2024.10.05

LIFESTYLE

アメリカ人同士が殺し合いを!? 全米で大ヒットした映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』が描く不穏な未来予想図

政府軍 VS. テキサス・カリフォルニア同盟

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アメリカで南北戦争以来となるシビル・ウォー(内戦)が勃発!? もちろん映画の中での話だが、“分断社会”と呼ばれる超大国の行く末を描いたかのような内容は、実にリアルで恐ろしい……。

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テキサスとカリフォルニアが手を組み?

アメリカ社会の分断が盛んにいわれるようになって十余年が経つが、今年11月に控えた大統領選に向けて、その状況はますます深刻化しそうな気配である。共和党と民主党という二大政党のみならず、それぞれの陣営を支持する国民、そしてメディアさえもがお互いの主張に耳を貸さず、議論は平行線を辿る一方。コミュニケーション不全が常態化し続ければ、3年前の連邦議会襲撃事件のような衝突が再び起こりかねない。今年、本国で大ヒットした映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』が描くのは、そんな超大国の姿に警鐘を鳴らす物語である。

そう遠くはない未来のアメリカ。憲法を強引に改正し、3期目を実現させた独善的な大統領に反発した19の州が連邦政府から離脱した。さらにテキサス州とカリフォルニア州が手を組み、大統領率いる政府軍に対抗。国内は激しい内戦状態(シビル・ウォー)に陥ってしまう。政府軍の敗北が濃厚となる中、4人の戦場ジャーナリストが、大統領の独占インタビューをものにすべく、危険覚悟でNYからワシントンDCへと向かう。





映画の広告ビジュアルは、ハリウッドが得意とする娯楽系アクション大作のようにも見えるが、実際の作品の肌触りはかなり異なる。監督は独特の映像センスで高く評価されている英国人アレックス・ガーランド。クライマックスにかけて大掛かりな戦闘シーンはあるものの、全体的には荒廃したアメリカを旅するロードムービーといった印象が強い。で、その道程が相当、怖い。


無法地帯と化した“自由の国”で、主人公たちは幾度となく命の危険にさらされる。中でも彼らが遭遇する、残虐な武装集団の男の存在が強烈だ。通りすがりの主人公たちを拉致し拘束した男は、彼らに銃をつきつけながら、狂気を帯びた無表情な顔で質問をぶつける。

「お前はどの種類のアメリカ人だ?」

社会の分断が招いた闇を、緊迫した映像でみせる本作品。同じような紛争は今も世界各地で起きている。この作品を単なる荒唐無稽な物語として一笑に付せないのは、その根底にアメリカ、いや、世界が抱えるリアルな現実が流れているからだろう。





■『シビル・ウォー アメリカ最後の日』 本作の主人公である戦場カメラマン、リーを演じるのはキルステン・ダンスト。子役からスタートした長いキャリアを持ち、現在も娯楽大作からアート系まで、多彩な作品に出演している。『エクス・マキナ』、『MEN 同じ顔の男たち』といった独自の世界観を持つアレックス・ガーランド監督のファンで、本作への出演を切望したという。また劇中で主人公たちの生命を脅かす謎の武装集団の男を演じるのはジェシー・プレモンス。実生活ではキルステン・ダンストの夫である。109分。配給:ハピネットファントム・スタジオ (C)2023 Miller Avenue Rights LLC; IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.

文=永野正雄(ENGINE編集部)

(ENGINE2024年11月号)

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