私は幸運にも、モデナの本社での発表会と、そのあとシチリアでのドライブにも参加して、青い空の下、大きなガラスがはめこんであるハードトップを開けて走る気持ちよさを堪能したこともあります。クローズドの状態でもガラス・ルーフの濃度が変えられるなど、ぜいたくな装備が高価格車ならでは。前後ともにタイヤは20インチ径ロードホイールとの組合せで、昨今の水準ではやや小径ですが、1215mmしかない車高と、クラディング処理によって細身に見せたボディ側面のデザインが効を奏して、端正なアスリートのようであります。イタリアの文化的遺産をフル活用しているなと思うのは、チェロのネーミング。世界的に知られたポンキエッリ作のオペラ「ラ・ジョコンダ」のアリア「チェロ・エ・マーレ(空と海)」があるから非イタリア語圏のひともピンとくるでしょう。マセラティって、あらゆる点でエモーションを刺激してくれる。そこですよ、そこ。いまの開発陣はホントよくわかってます。




メルセデスAMG EQE53 4マチック・プラス SUV「ある種の美 」

別項でマセラティMC20チェロのことをエモーションをかきたてるよさがあると書きましたが、こちらは角度が違う。格闘技とかラグビーなどの競技のようなエモーションを喚起させます。つまり興奮です。ここまでのクルマ、日本にないでしょう。4880mmの全長に1670mmの全高のボディに、460kWの最高出力をもつパワートレインとAWDシステムを搭載。なめらかな輪郭のスタイリングゆえか、見た目の凝縮感が強くて、ある種の美があります。ただしそれでも、縦スリットの大型フロント・パネルとか、21インチ径ロードホイールに組み合わされた275/40サイズのデカいタイヤとかで、筋肉質な印象が勝ってます。実際に驚くほど速い。かつ、もう1つの驚きは、あまりに静粛性が高いので、スピードを感じにくいこと。箱根のターンパイクの下りとかでは、けっこう強力に効くブレーキの恩恵を感じながら、どこまでいけるのか、とやや焦ったほどです。ここまでの“やりすぎ感”をもつBEVはめったにない。EQシリーズで電動SUVの先鞭をつけたメルセデス・ベンツとしては常勝を課せられているのでしょう。




フォルクスワーゲンID.4ライト「知的という評価がよく似合う」

どんどん進化している、というのがID.4の印象です。今回特筆したいのは、乗り心地がうんとよくなったこと。導入時のモデルは、足まわりがちょっとドタバタしていて、路面のうねりの影響を受けがちでした。最新のID.4はけっこう落ち着いた乗り味に。私は2023年秋にドイツで改良されたID.4に乗って感心しましたが、それとおんなじ印象です。低重心でカーブを曲がるときも安定的。トルクもたっぷりあって、乗りやすさが身上です。本国では“IQ.DRIVE”っていうほとんど自動運転の機能もあってすごいんですが、日本では認可されていません。もう1つ、私がID.4で好きな点は、インテリアの仕上げ。デザインと素材選びで質感を追求しています。とりわけダッシュボードのシンプルな造型感覚は最高。レザーやウッドなど古典的な素材で高級感を出すのでなく、合成樹脂をうまく使った機能主義的なデザイン。ジャーマン・デザインの真骨頂とされる、ディーター・ラムスがディレクターを務めていた時代のブラウンを彷彿させます。知的という評価がよく似合うクルマ。そうそうありません。

文=小川フミオ

(ENGINE2024年4月号)

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