2024.10.19

LIFESTYLE

曲がっているとなぜ楽しい? 中も外も曲線だらけの三日月ハウスの謎 理想の建築を目指した建築家の素敵な自邸をのぞいてみた!

曲線が印象的な熊木邸。黒い扉が玄関。オレンジの扉は勝手口。

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雑誌『エンジン』の大人気連載企画「マイカー&マイハウス クルマと暮らす理想の住まいを求めて」。今回は、埼玉県の住宅街に建つ、大きくカーブした三日月形の一軒家。外観は白いが、中はカラフルな唯一無二のデザインに、建築家・熊木英雄さんのこだわりが明確に表れていた。ご存知、デザインプロデューサーのジョースズキ氏がリポートする。

優雅な客船を思わせる外観

東京に近い埼玉県の住宅街に建つ、建築家・熊木英雄さん(53歳)の自邸。優雅な客船を思わせる、曲線が美しい白い家だ。ここで暮らすのは、熊木さん夫妻に二人の子供(長男14歳・長女11歳)。長子を授かってから設計に着手した家で、今年で築13年になる。建物は上から見ると、三日月のように大きくカーブした形。地面と接する部分も曲線で、未来の乗り物を連想させる独特の意匠だ。

この個性的な姿ゆえ、建築に全く興味の無さそうな宅配便の配達員からも、船で言う舳先(へさき)の「裏側はどのようになっているのか」と質問されたことがあったほど。このように人の関心をひきつける外観の熊木邸だが、内部空間も負けずに個性的。曲線で構成され、明るい色が溢れている。







現代の日本の住宅は、直線で構成されたものが少なくない。ところが海外ではその反対の、曲線を中心としたスタイルの家を随分と目にする。英語でオーガニックデザインと呼ばれるものだ。さらに曲線を利用した建築の中には、形や向き、窓の位置などを工夫することで、太陽の光や風をコントロールするエコな手法もあり、ひとつの考え方となっている。熊木さんが目指しているのは、そうした建築に、楽しい色を加えた世界である。熊木邸は、建築家の自邸ならではの、主義主張が明確に表れた家だ。

新しい切り口を求めて渡英

若い頃の熊木さんには、自分の建築を見つめ直すとともに新しい切り口を求めて渡英した経験がある。そこで出会い惹かれたのが、曲線と色彩を用いた建築だった。熊木さんは、このスタイルで世界的に知られる建築事務所に4年半ほど勤務。帰国後立ち上げた自身の建築事務所名は、目指すスタイルを謳った「(株)オーガニックデザイン」である。

子供が生まれるまでは、マンション住まいだった熊木さん夫妻。自宅を建てたのは、熊木さんの母親が菜園として使っていた土地だ。今でも道路に沿って植えられたバラが、季節になると道行く人の目を楽しませている。そのような歴史から、熊木邸の形は、どの部屋からも母親が丹精した庭を眺められるような三日月形となった。もっとも曲線で構成された建物は、通常よりも建築費がかさむ。建物のサイズは予算の関係で自然に決まったと熊木さんは話す。





間取りは、「基本、大きな1LDK」でスタートした。三日月に四角い玄関部分が付いた構成で、三日月の片側には大きなリビング・ダイニング・キッチンが配され、その端の船の舳先の内側部分は勉強スペースになっている。そして建物の反対側は主寝室と子供のスペース。2人目の子供が生まれたことで、7年後、ガレージを二人の子供部屋に改装し、玄関脇から子供部屋に通じる廊下を追加した。この増築で追い出されたクルマは、新たに設けたカーポートの下に停められている。

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