身に着ける場所やライフスタイル、好みに合わせて、選択肢の幅がますます広がる腕時計の世界。そんな時計、新時代をリードするトップランナーたちに着目しました。エンジン時計委員会メンバーの時計愛溢れるコメントからは、それぞれの魅力がたっぷり伝わってきて、手に入れたくなること間違いなし。『夏の時計大特集』をどうぞお楽しみください。
“モダン・メカニカル”のトップランナー クロノスイス
クラシカルな時計製造技術と、常に革新的な技術・素材・発想を融合して作られる新生クロノスイス。創業41年目の意欲作は、唯一無二の個性を放つ。
エンジン時計委員 菅原 茂、髙木教雄、細田雄人の推し!ストライク・ツー ゴールデンギア時、分、秒それぞれの針が独立したレギュレータースタイルのダイアル表示はクロノスイスの最も代表的なデザイン。「ストライク・ツー」では90年代の「TORA」を彷彿とさせる水平配置を採用し、3時位置の時表示に2本のブリッジを並置する斬新なデザインが特徴。ダークなダイアル面とコントラストを成すゴールドのカラーリングもユニークな表示スタイルを引き立てる。インパクト十分。自動巻き。ステンレススティール、ケース直径40mm、3気圧防水。100本限定。205万7000円。『圧倒的な存在感だ』 菅原 茂オクトーバーフェストの時期になると思い出すのはミュンヘン時代のクロノスイス。創設者の時計師ゲルト・ラングさんやスタッフたちとビールを飲んで騒いだっけ。それはさておき、時計マニアを自認するご本人が古典的な意匠や機能にこだわり抜いて製作していた頃とスイス時代の今は何が違うのだろう。それはインパクト。斬新な構造と強烈な色彩をもって迫ってくる存在感には圧倒される。たとえば都市開発によって旧市街が近未来的な姿に変貌したような感じか。時計も機能的道具から嗜好品へと変わったのだから、案外これが正解なのかと気づかされるのだ。
『時代性を伴う新古典主義』 髙木教雄ドイツ時代を知る身としては、特異な横配列のレギュレーターがなんとも懐かしい。オリジナルではインダイアルを、それぞれ12時間と24時間表示の時針とした2タイムゾーンであったが、本作は時針と秒針である。フルーテッドベゼル、オニオンリュウズは、創業者の遺産。通好みな古典を、やや粗いヘアライン仕上げのダイアルやオープンワーク、ビス留めブリッジでコレクション名通り“ギア”感を出して現代的に再解釈してみせた。スモールセコンド内の装飾は、手彫りギョーシェ。伝統美と時代性との調和への途を懸命に探ったであろう努力と工夫に、エールを送りたい。『懐かしくも現代的』 細田雄人カラーDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)やPVD、CVD(化学気相成長)など蒸着によるカラー表現を追求し続けているクロノスイス。その多くは近年のブランドイメージを象徴するようなアヴァンギャルドさ全開の色使いで目を引くが、この新作ではクラシカルなデザインに合わせてか少し控えめだ。着色が塗装とは異なるごく薄い皮膜で色を成すCVDによるだけあり、文字盤上に入れた繊細な筋目仕上げが潰れずに残っている点がグッド。ちょっと懐かしい1990年代クロノスイスの面影を残しながら現代的な文字盤表現も兼ね備えた、オールドファンにこそ手に取ってもらいたい1本だ。写真=宇田川 淳問い合わせ=栄光時計 Tel.03-3837-0783
(ENGINE2024年9・10月号)
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