クルマ好きのゲストを迎え、「これまでに出会ったクルマの中で、人生を変えるような衝撃をもたらしてくれた1台」を聞くシリーズ、「わが人生のクルマのクルマ」。今回登場していただくのは、埼玉西武ライオンズのピッチャーとして先発ローテーションの一角を担い、2ケタ勝利を収めたルーキー、武内夏暉投手。クルマの免許を取り、初めての愛車も来て運転が楽しくなっています。
野球を始めたのは小学校3年生
ホイールまで黒く塗られた漆黒のメルセデス・ベンツGLC220dは、撮影現場に威圧感を持って登場した。キャビンが絞り込まれたクーペ・スタイルのSUVでありながら、クルマが大きく見えるのは張り出したヒップラインのせいかもしれない。
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ドライバーは埼玉西武ライオンズのルーキー・ピッチャー、武内夏暉さん、23歳。クルマに負けず劣らずのガッシリとした体躯には贅肉など一切なく、胸のすくほど壮健な立ち姿だ。
「こんにちは。よろしくお願いします」
若さ溢れる笑顔と真っ白な歯が眩しい。迫力のあるクルマから降り立ったのは、爽やかさを絵に描いたような青年だった。
愛車の前でポーズをとる姿もカッコイイ。きりっとした目元、すっと通った鼻筋は俳優かと思わせるほどだ。でもやっぱり野球選手だなあと感じたのは、ボールを持って撮影したときだ。ボールをポーンと投げ上げたときの笑顔と所作が素晴らしい。
そんな武内投手は福岡県北九州市生まれ。野球を始めたのは小学校3年生のときだった。
「もっと小さい頃から家でプロ野球を見たり、父が球場に連れて行ってくれたりしていたので野球は好きでした。少年野球のチームに入ってからは中学、高校、大学とずっと野球をしてきました」
さらっと言う武内投手だが、成長するにつれ、その活躍が注目されるようになった。2022年、國學院大學3年生で出場した「東都大学野球 秋季リーグ戦」では4勝0敗、防御率0.68を記録して優勝に貢献、見事MVPに輝いた。今年は埼玉西武ライオンズのピッチャーとしてプロの道へ進み、あまりいいところがなかったチームのなかで、なんと10勝を挙げた。防御率も2.17と素晴らしい。武内投手は埼玉西武ライオンズはもとより日本プロ野球界期待の星なのである。
免許も取ったばかり
冒頭に書いたとおり武内投手の愛車は撮影現場に乗り付けたメルセデス・ベンツGLC220dだ。
「今年の2月に注文して、4月に納車されました」
クルマの免許を取ったのも昨年12月だというので、武内投手のカーライフはまさに始まったばかりなのである。
「身体が大きいのでSUVにしようと思いました。でもクルマは初心者なので大きなのはまだ早いから、GLCぐらいがちょうどいいかなと。ほかの選手とかぶらないクルマにしたいというのもGLCに決めた理由です。ボディカラーの黒、内装のブラウン・レザーも自分で選びました。仕様はAMGラインパッケージになります」
クルマは好きなんですか? と聞くと、武内投手は少しはにかみながら「正直、クルマはあまり興味がなかったんです」と言った。
クルマの話はピッチングのようにはいかないんですといった様子は、とても素直な子供のようで、こちらもついつい父親のような目線になる。
「でも、クルマは父が大好きでいろいろと教えてくれました」
本物の父はクルマ好きだった。
「九州にいる父が地元のディーラーでいろいろ試乗して、あれがいいとか、これがいいとか。相談に乗ってくれました」
父が息子に推薦したのはSUVだった。ランドローバー・ディフェンダーである。
「試乗したんですけど、クルマが大きくて(笑)。それから、すでにほかの選手が乗っていたのでやめました。もしかしたら父がランドローバー・ディフェンダーに乗りたかったのかもしれません(笑)」
クルマ好きの父は運転がとてもアグレッシブで、車種よりもクルマ酔いの記憶の方が強いという。
「年末にはGLC220dを地元で父に見てもらうつもりです」
お父さんはきっと目を細めるに違いない。
秩父へドライブ
シーズンを終えたばかりの武内投手だがどんな生活をし、GLC220dをどんな風に使っているのだろうか。
「いまはライオンズの寮で生活しています。まず、身体をリセットするためにきちんと休みます。それから来シーズンのために休んで落ちた体力や筋力を戻すためにトレーニングをします。クルマは買い物やオフの日のドライブなどに使います。運転は好きですよ。この前は秩父をドライブしました。シーズン中は球場に乗って行っていました。寮から球場までは2~3分なんですけど。他球場にも運転して行きました。幕張のZOZOマリンスタジアム、東京ドーム、神宮球場ですね」
GLC220dはクーペのスタイリングとがっしりとした走りが気に入っているという。
「千葉県の勝浦までドライブしたんですけど、高速道路の安定感が素晴らしいですね。GLC220dの前は選手の間で使いまわしていたレクサスRXを借りて乗っていたんですけど、しっかり感が全然違うと思いました。まあ、GLC220dは新車ということもあるのでしょうが。パドル・シフトは使ったことがありません。父はカチカチとやりながら運転するのですが、何やってるんだろう? と思っていました。一度、パドル・シフトに触ってしまい突然スピードが落ちてビックリしました(笑)。でも、そういうことも含めてクルマにどんどん興味が出て来たことは間違いありません。インターネットで外車の情報などをよく見るようになりました」
GLC220dが来て、運転が楽しくなり、クルマにも興味が出て来たという武内投手である。なんといっても並外れた運動神経の持ち主だ。助手席に乗ったお父さんが息子の運転の上達ぶりに目を見張る日はそう遠くないかもしれない。
練習を重ねながら来シーズンの明確な目標を立てていきたいという武内投手。きっと来シーズンも得意のツーシームで打者をきりきり舞いさせるに違いない。
プロ野球選手としてのキャリアも、そして自分自身のカーライフも始まったばかり。
武内投手の夢を応援したい。
文=荒井寿彦(ENGINE編集部) 写真=筒井義昭 スタイリング=Kim-Chang
武内夏暉(たけうち・なつき)
2001年福岡県生まれ。埼玉西武ライオンズ投手。左投げ左打ち。背番号21。小学校3年生のときから野球をはじめる。高校2年生のときに野手から投手へ転向する。國學院大學時代に投手としてMVPに輝き、日米大学野球選手権大会にも出場した。2024年、埼玉西武ライオンズの先発ピッチャーとしてマウンドに立つ。5月には月間MVPを受賞、9月にはプロ初完投初完封勝利を収める。ルーキーイヤーとなった2024年は一軍で規定投球回に到達し、21試合の先発登板で10勝6敗、防御率2.17と好成績を収めた。
(ENGINE2025年1月号)
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