2024.06.09

CARS

ポルシェ911がついに電動化 カレラGTSをハイブリッドにするなどのマイナーチェンジを実施

SUVブームや電動化という流れがあってもポルシェの基幹モデルといえば、911以外には考えられないだろう。新型911カレラ、911カレラGTSの予約受注が開始された。

T-ハイブリッドを搭載

最大の見どころは、GTSに超軽量パフォーマンスハイブリッドを謳う「T-ハイブリッド」が搭載された点で、ついに911にも電動化への流れが及んだことになる。



3.6リッター・フラット6+1モーター

新型GTSには、新開発の3.6リッター水平対向6気筒エンジンに、同じく新開発のターボとモーターが組み合わされる。ハイブリッド機能はほかの多くのスポーツ・モデルや高級車と同じように、狙いは単なる高効率化だけではなく、パフォーマンスのさらなる向上も盛り込まれている。新型911カレラGTSクーペは、0-100km/h加速を3.0秒でクリアし、最高速度は312km/hに達する。

新開発の電動ターボはコンプレッサーとタービンホイールの間にモーターが組み込むことで、瞬時にターボチャージャーの回転速度を引き上げられ、ブースト圧を即座に上昇させることができる。

ターボ内の電気モーターは最大15ps(11kW)の電力を発生する発電機としても機能。排出ガスのエネルギーを吸気の過給圧を上げるためだけでなく、電気エネルギーに変換して取り出すことができる。新しい電動ターボにはウエストゲートが備わらず、数は従来の2基から1基、つまりシングル・ターボに変更されている。



MTの設定はナシ

組み合わされるトランスミッションは、新しくなったデュアルクラッチ式8段自動MT(PDK)で、PDK内には永久磁石同期モーターも組み込まれている。アイドル回転域でも最大150Nmの駆動トルクで水平対向エンジンをサポートし、最大54ps(40kW)の出力向上を実現した。

ターボとトランスミッションに搭載されるモーターは、軽量でコンパクトな400Vの高電圧バッテリーに接続されている。バッテリーのサイズと重量は、従来の12V鉛バッテリー相当で、最大1.9 kWhの総エネルギーを蓄えることが可能だ。また、総重量を最適化するため、12Vバッテリーは軽量リチウムイオン式が採用されている。



エンジンも新開発

新開発の3.6リッター水平対向エンジンは、ボア97mm、ストローク81mmにすることで排気量を0.6リッター拡大。ロッカーアーム駆動のバルブには可変バルブタイミング&リフト機能のバリオカムが備わる。エンジンマッピング全体にわたって燃料と空気の理想的な混合比を維持する。

また、ハイブリッドの高電圧システムを用いることで、エアコンのコンプレッサーを電動駆動化。これまでのベルト駆動に対してベルトを排することで、エンジンが大幅にコンパクトになったことで、電源ユニットの上部にパルスインバーターとDC-DCコンバーター搭載用のスペースを稼ぎ出した。

新エンジンは、電動ブーストなしでも485ps/570Nmのトルクを発生。システムトータルの出力は541ps/610Nmに達する。これは先代よりも61ps高い数値だ。また、先代モデルからの重量増加を50kgに抑えている。

新型911カレラは従来モデル同様、ツインターボを備えた3.0リッター水平対向6気筒エンジンを搭載。ただし、インタークーラーをエンジン上部のリア・リッド・グリルの真下配置に変更するなど、こちらもエンジンも全面的に刷新されている。出力は394ps/450Nm。新型911カレラ・クーペの0-100km/h加速タイムは、先代から0.1秒の短縮の4.1秒(スポーツクロノパッケージ仕様車は3.9秒)、最高速度は1km/hアップの294km/hとなっている。



GTS初の後輪操舵

脚まわりも見直された。GTSにリア・アクスルステアリングを標準装備にすることで、高速走行時の安定性が向上し、回転半径も短縮。また、「ポルシェ・ダイナミック・シャシー・コントロール」(PDCC)アンチロール安定化システムをハイブリッドの高電圧システムに統合。これにより、電気油圧制御システムを用いることができ、システムの柔軟性と精度を高めている。GTSは、可変ダンパーの(PASM)を備えたスポーツ・サスペンションと10mm低い車高によりさらにスポーティな走りを可能とした。

アルミホイールは、カレラ用とカレラGTS用で計7種類の前19、後20インチ、または前20、後21インチのホイールを用意。911カレラ系に初採用された「エクスクルーシブデザイン」のホイールは、空気抵抗係数を低減させ、効率性を高めるカーボンブレードが備わっている。

911カレラGTSには、リム幅11.5インチの21インチ・ホイールと315/30ZR21タイヤを後輪に標準化。フロントには245/35ZR 20タイヤをリム幅8.5インチの20インチ・ホイールに組み合わせている。パワートレインの性能向上とリア・タイヤの接地面積の増加により、911カレラGTSのドライビングダイナミクスとトラクションが向上している。



