2024.12.31

CARS

パナメーラとはまったくの別物 ベントレー・フライング・スパーに加わった“スピード”にモータージャーナリストの渡辺慎太郎が試乗

ベントレー・フライングスパー・スピード、最高出力と最大トルクは782ps/1000Nmで、ベントレー史上最強の4ドア・セダン。

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ベントレー独自のもの

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ところが実際に運転してみると、パナメーラとはまったくの別物になっている。パワートレインのハードウエアは確かに共有しているものの、それらを司る制御のソフトウエアはベントレー独自のもので、エンジンの回転フィールや出力よりも、トルクの出方にこだわった味つけになっている。そっとアクセレレーターを踏み込む発進時から、つまりアイドリングの回転数からわずかに上のあたりでもたっぷりのトルクが体感できて、2.5トンを超えているはずの車重をほとんど意識しないまま見る見るうちに速度が上がっていく。そこにはスポーツカーを想起させる所作などまったく存在しない。“粛々とした重厚感”だけが身体にまとわりつく。





伸び側と縮み側でそれぞれバルブを有するツインバルブ式ダンパーと空気ばねを組み合わせたエア・サスペンションもまたパナメーラと共有している。こちらもまた、だからといってステアリング・ゲインが高く積極的に曲がっていくようなスポーツカーの操縦性にはなっていない。あくまでもドライバーの入力に対して正確かつ迅速に反応するタイプである。加えて、後輪操舵やeデフやトルクベクタリングを駆使して、3.2mに近いホイールベースを相殺する優れた回頭性も持ち合わせていた。





フライングスパー・スピードはプラグイン・ハイブリッドなので、駆動用バッテリーが充電されていればEV走行が可能となる。最大航続距離は76kmで、最高速は140km/h。クルマを渡された時はほぼ満充電だったので、しばらくはずっとモーターのみの走行となった。爆発を繰り返すエンジンが眠っているので、パワートレイン由来のノイズや振動(=NV)は当然のことながらほとんどなく、滑らかな乗り心地と共に高い静粛性に室内は包まれる。ラグジュアリー・カーとEVの相性のよさを再確認したら、いつの間にかエンジンが始動していた。エンジン稼働時でもNV対策は万全であった。

こうした極上の快適性を、高品質の本革やウッド・パネルに囲まれた空間で味わっていると、このクルマは紛れもないラグジュアリー・カーであると感心する。で、冒頭の疑問にまた辿り着くわけだ。いつまでも自分で抱え込まず、ベントレーのエンジニアに聞いてみることにした。

「スポーツカー、スポーティ・カー、ラグジュアリー・カー、そのすべてを備えているのがベントレーです」


おっしゃる通りです。

文=渡辺慎太郎 写真=ベントレー

■ベントレー・フライングスパー・スピード
駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動+モーター
全長×全幅×全高 5316×1988×1474mm
ホイールベース 3194mm
車両重量 2646kg
エンジン形式 水冷V型8気筒DOHCターボ+モーター
排気量 3996cc
ボア×ストローク 86×86mm
システム最高出力 782ps
システム最大トルク 1000Nm
トランスミッション 8段デュアルクラッチ式自動MT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン+エア
(後) マルチリンク+エア
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前/後) 275/35ZR22/315/30ZR22
車両本体価格 未定

(ENGINE2025年2・3月号)

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