2024.05.24

LIFESTYLE

アウシュビッツの収容所の隣に暮らすのは幸せを絵にかいたような家族! 観客を不安に陥れる映画『関心領域』の怖い音

幸せそうな日常の隣で……

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昨年度の賞レースで話題を呼んだ映画『関心領域』が公開された。視覚よりも聴覚を刺激する、その恐ろしい内容とは?

壁の向こうで何が起きているのか?

広大な邸宅で、4人の子供たちと暮らすドイツ人夫婦。幸せを絵に描いたような家族の日常には笑いが絶えないが、窓から見える壁の向こうからは時折、銃声や叫び声が聞こえ、日中から煙が上がっている……。

実はこの家の隣にあるのはアウシュビッツの収容所。暮らしているのは収容所の所長一家。今年度のアカデミー賞で国際長編映画賞ならびに音響賞を受賞した『関心領域』だ。



作品の構成はある意味シンプルである。カメラは、どこにでもいそうな、ある裕福な家庭の生活をひたすら捉えていく。それでいて観る者を終始不安な気持ちにさせるのは不穏な”音”のせいである。一見、平和な日常にはそぐわない音が常に入り交じり、目には見えなくとも、壁の向こうで“何か”が起きている気配を感じさせるのだ。

監督は10年ぶりにメガホンを取った英国の鬼才ジョナサン・グレイザー。異色のSFスリラー『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』も観客を底なし沼に誘うような強烈な作品だったが、人間の持つ無関心という名の狂気を描いた本作の怖さはそれ以上である。


ジョナサン・グレイザー監督(写真中央)

■『関心領域』/2000年に『セクシー・ビースト』で長編劇映画の監督デビューを果たすも、これまでに手掛けた作品はたったの4本とその寡作ぶりでも有名なジョナサン・グレイザー。本作はアカデミー賞国際長編映画賞を受賞したほか、カンヌ国際映画祭のグランプリにも輝いている。原作はイギリスの作家、マーティン・エイミスによる同名小説(早川書房刊)。なお本作で所長の妻を演じたザンドラ・ヒュラーは、先ごろ日本でも公開された『落下の解剖学』でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた話題の演技派だ。新宿ピカデリー、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開中。配給:ハピネットファントム・スタジオ 105分  (C)Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.

文=永野正雄(本誌)

(ENGINE2024年6月号)

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