内外装もリフレッシュ

今回のマイナーチェンジによる変更は内外装デザインにも及んでいる。エクステリアは、エアロダイナミクスとパフォーマンスを向上させるため、バンパーのデザインを変更。特徴的な4灯のグラフィックを備えたマトリックスLEDヘッドライトのユニット内にすべてのライト機能を統合し、バンパーから灯火類を排除することで、大型のエアインテークを設置するスペースをつくり出している。

GTSのフロント・バンパーには、アンダー・ボディのアダプティブ・フロント・ディフューザーと統合制御することで空気の流れをコントロールする5つの縦に配置されたアクティブ冷却エア・フラップと両側に隠れたフラップを装着。これにより、必要なパワーが最小限の場合にフラップを閉めてエアロダイナミクスを最適化、また、サーキット走行などハイパワーが必要なシーンではフラップにより大量の空気をラジエーターに送り込むなど、走行風をコントロールすることで性能の最適化が図れるようになった。なお、先進安全装備のセンサーは、ナンバープレート下の光沢面の裏側に配置されている。

3万2000以上の光点を備えた新しいHDマトリックスLEDヘッドライトがオプション設定されたのもトピックス。高性能ハイビームは600m以上先まで照らすことが可能だという。また、ドライビング・モードと連携するダイナミック・コーナリング・ライトやピクセル単位で精確な防眩ハイビームなど、革新的な追加機能も含まれている。



新しいガーニッシュでリアまわりを刷新

リアまわりでは、リア・エンドをより立体的に、よりワイド見せる「PORSCHE」ロゴを統合した新しいガーニッシュを採用。リア・ウインドウから繋がる5枚のフィンを備えた両サイドのリア・グリルも新しくなった。その下にはこれまで通り、格納式スポイラーが備わる。

新形状のリア・バンパ―はナンバープレートの位置を高めに配置。911専用のエグゾースト・システムは、存在感のあるディフューザーフィンにエレガントに組み込まれている。カレラには、オプションでスポーツ・エグゾースト・システムが設定され、GTSには、GTS専用スポーツ・エグゾースト・システムが標準装備されている。

そのほか、オプションのエアロキットも用意。キットには、ユニークなフロント・スポイラーを備えたスポーツデザイン・フロント・バンパー、それにマッチしたサイドシル・パネル、軽量の固定式リア・ウイングが含まれている。これらのコンポーネントは揚力を低減させ、グリップを向上させるという。



2シーターを標準化

インテリアには最新装備が多く盛り込まれた。クーペ・モデルは、2シーターが標準で、追加料金なしで2+2シートも選択できる。コクピットには、「ポルシェ・ドライバー・エクスペリエンス・コントロール・コンセプト」が採用され、ドライバーを中心とした直感的で素早い操作に重点が置かれた。

標準装備のドライビングモード・スイッチ、改良されたドライバー・アシスタンス・レバーなど、重要な操作系をステアリング・ホイールまたはステアリング・ホイールの周囲に配置。ステアリング・ホイールの左側には911初のスタート・ボタンが設置された。また、センターコンソールも新しくなり、収納スペースには、電磁誘導充電機能を備えたスマートフォン用の冷却コンパートメントも用意されている。



フルデジタル・メーターを採用

メーターには911で初めてフルデジタル式を採用。12.6インチの曲面ディスプレイは、操作性の高さと幅広いカスタマイズ性を備えている。レヴ・カウンターが中央に配されたポルシェ伝統の5連メーターにインスパイアされた独自の「クラシック・ディスプレイ」をはじめ、最大7種類の表示が可能となっている。

また、「ポルシェコミュニケーションマネジメント」(PCM)と呼ばれるインフォテインメント・システムは、10.9インチの高解像度センターディスプレイで操作。ドライビング・モードのカスタマイズやドライバーアシスタンス・システムの操作性が大幅に改善された。

コネクティビティも最新世代へとアップグレード。QRコードの採用によりポルシェIDによる「PCM」へのログオンプロセスを大幅に簡素化されている。「Apple CarPlay」が車両にインストールされ、必要に応じてメーターパネルに情報を表示することもできる。「Siri」音声アシスタントなどを介して「Appleエコシステム」で車両機能を直接操作することも可能だ。さらに、今回初めて、駐車中のビデオストリーミングもオプションで利用できるようになった。スマホを接続しなくても「PCM」のネイティブアプリとして使用できるようになり、利便性を大幅に高めている。

価格は、911カレラが1694万円、911カレラ・カブリオレが1943万円、911カレラGTSが2254万円、911カレラGTSカブリオレが2503万円、911カレラ4 GTSが2365万円、911タルガ4 GTSが2615万円、911カレラ4 GTSカブリオレが2614万円となっている。なお、ステアリング位置は、左右ともに設定されている。 



文=塚田勝弘

(ENGINE WEBオリジナル)

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