2024.12.30

CARS

電気自動車より実用的! ホンダCR-Vの燃料電池PHEVにモータージャーナリストの国沢光宏が試乗 はたしてオススメできるクルマになっていたのか?

ホンダの燃料電池車がSUVのプラグイン・ハイブリッドで復活!

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ホンダの燃料電池車がSUVのプラグイン・ハイブリッドで復活。EVよりも実用的だけど……。2021年から途絶えていたホンダの燃料電池車がCR-Vベースになって帰って来た。しかも、60kWhの電池を積んだPHEVという、新たな試みを採り入れている。行き詰まり感のある水素燃料自動車の未来を切り開くことができるだろうか。モータージャーナリストの国沢光宏がリポートする。

今やトヨタ・ミライの販売台数は月販平均で二桁に届かず9台! いわゆる「オワコン」という雰囲気になりつつある燃料電池車ながら、ホンダがCR-Vの燃料電池PHEV「e:FCEV」を発表した。



どんなパワーユニットか? ミライのような燃料電池車に、カタログデータだと61km走れる電池を搭載したと考えればいい。解りにくければ「ハリアーPHEVのエンジンを燃料電池に置き換えた」でも同じ。どんなメリットがあるのか?

現状ではベストな選択

ご存じの通り水素ステーションは増えるどころか減る傾向。燃料電池車密度の高い東京都ですら15か所しかない。頑張ろうとしている自動車メーカーを横目に、石油利権のためなのか政府は水素インフラを整えるつもりがないように思う。簡単に認可した電動キックボードとは対照的で、なぜか水素に対する厳しすぎる規制を緩和しない。今でも1本100万円する水素ホースの交換サイクルを、充填回数1000回としてる。1回あたり1000円! 1万回だって持つのに。

内装は最新のホンダ車共通の水平基調のスッキリとしたデザイン。

荷室以外は室内も広く、実用性の高いSUVに仕上がっている。

閑話休題。政府に頼らないホンダは水素ステーションの増加を期待せず、何とか実用的になる燃料電池車を考えた。それが今回のクルマである。

カタログ値ながら61kmくらい走れる電池を積んでおき、近所は電気自動車として使えるようにしたらいい、ということです。自動車の平均使用距離は平均20kmであり、60km以下が90%を占める。60km走れる電池を積んでおけば、水素ステーションに頼ることなく使えるでしょ、ということ。「水素はいつも満タンにしておき、ロング・ドライブする際に使いましょう」です。満タンの水素でカタログ値だと621km。実用500kmといったイメージ。

水素タンクは後席下と後席背後の2か所に搭載。容量は、下が53リッター、背後が56リッターの109リッター。

背後のタンクは荷室に侵食しており、容量は小さくなってしまっている。

私はミライを所有しているが、走行距離は伸びない。電気で50km走れるPHEVなら気軽に乗れると思う。100%水素しか使えないと、自宅から水素ステーションまで(近くで30分以上掛かる)行くことだって面倒。国がホンキで水素インフラを構築するまでの繋ぎとして考えたらベストかもしれません。

長い前置きになった。乗ってどうか。結論から書くと、電気自動車モードであっても燃料電池モードであっても、駆動は前輪を駆動する177psのモーターで、燃料電池モードのときだけスタック(燃料電池本体)に空気を繰り込むポンプの小さい音が聞こえる程度だから、電気自動車に乗っているのとまったく同じ感覚だ。気持ちよく走ってくれるし、静か&スムース。何の不満もない、快適なエコカーである。水素満充填は3分も掛からず。電気自動車より実用的でもある。



だったら誰にでもすすめられるかとなれば、2つの点で厳しい。1つは水素価格。イワタニで1kgあたり1650円。エネオスだと2200円。これで110km程度走るのだけれど、ハイブリッド車なら2200円分のガソリンで200km前後走る。エネルギーコストは8km /リッターのガソリン車と同じ。さらにCR-V燃料電池車は60回リースのみ。リース料金、毎月11万円。660万円支払う。一方、車両価格は554万円(これは車両価格から補助金を引いた金額で、補助金を引く前の車両価格は809万4900円)。個人というより、環境意識の強い企業向きのように思う。

文=国沢光宏 写真=茂呂幸正

(ENGINE2025年2・3月号)

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