2024.04.06

CARS

レンジローバー・スポーツSVの万能性を試す!「ハイパフォーマンスSUVは欲しいけれど、それを人にひけらかすつもりはない」そんな上品な人に強力にすすめたい1台

レンジローバー・スポーツの最上位モデル“SV”

全ての画像を見る
レンジローバー・スポーツの最上位モデル“SV”をポルトガル・アルガルヴェを中心とした様々なステージで、モータージャーナリストの大谷達也がテストした。


スーパースポーツカー並み

先代は“SVR”と名乗っていたレンジローバー・スポーツのハイパフォーマンス・バージョンが、新型では“SV”と呼ばれることになった。Rが抜けると性能が下がったようにも思えるが、4.4リッターV8ツインターボ・エンジンの最高出力は635psで、旧型を60psも凌いでいる。コーナリング性能だって最大1.3Gを記録するというから、まさにスーパー・スポーツカー並み。パフォーマンスに対する不安は無用である。

最高出力/最大トルクが635ps/750Nmを発揮する新型SVの4.4リッターV8マイルド・ハイブリッド・ユニットは8段ATを介して4輪を駆動。先代SVRの5リッターV8に比べ+60ps/50Nmを達成している。


じゃあ、新型レンジローバー・スポーツSVは先代にも増して凶暴かといえば、決してそんなことはない。それどころか、見ためも快適性も、こうしたスペックが信じられないくらい洗練されていて心地いいところが、レンジローバー・スポーツSVの最大の魅力といって構わないくらいだ。

国際試乗会の舞台はポルトガルのアルガルヴェ地方。まずは一般道を走りはじめると、そのしなやかな乗り心地に感銘を受ける。先代のゴツゴツ感がすっかりと消え、滑らかにサスペンションがストロークする様は、標準モデルのレンジローバー・スポーツとまったく変わらないか、むしろ快適と思えるくらい。それでいて高速道路ではフラットな姿勢を崩さない。もう、これだけでも“魔法の足まわり”と名乗る資格は十分にある。




マクラーレンに似ている

けれども、本当に驚かされたのはアルガルヴェ・サーキットを走ったときのこと。このときだけはタイヤを標準装備のミシュラン・パイロットスポーツ・オールシーズンからパイロットスポーツS5に履き替えたが、ハード・コーナリングを試してもグニャグニャとした感触は皆無。しかも、ロールの量が巧みに規制されているうえ、ロールした際の姿勢も安定しているので、まったく不満を覚えない。さすがに、スポーツカーのようなヒラリヒラリという軽快感は味わえないけれど、絶対的なコーナリング性能は最大1.3Gというスペックが納得できるほど優れたものだった。

インテリアはSV専用バケット・シートを装備。


その秘密は、新機軸の6Dダイナミック・エアサスペンションにある。これは4輪に取り付けられたダンパーの油圧回路を相互に連結することでロールやピッチを自然と抑える効果を生み出すもの。細部に多少の違いはあるが、その原理はマクラーレンのプロアクティブ・ダンピングコントロールとよく似ている。アンチロールバーが不要となった点も、マクラーレンと同様である。

アンチロールバーを省いたおかげでオフロード走行時の走破性が向上したのもレンジローバーにとっては都合がいいところで、今回も過激なレイアウトの悪路をいとも簡単に走りきって私たちを驚かせたのである。



しかし、個人的にもっとも感銘を受けたのは、オリジナルの世界観をそのまま引き継いだ美しいデザイン。ハイパフォーマンスだからといって、そのことを誇示するのではなく、品がいい内外装にほんのちょっとだけモディファイを施したセンスのよさはこれまでになかったもの。

「ハイパフォーマンスSUVは欲しいけれど、それを人にひけらかすつもりはないんだよねえ」という上品な方にこそ、強力にお勧めしたい1台である。

文=大谷達也 写真=ジャガー・ランドローバー

(ENGINE2024年5月号)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement